スマホ全キャリア周波数対応問題をメーカー関係者に直撃――「これ以上、面倒なことはしないで欲しい」と本音:石川温のスマホ業界新聞
昨今、総務省の有識者会議で議題の1つに挙がっている「携帯電話の対応周波数帯」の問題。一部端末を除きその決定権はメーカーにあるのだが、当のメーカーはどのように考えているのだろうか。あるメーカーの人に会う機会があったので話を聞いてみることにした。
今週、メーカーの人に会う機会があったので、「ぶっちゃけ、総務省の周波数問題をどう見ていますか」と質問したところ、とても困惑している様子だった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年4月23日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
有識者は「キャリアがメーカーに対して、他キャリアの周波数に対応しないように圧力をかけているのではないか」とキャリアを悪者のようにしようとしているが、メーカー関係者は「そんなことは言われたことはない」と真っ向から否定する。
総務省の議論では欧州や韓国で流通しているスマートフォンはすべてのキャリアに対応している。「日本もそうすべきだ」という論調にしようとしているが、そもそも欧州や韓国では、割り当てられているバンドの種類も少なく、またかなり近いバンドとなっている。つまり、日本に比べて各キャリアに割り当てられているバンドに対応しやすい環境が整っているのだ。
メーカーの幹部は「総務省は、あちこち離れたバンドをキャリアに割り当てるから、我々が対応するのに苦労している。これ以上、変なことはしないで欲しい」と本音を漏らす。
そもそも、キャリアで購入したスマートフォンのままで、他キャリアにMNPして使い続けるという人は、多く見積もっても数%もいないだろう。その人たちにメリットを出させるために、なぜそれ以外の90数%の人が購入するスマートフォンのコストが上がるようなことをしなくてはいけないのか。
その昔、総務省は「割引が適用されている端末を頻繁に機種変更する人が得をして、あまり機種変更しない人は損をしている。この不公平感を是正しないといけない。割引は辞めて、端末と通信は完全分離すべき」という論法をかざしていた。
今回の「乗り換えしやすいように、すべてのバンドに対応しろ」という議論は、結局のところ、乗り換えする人のために、乗り換えない人もコストを負担しなくてはならないという「不公平感」が出てくる話だ。なぜ、総務省はこうした矛盾に気がついていないのか。
すべてのキャリアに対応するとなれば、一部キャリアにしか納入していないメーカーの製造コストは上がるだろうし、ただでさえ、日本ではFeliCa対応しなければならないのに、さらに全キャリアの周波数対応となれば、中国メーカーなどは日本市場から撤退も検討するのではないか。
4月25日に開催される総務省の有識者会議には、メーカーの人が参加して、プレゼンを行う予定とされている。
会議ではこうした事実をきっちりと聞き取り、メーカーに対してすべての周波数に対応するという無駄なことをさせないよう、現実をしっかりと理解した結論を導き出してもらいたいものだ。
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