海外では携帯電話やスマホの「バンド縛り」はある? 総務省が調査(2/2 ページ)
総務省が「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の第27回会合において、海外5カ国(+ヨーロッパ連合)における携帯電話の対応周波数帯(Band)に関する実態調査の結果を公表した。今後、この結果を参考にしつつ、対応Bandに関するヒアリングを関係者から行う見通しだ。
今後の議論はどうなる?
今後、競争ルールの検証に関するWGでは4月から5月に掛けて3回のヒアリング(聴取)を行う予定となっている。
1回目(4月上旬〜中旬予定)は大手キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)からヒアリングを実施する予定で、端末の対応Bandの制限に関する聴取も行われる。聴取予定の項目は以下の通りだ(公開資料を要約している、以下同)。
- メーカーから端末を調達する際に対応Bandを決定するプロセス
- 他社のBandへの対応は、メーカーの判断に委ねているのか
- 他社のBandに対応する端末の製造に問題点はあるのか
- 利用者視点も立った「他社のBandにも広く対応する端末」「自社のBandを中心にした端末」のメリットとデメリット
- 対応Bandの状況について、利用者への情報提供の方法(自社端末×他社回線、他社端末×自社回線の両方)
- 第26回会合で例示された総務省消費者センターに寄せられた意見について、改善できること
- 対応Bandについてルール化、あるいは業界標準化された場合のメリットとデメリット
2回目(4月下旬予定)では、テレコムサービス協会のMVNO委員会と端末メーカー(詳細不明)から対応Bandに関するヒアリングを実施する予定となっている(※1)。聴取予定の項目は以下の通りだ。
- MVNO委員会へのヒアリング
- 他キャリアのBandに対応しない端末が販売されていることによる影響の有無
- 自社で販売している端末の対応Bandの状況
- 対応Bandの状況について、利用者への情報提供の方法
- 第26回会合で例示した総務省消費者センターに寄せられた意見について、改善できること
- 対応Bandについてルール化、あるいは業界標準化された場合のメリットとデメリット
- 端末メーカーへのヒアリング
- キャリアに納入する端末の対応Bandを決定するプロセス
- 利用者視点も立った「納入先以外のBandにも広く対応する端末」「納入先のBandを中心にした端末」のメリットとデメリット
- 第26回会合で例示した総務省消費者センターに寄せられた意見について、改善できること
- 対応Bandについてルール化、あるいは業界標準化された場合のメリットとデメリット
- ヒアリング対象のメーカーの端末の実態を踏まえた事項
(※1)この会合では大手キャリアに対して端末の単体販売や割引の適用を拒否されたという事案や、総務省が行った覆面調査に関するヒアリングも行われる予定
3回目(5月上旬〜中旬予定)では、中古端末業者から対応Bandに関するヒアリングを実施する予定となっている(※2)。聴取予定の項目は以下の通りだ。
- 「自社のBandを中心にした端末」の販売は事業にどのような影響があるか
- 「自社のBandを中心にした端末」について購入(希望)者からあった問い合わせ
- 対応Bandの状況について、利用者への情報提供の方法
- 対応Bandについてルール化、あるいは業界標準化された場合のメリットとデメリット
(※2)この会合ではMVNO委員会、インターネットイニシアティブ(IIJ)、オプテージに対するヒアリング、端末メーカーなど(Apple Japanやクアルコムジャパンを想定)に対して端末市場の動向に関するヒアリングも行われる予定
以前の記事でも増えた通り、対応Bandの決定やそれに伴う各種試験や認証の取得は、原則として端末を開発/製造(輸入)するメーカーが行っている。3回行われるヒアリングにおいて、一番注目すべきはメーカーの回答だろう。
特定のメーカーにヒアリングするのか、メーカーを代表する業界団体にヒアリングするのかは定かではない。筆者個人としては、各メーカーの抱える事情やコスト構造に違いがあることを踏まえて複数のメーカーから“直接”ヒアリングを行うべきではないかと考える。どのようなヒアリングになるのか、しっかりと注視したい。
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