開発陣に聞く「Xperia 1 IV」 光学ズーム実装の背景から“スマホだけで宅録”実現まで:開発陣に聞く(1/3 ページ)
2022年夏、3キャリアが取り扱う「Xperia 1 IV」は注目の1台だ。本機はソニーの技術結晶であるカメラ、ディスプレイ、オーディオはもちろん、クリエイターに刺さるような機能も搭載している。光学ズーム実装の背景から“スマホだけで宅録”実現まで、Xperia 1 IVの魅力や技術について、企画開発に関わった方々に話を聞いた。
2022年夏に発売されるスマートフォンの中で、注目度の高いモデルの1つが、3キャリアが取り扱う「Xperia 1 IV」だ。
望遠カメラに光学式ズームレンズを採用した他、YouTubeなどのライブ配信がスマートフォン1台で行えるようになるなど、高機能、高性能化を果たしたXperia 1 IVだが、約19万円という価格が高いという声もある。
そんなXperia 1 IVのカメラ、ディスプレイ、オーディオには、いったいどんな技術や機能が詰め込まれているのか、ソニーでXperia 1 IVの企画開発に関わった方々に話を聞いた。
- モバイルコミュニケーションズ事業本部 企画マーケティング部門 企画部 滝沢宏樹氏
- イメージングプロダクツ&ソリューションズ事業本部 商品技術センター コア技術第1部門 光学設計部 亀淵健太氏
- モバイルコミュニケーションズ事業本部 設計開発担当 商品設計部門 システム設計部 松本賢一氏
- モバイルコミュニケーションズ事業本部 設計開発担当 商品設計部門 システム設計部 佐藤清和氏
- モバイルコミュニケーションズ事業本部 企画マーケティング部門 企画部 上妻和輝氏
- モバイルコミュニケーションズ事業本部 設計開発担当 ソフトウェア技術部門 SW開発2部 松井丈氏
望遠レンズも光学式になったXperia 1 IVのカメラ
―― 発売以降の反響はいかがでしょうか。
滝沢氏 改善点やアップデートがあり、おおむねカメラやオーディオに関して、ご好評いただいています。これから全ユーザーに意見を求めたいと考えています。
―― Xperia 1 IVのターゲットを教えてください。
滝沢氏 「Community of Interest」というコンセプトに基づき、特にカメラ専用機を持っている人をターゲットとしています。コロナ禍で静止画のみならず動画を撮影し配信するニーズが高まっているため、Xperia 1 IVはそのニーズを満たすために出したものになります。
―― センサーサイズはXperia 1 IIIよりも望遠が小さくなっていますが、その影響はありますか。
滝沢氏 基本的にセンサーサイズを違う方向に進化させたかったです。Xperia 1 IVは3眼全てにα譲りのZEISS(ツァイス)レンズと、120fpsの高速読み出し可能な1220万画素イメージセンサーを採用しています。広角でも望遠と同じように120fpsのハイフレームレートでの撮影体験を可能にしました。
AFに関しても、これまで望遠だけにリアルタイム瞳AFを採用していました。そのため、他のレンズのAF速度が若干遅くなっていましたが、Xperia 1 IVでは読み出し速度が120fpsと高速になったことで、3眼全てのAF速度が向上し、「瞳AF」と「オブジェクトトラッキング」も全てのレンズで可能になりました。
重ね合わせ処理により、これまで以上に広いダイナミックレンジでの動画撮影が行えるようになっているのもポイントの1つです。望遠のイメージセンサーも強化し、120fpsでの読み出しが可能になりました。
さらに、ハイフレームレートでのスローモーション撮影ができるようになっています。純粋にセンサーサイズが小さくなった、と言われていますが、できる体験は多くなっています。
―― 85mmから125mmまでの間で光学ズームが可能になりました。なぜこの仕様にしたのでしょうか。
滝沢氏 Xperia 1 IIIは70mmと105mmを切り替える仕様でしたが、その間の80mm、85mm、90mmをつなぎ、全ての焦点距離を光学域にした方が理想的だと思います。
そういった焦点距離をつなげることで、画質劣化や心理的障壁がなくなり、快適にお使いいただけると考えています。
―― 望遠の焦点距離の最大値が105mmから125mmに変更となっていますが、この理由を教えてください。
滝沢氏 イメージセンサーに対して光学特性を担保するためです。85mmからとした理由は、イメージセンサーで光学特性を担保したいのと、ポートレート撮影でよく使用されるのが85mmのレンズだからです。ユースケースと光学特性の2つを優先した結果、この焦点距離(85mmから125mmまで)としました。
―― シームレスズームはなぜ動画だけなのでしょうか。
滝沢氏 Xperia 1 IIIでは1つのレンズ間で3倍まで動かせましたが、16mmから一気に105mmに切り替えることができませんでした。ズームを切り替えるためだけに録画を停止するのは、ユーザビリティとしてよくありません。
例えば、子どもが離れたらズームして、近づいたらアウトして撮る、といった使い方を想定しています。レンズを切り替えると画質面での変化がありますが、なるべく実使用で違和感のないシームレスズームを実現すべく、工場でしっかりとチューニングを行っています。
―― 開発に苦労したのは、やはり望遠カメラでしょうか。
亀淵氏 先ほどの内容とやや重複しますが、バリフォーカルのXperia 1 IIIと違い、Xperia 1 IVは光学ズームで全てのレンズをつなぐといった所が大きな特徴となっています。
ズームの中間領域(100mmなど)でも光学性能を高める必要があり、部品の作り込みなどで苦労しました。
―― Xperia 1 IVは4K 120fpsでの動画撮影に対応しました。4K高解像度かつ滑らかな映像を撮影して4Kディスプレイで視聴してもらう、これを意識したのかなと思います。一眼レフカメラでもまだ多くはないこの仕様をなぜスマホで実現したのでしょうか。
滝沢氏 4K 120fpsのハイフレームレート撮影はXperia 1 IIから対応しています。PROシリーズとしてはXperia PRO-Iから対応しました。この仕様はカメラ専用機でははやりはじめています。編集をしやすくするため、あらかじめ高画質かつハイフレームレートで撮影しておく、というニーズに応えたかったというのが主な理由です。
―― インカメラの画素数がXperia 1 IIIの約800万画素から約1220万画素へアップし、4K HDR撮影にも対応しています。これもアウトカメラと同じくセルフィーを意識した仕様なのでしょうか。
滝沢氏 そもそも約800万画素のインカメラはXperia 1から3世代に渡って採用し続けてきたものですが、Xperia 1 IVのインカメラにおけるセルフィー撮影でも最大限のパフォーマンスを引き出すため、画素数を上げるだけでなく、センサーサイズを1/4型から1/2.9型に大型化することで、解像感の向上を図りました。
少し補足しますと、Xperiaの“おでこ”と呼ばれている画面上部のベゼルを極力増やさないようにしました。
―― それに関連して、ノッチ(切り欠き)は設けたくない、ということでしょうか。
滝沢氏 はい。ノッチやパンチホールを設けると、コンテンツ視聴の阻害につながってしまいますので、当初からのコンセプトを引き継いでいます。
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