4〜5年は使えるスペック ドコモから京セラ製「あんしんスマホ」が登場した理由(2/3 ページ)
ドコモが2022年2月以降に発売予定のシニア向けスマホ「あんしんスマホ KY-51B」。現在販売されている「らくらくスマートフォン」と比較されやすい端末だが、どんなコンセプトで企画、開発されたのか。
4〜5年後を見据えたハードウェア
ドコモ向けのあんしんスマホは、これまで他キャリアに提供してきたシニア向けスマホと基本路線は変わらないが、シニアの長い買い替えサイクルでも困らない、充実したスペックを重視したという。
「弊社調べでは、買い替えサイクルは平均して4年、シニアに至ってはもう少し長く、5年、6年の買い替えサイクルで、長い人では壊れるまで使う方もいらっしゃいます。4年後、5年後を見据えたとき、インフラは5Gに切り替わっていき、オンライン診療などで低遅延通信が求められる社会環境になっていく中で、従来の4G端末から大きく変えて、今回はハードウェアのスペックを5Gベースで見直しています」(伊東氏)
プロセッサはQualcommのSnapdragon 480を搭載している。ミドルレンジ以下では他社のプロセッサを搭載するモデルが多い中、「この先を見据えて、今のところはこれがベストなチップセットになるだろうと考えて」(伊東氏)採用した。
バッテリーは容量だけでなく、耐久性も考慮。バッテリーの長持ちモードを用意し、そのモードにしていると、満充電に近づくに従って給電の速度を落とす仕組みになっているという。
これまでのシニア向けスマホでは省かれることも多かった、おサイフケータイに対応したことも注目に値する。コロナ禍でキャッシュレス決済に対する注目度が上がった影響があるためか、シニアのキャッシュレス決済に対する興味は徐々に高まっているという。
「おサイフケータイ、FeliCa機能を搭載して欲しかったという声は、昔から比べるとずいぶん増えてきています。詳しくは分からないという方はまだ多いですが、着実にユーザー数は増えていっています」(伊東氏)。
今後、マイナンバーカードや運転免許証がスマホのICチップ内に入っていくといわれており、そうしたインフラに対応できるように搭載したとのことだ。
カメラはシングルながら4800万画素。フィーチャーフォンでも写真はよく撮られており、シニアは花や風景の静止画をよく撮っているという。スマホになっても基本的な使い方は変わらないだろうが、よりきれいな写真を撮りたいというニーズはあるとみている。
「フィーチャーフォンよりディスプレイが大きくなりますし、今までのカメラよりきれいに撮れると知ってもらいたい。いろいろな方法がありますが、やはり画素数が分かりやすいだろうと考え、4800万画素のカメラを採用しました」(伊東氏)
一方で、最近の一般的なスマホが採用する複数カメラの搭載は見送った。
「ユーザーアンケートを何度も取って、超広角カメラや複眼についてのニーズも探っています。その中で、カメラの個数にこだわるという意見はそれほど多くなく、それよりもきれいに撮れればいい、手ブレしないでほしいといった機能面の要望が多かった。全体的なコストバランスも考え、今回は単眼で画素数を上げたという形です」(伊東氏)
同時期に発売予定の「らくらくスマートフォンF-52B」と比べると、ディスプレイのサイズが一回り大きいのも目を引く。シニアがスマホで重視するポイントを調査しても、画面やバッテリー容量を重視するという声は上位に来るという。ただ、大画面を搭載した理由は、らくらくスマートフォンとの違いを際立たせたかったという狙いもあった。
「王道のらくらくスマートフォンと同じものをわれわれが提供しても、ドコモ様としては事業の広がりがない。また、シニアの多様性も鑑みると、通常のAndroid端末、GalaxyやXperiaに近い、シャープなイメージの端末を望むユーザーさんが一定数いらっしゃいます。そうしたユーザーの受け皿になるように、少し縦長でシャープなデザインで、大画面を搭載した製品を提供させてもらいました」(伊東氏)
このカメラや大画面を使って、シニアが全員、若者同様に動画を撮ったり見続けたりするわけではないが、シニアのスマホの使い方も変化が見られるという。新しい機能やサービスを積極的に楽しむアクティブシニアも増えている。そうした人や、5Gの広がりでデジタルシフトしていく社会環境に対応できるスペックを、あんしんスマホはしっかり備えている。
なお、長く使うことを考えると、セキュリティ面からもOSアップデートへの対応が重要になる。京セラは自社製スマホに対して2度のメジャーアップデートを保証しており、あんしんスマホに関しても同様にアップデートするという。OSアップデートでUI(ユーザーインタフェース)が変わる場合もあるが、「UI、UXに関しては変わらない形で提供」(伊東氏)と、使い勝手を変えないように調整するという。
また、1台の端末を4年、5年使うシニアには、最終的に47回払いになる端末購入プログラム「いつでもカエドキプログラム」がマッチする印象だが、発売がまだ先のためプログラムの適用は未定となっている。
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