iPhoneとMacの“いいとこ取り”をした「iPadOS 16」 iPadは2つの方向に進化する:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
WWDCで発表されたものの中で最も大きなアップデートといえそうなのが、基調講演のトリを飾ったiPadOS 16だ。複数のアプリをウィンドウで開ける「Stage Manager」や外部ディスプレイなど、PC化がますます進んでいる。それでも、macOSとは明確なすみ分けが図られている。
M1対応iPadとAシリーズ対応iPadの差別化が進む、M1対応iPadはよりPCライクに
そんなiPadOSの実力を発揮できるのが、2022年内の提供を予定している「フリーフォーム」というアプリだろう。同アプリでは、Apple Pencilを使った手書きやキーボード入力で、さまざまなアイデアを自由にまとめることができる。ファイルを張り付けたり、他のユーザーとFaceTimeなどを通じた共同編集をしたりできる。会議室などに置かれたホワイトボードのアプリ版といえば、理解がしやすいかもしれない。
フリーフォームは、iPadOSだけでなく、iOSやmacOSもサポートする予定だが、WWDCで同アプリが紹介されたのは、iPadOS 16のパートだ。iPhoneでは画面が小さすぎるし、Macではタッチパネルがないため、手書きはできない。フリーフォームの特徴を最大限引き出せるのは、やはりiPadといえる。これは、iPadOSが両OSの“いいとこ取り”をしているからこそだ。
ただし、ここまで言及してきたiPadOS 16の機能は、その大部分がM1を搭載した端末に限定される。Stage Managerのように複数のウィンドウを同時に開き、外部ディスプレイでのマルチディスプレイ環境までサポートできるのは、M1のパフォーマンスがあってのこと。最大16GBにメモリを拡張する仮想スワップメモリや、各種グラフィックスの機能があって、初めて実現できる機能というわけだ。逆の見方をすると、これまでは写真や動画の編集をするときぐらいしか体感できなかったM1の実力を引き出せるのが、iPadOS 16の真価といえる。
もっとも、現行のiPadが全てM1を搭載しているわけではない。販売面での主力といえる第9世代のiPadは、iPhone 11シリーズや第2世代のiPhone SEと同じ「A13 Bionic」を採用。2021年に発売された第6世代のiPad miniには、同時期にリリースされたiPhone 13シリーズと同じ「A15 Bionic」が搭載されている。M1を搭載する前のiPad ProやiPad Airも含め、これらの端末ではStage Managerなどの機能は利用できない。
過去のiPad ProやAirはもちろん、現行モデルでもiPad miniやiPadはチップセットにAシリーズを採用しており、Stage Managerは利用できない。iPadが2つの方向に進化したといえる
これまでも、AppleはiPadやiPad miniなどの“一般向けiPad”と、クリエイティブな仕事に取り入れるための“プロ用iPad”といった形で、iPadのバリエーションを大きく2つに分け、訴求してきた。iPad Airは、ちょうどその中間に位置する端末で、特にM1を搭載した第5世代では、その特徴がPro寄りになっている。Stage Managerや外部ディスプレイのフルサポートにより、iPadOS 16では、後者のプロ用iPadを大幅に強化し、単純な処理能力以外での差別化を図った。Aシリーズを採用したiPhone寄りのiPadと、Mシリーズを採用したMac寄りのiPadの2つが、それぞれ異なる方向に進化を始めたということもできそうだ。
関連記事
- 「iPadOS 16」発表 複数ウィンドウや外部モニター、「取り消し・やり直し」操作も
Appleは7日、iPad向けの新OS「iPadOS 16」を発表した。新たなマルチタスク管理機能「ステージマネージャ」を導入。ウィンドウ形式でのアプリの表示や、外部ディスプレイ接続時のデスクトップの拡張など、よりmacOSに近い形態での利用が可能となる。 - iOSから独立した「iPadOS」が生まれた理由、「watchOS 6」「iOS 13」の進化点を読み解く
「WWDC 2019」全体に通じるキーワードは「独立」かもしれない。それを最も象徴しているのが、タブレット用OSとしてiOSとは切り離して開発された「iPadOS」だ。「watchOS 6」も単独でできることが増えており、iOSへの依存が下がりそうだ。 - 「iPad Air(第5世代)」はiPad Pro並みに性能が向上したが、悩ましいデバイスだ
M1チップを搭載した第5世代のiPad Airが、3月18日に発売された。第4世代でフルモデルチェンジを果たし、iPad Proの流れをくんだボディーを採用したiPad Airだが、第5世代はその流れを踏襲。使ってみて分かったのは、最大のライバルが11型のiPad Proだということだ。 - 「iPad Air(第5世代)」が3月18日発売 5G対応でM1チップ搭載、7万4800円から
米Appleが3月8日(現地時間)、「iPad Air(第5世代)」を発表。5Gに対応した他、「Apple M1チップ」を搭載している。価格は7万4800円からで、3月11日から予約を受け付け、18日に発売する。 - 新型「iPad Pro」は誰に向けたモデルか 新しいカメラやトラックパッドを試す
3月25日に発売される新型「iPad Pro」は、カメラが2眼になり、被写体との距離を測るLiDAR(ライダー)を搭載。iPadシリーズに搭載されるiPadOSも、新しいiPad Proの登場に合わせてバージョンアップされる。目玉になりそうなのが、マウスやトラックパッドに対応した点だ。短期間ながらiPad Proに触れたので、レビューをお届けする。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.