「ガイドラインに書こうとしているのは間違っている」――スマホ全キャリア周波数帯問題でメーカー関係者が怒り心頭:石川温のスマホ業界新聞
スマートフォンの対応周波数帯(バンド)の問題を巡って、メーカーの関係者から話を聞く機会が増えた。以前紹介した所とは異なるメーカーの関係者は、対応周波数帯のガイドライン化に否定的な見解を示している。ユーザーの目には見えない所のコストが増えることを懸念しているようだ。
総務省が「競争ルールの検証に関するWG」や「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」を開催していることもあり、メーカー関係者に話を聞く機会が増えている。先日は、4月23日配信のメルマガ 『スマホ全キャリア周波数対応問題をメーカー関係者に直撃。これ以上、面倒なことはしないで欲しいと本音』とは別のメーカー関係者に話を聞くことができた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年5月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
4月25日、有識者会議が開かれたが、メーカー関係者のプレゼンは非公開となっていた。どうやら、キャリアに対して配慮されては困るので、有識者だけに公開とすることで本音を聞き出したかったようだ。
今回の議題で、キャリアが扱うスマートフォンに関して、乗り換えを促進するために、すべてのキャリアの周波数帯に対応すべきではないかというテーマが盛り上がっている。
メーカー関係者は「どうやら総務省としてはガイドラインに『すべてのキャリアの周波数に対応するのが望ましい』と書きたがっているようだ。それで問題ないか、メーカーに確認して回っている」とささやく。
あらかじめ「すべての周波数帯に対応するのが望ましい」というゴールがある上で、表向き、議論を進めているというわけだ。
メーカー関係者は「そもそも、そんなことをガイドラインに書き込むこと自体が間違っている。メーカーやキャリアのイノベーションを阻害するだけに過ぎない」と憤る。
スマートフォンの対応周波数が、納入先のキャリアの周波数帯にきっちりと合致し、さらにデュアルコネクティビティで超高速のデータ通信ができるからこそ、キャリアとして、メーカーとしての差別化が効いてくる。そんなことを一切無視して、すべてのキャリアの周波数対応を優先するようでは、ニッポンの5Gはますます世界から取り残されるのではないか。
別のAndroidメーカー関係者は「キャリア向け端末とSIMフリー端末は見た目は同じように見えて、内部のアンテナ構造などは全く違う。有識者会議では、すべて一緒の仕様にすれば安くなるだろうなんて暴論が出ているが、むしろ、それぞれのキャリアやSIMフリー向けの仕様を変えたほうがコスト的には理にかなっている」と語る。
総務省並びに有識者が、机上の空論ばかりをかざして、誰のメリットにもならない成果を上げようと必死に議論を展開している。
「乗り換えを促進するため」としているが、乗り換えが促進されなくても、政府の圧力によって値下げは実現している。もはや、これ以上、値下げに全くつながらない乗り換えを促進して何の意味があるのか。
こんなことでは、どのメーカーもキャリア向け端末を作るのを辞めてしまうのかも知れない。結局、最後には日本にiPhoneしか残らなかった、なんてことになりはしないだろうか。
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