楽天モバイルが“新プラン自動移行”の理由に挙げる「電気通信事業法第27条の3」とは何か?:MVNOの深イイ話(2/3 ページ)
楽天モバイルが7月から提供する新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」は、1GB以下の「月額0円」が撤廃されることが話題を集めていますが、既存ユーザーにも自動で適用されます。その理由について、同社は電気通信事業法第27条の3が規定する「行き過ぎた囲い込みの禁止」という規制に抵触するためだとしています。この「電気通信事業法第27条の3」について、その成立の経緯から詳しく振り返ってみたいと思います。
電気通信事業法第27条の3の規定の詳細
この第27条の3は1つ1つの文が長く、また括弧書きが多くて大変読みづらいのですが、簡単に内容をまとめると、以下の通りになります。
電気通信事業法第27条の3
1. 総務大臣は、次項の規定の適用を受ける携帯電話事業者を指定する
2. 前項により指定された携帯電話事業者は次の行為をしてはならない
一. 通信と端末を併せて契約した利用者に対し、そうでない利用者に比べて通信料金を値引きすること、その他競争を阻害する恐れのある利益の提供をしたりすること(一号禁止行為。青のマーカー部分は詳しくは総務省令で規定)
二. 利用者に対し、解約を妨げるなど競争を阻害する恐れがある料金その他の提供条件を約すること(二号禁止行為。詳しくは総務省令で規定)
3. 1項の規定による指定は告示によって行う
問題はこの中に出てくる「総務省令」で、具体的には「電気通信事業法施行規則」と呼ばれるものですが、こちらの関連規定はさらに長く複雑なものです。
若干不正確になることを承知で省令の一部(電気通信事業法施行規則第22条の2の16〜17)を書き下してみると、以下の通りになります。
電気通信事業法施行規則第22条の2の16
青の総務省令で規定される禁止される利益の提供は以下の通り
1. 通信役務の継続利用を条件とする場合
イ. 端末を割引して販売すること
ロ. その他のサービス等を値引きすること
ハ. 中古の買い取り価格を上乗せすること
ニ. その他経済的利益の提供
2. 通信役務の継続利用を条件としない場合、2万円(ただし2万円以下の端末の場合はその価格)を超える端末値引き(詳細は省略)
(以下略)
電気通信事業法施行規則第22条の2の17
緑の総務省令で規定される禁止される料金その他の提供条件は以下の通り。
一. 2年を超える縛り
二. 縛り付きのプランに対応する縛りなしのプランを提供していない場合は1年を超える縛り
三. 縛り付きのプランと、対応する縛りなしのプランを提供している場合、その差額が1月あたり170円を超えること
四. 違約金の額が1000円を超えること
五. (略)
六. 契約を一定期間継続した利用者に対する、1年あたりその1カ月分の料金を超える利益の提供
一見、消費者保護とはあまり関係なさそうな(むしろ逆行しそうな)ルールが並んでいますが、これはどういうことなのでしょう。
この第27条の3が加えられた2019年の電気通信事業法改正については、過去にこの連載でもその経緯や目的をまとめた記事を執筆しています。
端的にまとめるなら、この条文の目的は「通信と端末の分離、行き過ぎた囲い込みの禁止」です。このときは、安い端末や2年縛り、長期利用者に対する大き過ぎる特典で事業者が利用者を囲い込むことは、競争を阻害し真の意味での利用者のためにならない。そのためにも通信料金収入からの端末の値引きを禁止・規制し、2年縛りのような提供条件を排除すべき、という議論がなされ、その結果として新たに電気通信事業法に追加されたのがこの第27条の3、というわけです。
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