日本通信が7年ぶり黒字へ、好調の要因は“音声通話”の強化 福田社長に聞く:MVNOに聞く(3/4 ページ)
日本通信が新ブランド「日本通信SIM」のもとで、2020年7月から次々と新サービスを打ち出している。2021年12月にはデータ通信20GBに音声定額を付けたサービスを開始。モバイル通信といえばデータ通信に注目が集まりがちな中、なぜ日本通信は音声通話を売りにしたサービスを展開しているのか。
2回線目や子ども向けに使えるプランを準備している
―― 先ほど、維持費が安くなるプランを考えているとお話しされていましたが、2021年6月に開始した合理的みんなのプランとは別のものになるのでしょうか。
福田氏 日本通信SIMとしてのポジショニングは、音声定額や準定額が入っていることです。先ほど申し上げたように、主回線を変えていただきたい狙いがあるからです。ニーズがあることは分かっていましたが、どちらかがついていないものを投入するのは、ずっと避けていました。ただ、ある程度定着してきたこともあるので、音声定額や準定額がついていない、2回線目や子ども向けに使えるプランを準備しています。
※インタビュー後、新料金プラン「合理的シンプル290」を発表した。
―― なるほど。音声定額なしの安価なプランを出すということですね。ちなみに、みんなのプランは開始から半年以上たちましたが、契約状況はいかがでしたでしょうか。
福田氏 あれはよかったですね。ahamoが20GBで入ってきたので最初は合わせましたが、世の中にはそこまで使わない人の方が圧倒的に多い。家のWi-Fiでオフロードする人も多く、6GBあれば大体カバーできます。合理的みんなのプランには6GBのデータ通信に70分の準定額が入っているので、ほとんど超過料金がかからない現実的な解になっているのではないでしょうか。
音声を5分定額にすることもできましたが、それだとほとんどの人に超過料金が発生してしまいます。2、3分ずつの短いやりとりは、SNSで済ませることもできますが、オンラインとは別に2人で話したいときに電話を使うと5分を超えてしまうことがあります。この場合でも1カ月70分であれば、ほとんどの超過料金が発生しなくなります。これも主回線で使ってくださいというメッセージの1つです。
5Gも始めるが、帯域ではない形で接続する
―― トータルでは今までのMVNOより多少高くなっても、安いだけではダメということですね。安かろう悪かろうではないという意味で言うと、データ通信の品質はいかがでしょうか。
福田氏 通信品質も含めて、総合的にいいレベルにあり、それを維持していこうと思っています。データ通信の品質が悪かったのは、逆説的ですが音声の料金が高く、それを何とかしようとしていたので皆さんデータ通信にしわ寄せが来ていました。キャリアと比較した際の通話が高くなるので、データ通信を相当下げなければいけなかったということです。そのバランスが取れるようになると、品質を上げても十分収益を出せるようになります。
―― 接続料も下がりましたが、その影響はありますか。
福田氏 接続料は、本来もっと下がるべきだと思っていますし、そこは戦っていきます。その意味では、影響はあまりありません。1人あたりのデータ通信量が増えているので、その分、帯域を購入しなければならないからです。
―― 現状、日本通信SIMでは5Gを提供されていませんが、こちらはどうされていくのでしょうか。
福田氏 間もなく対応していきます。ただ、5Gに関しては帯域ではない形で接続したいと考えています。その部分のめどが立ってきたので、取りあえず帯域での接続を始めてから移行したいですね。帯域幅でやっていると、5Gのパフォーマンスが出せないので、違う形で提供したい。そういう新しい接続の協議をしています。
日本通信はPHSの32kbpsの時代から帯域でやっていました。これは、スピードが遅いときには合理的ですが、5Gのスペック、特にSA(スタンドアロン)になったとき、帯域幅での料金がベストかというとそれは違います。これが、5Gの提供を遅らせた理由です。
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