“通信と端末の分離”で何が起こる? キャリア、MVNO、端末メーカーへの影響を考える:MVNOの深イイ話(2/4 ページ)
5月17日に国会で可決された電気通信事業法改正は、「端末と回線の分離」「行き過ぎた囲い込みの禁止」「代理店届出制度の導入」の3つが主な柱です。これらの法改正により何が変わるのか? MVNOはどうなるのか? 端末と回線の分離と行き過ぎた囲い込みの禁止が与える影響をお伝えします。
行き過ぎた囲い込みの禁止について知っておくべきこと
今回の法改正では、2年縛り等の囲い込みについても厳しいメスが入ります。具体的には、10月1日以降、携帯電話事業者は以下を順守する必要があります。
- 2年を超える長期の期間拘束の禁止
- 違約金は1000円まで
- 1年を超える自動更新付きのプランを提供する場合には、金額以外同条件の期間拘束のないプランの提供が必須
- これらの2つのプランには、月額170円を超える料金差を設けてはいけない
- 長期に渡り乗り換えず利用している利用者に対する割引等については、1年あたり1カ月分の料金相当額まで
特に2の「違約金は1000円まで」は、多くのメディアでも今回の法改正の目玉であるように報じられていて、多くの利用者にとっては歓迎すべき政策だと受け取られていると思います。ただ、同時に「縛りがあるプランと縛りのないプランの料金差額は月額170円まで」となりますから、違約金が安くなるというよりも、2年縛りを選択してもしなくてもほとんど変わらなくなる、といえます。
例えば、筆者が所属するIIJが提供している「IIJmio」では、2年縛りは提供していないのですが、時折「2年縛られてもいいから大きく料金を割り引いてほしい」というご要望をいただくことがありました。今後は170円を超えて安い2年縛りを提供することは法令で禁止されます。
なお、2年を超える縛りについては一律禁止となります。スマートフォン向けでは各社2年を超える縛りを持つプランはあまりないのではないかと思いますが、新たに規制の対象となるWiMAX(全国BWA)については現在3年縛りのプランが主流です。
全国BWAが規制の対象となる2020年1月以降は、100万回線以下のMVNOによる場合、またSoftBank Air等の固定ブロードバンド回線の代替として提供される全国BWAの3年縛りプランを除き、これらのプランは新規に提供することが認められなくなります。
長期利用割引については、2015年に開催された総務省の有識者会議(ICTサービス安心・安全研究会 携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース)でも長期利用者の負担の軽減となる料金割引の提供は望ましいとされ、MNO各社や一部のMVNOにおいて割引や特典といった長期利用者の優遇プログラムが拡充されてきましたが、一転して1カ月の料金相当額までと制限されたことにより、各社とも大きな見直しが予想されます(IIJも、長期利用特典の見直しが迫られます)。
多くの利用者にとって、携帯電話会社を乗り換えることは決して軽い負担ではなく、長く1つの携帯電話会社を使い続けるだけで割引や特典が受けられることはメリットだと思います。今後は自分に有利な料金プランを提供する携帯電話会社に積極的に乗り換えていく努力や、その検討をするリテラシーが利用者に要求されるようになる、といえます。
なお、多くのMVNOが現状で設けている、音声通話機能の付いたSIMカードの短期解約に対する解約金については、100万回線以上のMVNOやMNOのサブブランドでは違約金1000円までの対象となります。この解約金は、MVNOの回線を契約して即MNP転出をすることでMNOが提供するMNP転入に対する高額のキャッシュバックその他の優遇を受けたり、端末を売り抜けることで利益を得たりするホッピング行為(通称「MNP弾」)を抑止するためのものです。
今後はMNOが提供する端末購入時のキャッシュバックについては、MNP転入を条件とする場合でも最大2万円(2年縛りを条件としない場合)しか許されなくなるため、MNOによるキャッシュバック等の商慣行も沈静化していくことが期待され、大きな影響はないものと考えています(そうならないと困ります)。
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