一般ユーザーに「サブ回線」は本当に必要なのか――10年に1度の大規模通信障害を恐れて「コスト」を払う意味はあるか:石川温のスマホ業界新聞
7月2日から発生したKDDIと沖縄セルラー電話の通信障害を受けて、万が一の際の通信手段を確保する方法に注目が集まっている。詳しい人からすると「複数キャリアを契約すればいいんじゃない?」となりがちだが、普通のユーザーにとってハードルは意外と高い。
先週も少し触れたが「いざという時のためにサブ回線を持つのは是か否か」というのにいまだに悩んでいる。
自分の場合、iPhone 13 ProをデュアルSIMで運用しておいて本当に助かった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年7月9日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
KDDIの通信障害により、テレビなどのメディアからの問い合わせが相次いだ。普段、名刺にはauの電話番号を記載しているのだが、通信障害で繋がらない。そのため、最初はメールで問い合わせをもらったのち、こちらからiPhone 13 ProのデュアルSIMで、ソフトバンク回線からかけていた。その後はソフトバンク回線でやり取りできたため、ことなきを得たという感じだ。
スマートフォンの専門媒体であれば、サブ回線を持つことはもはや大前提であり、「どこを選んで、どの組み合わせがいいか」という話でいいのだが、朝の情報番組や一般メディアで「今後、通信障害が起きたときに備えて、我々ができることは?」と聞かれて、「サブ回線を持つべき」とは正直、言いづらい。
そもそも、キャリアの大規模通信障害なんて、10年に1回、程度の頻度しかない。ここ最近5年で3キャリアが通信障害を起こしているが、一つのキャリアを契約している人から見れば、10年ぶりぐらいの感覚に過ぎない。今回は3日間近く使えなかったが、大半は数時間で復旧するだけに、10年に1回、起きるかどうかわからない通信障害のために、一般の人たちに「サブ回線を持ちましょう」なんて、非現実的なことは勧められない。
そもそも「値下げプランが増えてきたので、通信料金を見直しましょう」という機運の中、「2回線で2つの会社に基本料金を支払う」というのはとてもバカバカしい話だ。
それと同じく「家族、一緒のキャリアだと連絡が取れなくなるからバラバラの方がいいかも」なんて話もあったが、一方で「家族でキャリアはまとめた方がお得」という状況になっていることを考えると、やはり経済的に見れば、家族で一緒のキャリアにまとめてしまった方がいいだろう。
今回、au回線を使っていた銀行のATMも止まってしまったようだが、本来ならば他社回線も引いておき、冗長性を持たせておくのが理想だろう。しかし、キャッシュレス決済が普及し、そもそもATMを使う人、回数が減っている。ATMそのものを維持していくのかという瀬戸際に立たされている中、もう1回線を引いて冗長性を保とうというのは困難ではないか。
宅配便も、荷物の場所を把握できなかったり、再配達の手続きが困難になったという話だが、ほんの数年前までは荷物の場所なんてわからないのが当たり前だったし、再配達の依頼なんてできなかったりもした。
今後、またやってくるかも知れない「通信障害」のために、毎月、サブ回線の通信費を負担し続けるべきか、それとも通信障害になったら、数時間もしくは数日、通信を諦めるか。悩ましい選択を迫られているようだ。
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