「手数料0.99%」で店舗の負担を最小限に スマホ決済「COIN+」の狙い:モバイル決済で店舗改革(3/3 ページ)
三菱UFJ銀行とリクルートによる合弁会社であるリクルートMUFGビジネスが、新たな決済ブランド「COIN+」を立ち上げた。最も分かりやすい特徴が、「税別0.99%」という低額の決済手数料。キャッシュレス対応に苦慮する中小・個店などには大きなメリットになり得る。
ユーザー還元よりも手数料の削減を重視
0.99%という決済手数料の実現のために削減されているコストの1つがユーザー還元だ。クレジットカードは元より、特にコード決済では利用に対してポイントなどの還元が多く行われている。クレジットカードでは0.5%などといった例も多かったが、1%以上という還元もある。
こうした還元は、そのままコストとなって決済手数料につながる。日本では特にポイント還元が重視されていて、米国など一部の海外でも同様の傾向はあるが、それに対して収入源となる分割払い手数料が日本では発生しにくく、還元コストを決済手数料で賄わなければならない。
これが決済手数料が高止まりする原因の1つとされており、夏目氏も「ユーザー還元で限界に来ている」と指摘する。そもそもクレジットカードではリスク対策などのコストがあり、ブランドフィーなどの手数料も発生する。アクワイアラや提携会社など複数の事業者が関係する現在の構造自体が限界に来ている、というのが夏目氏の認識だ。
COIN+ではそうした還元を行わない意向だ。還元自体は、加盟店側の判断で行う分には構わないので、店舗限定のポイントを店のコストで発行して集客するという判断もあるだろう。
決済手数料分のコストが0.99%と安価になっているので、その分をポイント還元に回すことはできる。自社アプリの決済部分にCOIN+を組み込み、アプリでの決済にポイント還元やクーポン発行をする、といった形は可能になる。
店舗側にとっては、決済手数料以外のコストが発生するが、「以前とは異なり、顧客接点が増えるという点で一定の理解がされている」と夏目氏。そうした理由から自社アプリを作る企業が増えることで、自社マネーとしてのCOIN+への利用を促進したい考え。
加えて、店舗にとってはキャッシュのコスト負担が大きい。銀行における現金取り扱いコストが上昇している今、ただでさえレジ締めなどで現金を扱うことに時間が掛かり、生産性の低下が問題となっている。店舗側もそれは理解していてキャッシュレス化を進めたいという声は大きいが、手数料問題もあってキャッシュレス化には困難が伴う。
「現金の取り扱いは減らすべきで、キャッシュレス化を応援したい」と夏目氏。そのためにも、低額の決済手数料というCOIN+の特徴は維持した上で、利用の拡大を目指していく。
ユーザーにCOIN+を使ってもらうために必要なことは?
ただ、利用客が還元などのインセンティブが少ない決済サービスを利用してくれるかどうかは未知数だ。夏目氏は、COIN+の持つ決済だけではなく、送金機能や無料の出金機能を提供することで、金銭のやりとりにも使えるようにするなど、「お金のやりとりをスムーズにする」(同)ことを狙う。
これによって、子どものお小遣いや生活費をデポジット的に入金しておく、といった使い方を想定。
リクルートの提供する共通ポイントPontaとの連携は「キャンペーンではあるかもしれない」(同)としつつ、それで手数料が上がったり店の負担が増えたりするのは本末転倒なので、そうならないような施策を検討していく考えだ。
「COIN+は決済手数料のみで成り立つ」と夏目氏。ビジネスモデルとしては、今後クーポン、スタンプといった付加サービスを提供する可能性に触れつつ、夏目氏はまずは「使いたい人(店)に対して決済を提供する」というアプローチで、利用の拡大を図っていく考えだ。
【訂正:2022年2月24日9時35分 初出時、「Airレジ」としていたところは、正しくは「Airペイ」でした。おわびして訂正いたします。】
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