ドコモが扱う「TONE for iPhone」の狙い 料金は約50%値下げ、課題はAndroid端末:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ドコモの「エコノミーMVNO」に、フリービットグループのトーンモバイルが加わる。ドコモ向けの専用プランを用意して、既存の「TONE SIM(for iPhone)」よりも値下げをした。ドコモにとっても、キッズ向けのサービスを拡充できるというメリットがある。
ドコモの「エコノミーMVNO」に、22日からフリービットグループのトーンモバイルが加わる。これに合わせ、フリービットは新会社のトーンライフスタイルを設立。「TONE for docomo」として、専用プランを提供していく。第1弾となるのが、iPhone用サービスの「TONE for iPhone」だ。
TONE for iPhoneは、ターゲットを子どもに特化した料金プラン。見守りサービスの「TONEファミリー」を合わせて契約すると、子どもの見守りやアプリの制御を親の端末から行えるようになる。低廉、低容量の料金プランが中心になるエコノミーMVNOだが、TONE for docomoは、ユーザー層を絞ってサービスを展開することで、この取り組みに参画済みのOCNモバイルONEと差別化を図っている。
トーンモバイルは、早くから子どもやシニアにターゲットを絞り、独自性のあるネットワークサービスを提供してきたMVNOだ。大手キャリアとはアプローチが大きく異なっていたこともあり、ドコモとの提携には意外感もあった。一方で、TONE for iPhoneの中身を見ていくと、ドコモとフリービットの双方にとってメリットのありそうな取り組みにも思える。その狙いに迫った。
iPhone用サービスを値下げしてドコモで提供、見守りサービスも用意
既存の料金プランをそのままエコノミーMVNOで提供するOCN モバイル ONEとは異なり、トーンモバイルはドコモ用の専用料金プランを用意した。それがTONE for docomoのTONE for iPhoneだ。もともとトーンモバイルはiPhone用に「TONE SIM(for iPhone)」を提供していたが、TONE for iPhoneでは料金を大幅に改定。基本料金はもちろん、オプションの見守りサービスであるTONEファミリーも値下げに踏み切った。
フリービットの代表取締役社長CEO兼CTO、石田宏樹氏は「約50%のプライスダウン」と自信をのぞかせる。TONE for iPhoneの月額料金は基本料が1100円。TONE SIM(for iPhone)の1650円から550円の値下げになる。これに加え、TONE SIM(for iPhone)ではオプション扱いだった携帯電話の音声通話も、TONE for iPhoneでは標準サービスになった。TONE SIM(for iPhone)の「090音声オプション」は1045円のため、090/080/070の電話番号が必要なユーザーにとっては、1595円の値下げと見ることもできる。
これに加え、見守りサービスのTONEファミリーを2アカウント、月額308円で提供する。アカウントが2つなのは、親がドコモなど、別のキャリアを使っているケースを想定しているためだ。TONE SIM(for iPhone)のTONEファミリーは220円で一見するとTONE for iPhoneより安いが、これは1アカウント分の料金。実際に使用する上では、親ももう1つのアカウントを持つ必要がある。2アカウントで親子が使えることを考えると、308円という料金も実質的な値下げといえそうだ。
データ容量は無制限だが、動画のストリーミングやアプリのダウンロードには制限がかけられている。こうしたデータ量の大きな通信を行う場合は、1GBあたり370円の「動画チケット」を購入する仕組みだ。子どもが自分の端末で動画などを見すぎるのを防ぐのと同時に、帯域を占有しやすい大容量のトラフィックをコントロールするため、このような仕組みを導入している。この点は、既存のトーンモバイルのサービスと同じだ。
iPhoneには「スクリーンタイム」と呼ばれる利用制限機能が用意されているが、TONEファミリーでは、制御を主にネットワーク側で行うため、より高度な見守りが可能になる。例えば、ジオフェンスはその1つ。あらかじめ設定した特定の場所に出入りした際に、親側に通知が届く。行動把握エンジンを使えば、子どもが予期しない乗り物に乗ったことなどを親に知らせることが可能。子どもが自身の裸や下着姿の写真を見ず知らずの大人に送ってしまう“自画撮り被害”をAIで未然に防ぐ、「TONEカメラ」にも対応する。
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