中国で第4のキャリア「China Broadnet」がサービス開始 ゼロからどこまでユーザーを獲得できる?:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
中国で4社目の通信事業者China Broadnetが5Gサービスを開始した。2022年6月時点で世界最大の携帯電話契約者数を持つ中国は、世界に先駆けて国内全土へ5G通信を広げようとしている。
ネットワーク上でも大きな武器を持つChina Broadnet
China Broadnetの武器は料金だけではない。ネットワーク上でも大きな利点を持っているのだ。同社は700MHzの低い周波数の割り当てを受けており、他社が使用している2.6GHzや3.5GHz、4.9GHz帯よりも少ない基地局で広いエリアをカバーできる。China Broadnetの5Gが他社よりもつながりやすいという評判になれば、他社の5G加入者の移転も期待できるかもしれない。
この700MHz帯のサービス開始が今回の新規参入の大きな話題にもなっている。しかもこの周波数帯はChina Broadnetだけが利用するわけではない。同社はChina Mobileと5Gネットワークの共同展開で協業を行っており、700MHz帯の基地局設置でも共同で敷設した。
China Mobileは現在2.5GHz帯と4.9GHz帯で5Gサービスを行っているが、今後はこの2つの周波数帯とChina Broadnetの700MHz帯を両者で共用する(なおChina Broadnetは屋内用の3.5GHz帯と、4.9GHz帯も取得している)。既にChina Mobileが販売する5Gスマートフォンは700MHzにも対応しており、China Broadnetとのネットワーク共用が開始次第、より広いエリアでつながりやすい5Gネットワークの利用が可能になる。なお両者の協業はネットワーク部分だけであり、通信サービスそのものはそれぞれ別に展開を行う。
ライバルとなるChina TelecomとChina Unicomは既に4G時代からネットワーク設備の共有化を進めており、4Gと5Gで40万以上の基地局を両者共同で設置している。こうして見ると、中国の通信事業者はこれまでの3社体制が4社体制になっただけではなく、インフラ側で見ると「China MobileとChina Broadnet」「China TelecomとChina Unicom」という、2グループ体制になった。これにより消費者には料金やサービスの選択肢がより増えるだけではなく、5Gインフラ整備の面では大量導入によるコストダウンが可能となり、国内の5Gカバレッジ拡大をさらに進めることができる。
特にChina Broadnetが一社だけで5Gの全国展開を行うことはコスト面で難しく、最大事業者であるChina Mobileと提携することで「3強1弱」の期間を短くし、早期に「4社競争」の時代を迎えることも可能になるだろう。
5Gのコンテンツサービスにも大きな影響
China Broadnetの参入は5Gのコンテンツサービスにも大きな影響を与えるだろう。CATV事業を通してテレビや映画など多くのコンテンツプロバイダーと業務提携を行っており、ネットワーク上で流すコンテンツは既に豊富にある。外出先では5Gスマートフォンや5Gタブレットでテレビ放送を見ながら、自宅に帰ればその続きをテレビで視聴し、さらに手元のスマートフォンがそのままリモコンや番組案内となり、そのアプリからSNSで番組をシェアしたり感想を投稿したり、といった操作がシームレスで行えるようになるだろう。
China Broadnetの5Gサービス開始は、中国政府が進める「三網融合」、すなわち通信・放送・インターネットという3つのサービスの融合を大きく加速するものになりそうだ。4社体制になった中国の5Gサービスは、世界との差をさらに広げるものになるかもしれない。
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