ドコモが「非通信領域」でライバルに勝つための秘策 前田副社長に聞く:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ドコモは、7月から社内カンパニー制を採用し、コンテンツや金融・決済、データビジネスなどの「非通信領域」を担うスマートライフ領域の組織を刷新した。事業の機動性を高め、収益に対する責任を明確化するのがこの仕組みの特徴。料金値下げなどで通信事業の収益が落ち込む中、ドコモは非通信の事業を成長のドライバーにしていく方針を掲げている。
機動力を高めて新分野に挑戦、自前の映像製作にも乗り出す
1億に迫るdポイントの会員基盤を生かし、「その後花開かせるのが、ヘルスケア・メディカルやエネルギー、あとは以前から続けてきた映像、XR」といった分野だ。スマートライフカンパニーを発足したのも、この展開を加速させるため。前田氏は「世の中の進化はスピードに追い付いていくのが大変なぐらいで、技術革新も相当な速さで進んでいる。そこに対してアジャストする、アジャストするどころかけん引していく動きをどうやったらできるのかを考え、カンパニー化していくところに行きついた」と語る。
カンパニーとして、ある種ドコモの本体から独立することで、「機動的な投資の判断ができる」。「設備投資もそうだし、Allianceでの出資やマーケティング展開もそう。当たり前の話だが、通信事業と違う領域を多岐にわたって展開していなければならないとなると、それだけのケーパビリティ(能力)も必要になる。それを獲得するため、人材の育成や採用もしていく必要ある」。カンパニー制の採用は、事業の展開を柔軟、かつ迅速にするための組織改編だったというわけだ。
目指しているのは、冒頭で挙げたようなプラットフォーム化だという。前田氏は「今は決済の分野から発生したデータをマーケティングに活用しているが、このデータをいろいろなところにつなげていく。データを自分たちの中だけに閉じさせず、オープンに活用していき、さまざまな領域をつなげる社会の『OS』になるような世界観を作りたい」と意気込む。売上高2兆円を目標にした2025年度には、「全てが開花するわけではないが、さまざまな人が巻き込まれていろいろなものが誘発されるような素地を作りたい」という。
一方で、ドコモはNTTの完全子会社化に前後し、スマートライフ事業の集中と選択を進めてきた。目立ったところでは、出前館と提携していた「dデリバリー」や、ネット上のトラブルに対応する「ネットトラブルあんしんサポート」、レジャー施設などの優待サービスを受けられる「dエンジョイパス」など、終了したものは少なくない。直近では、運転サポートサービスの「ドライバーズサポート」を2023年3月31日に終了することを発表している。
「dTV」「dアニメストア」「dマガジン」「dヒッツ」といったコンテンツサービスは提供を続けているものの、立ち上げ当初と比べると、話題性に乏しくなっているのも事実だ。前田氏も、これを認め「もっとアグレッシブにアップデートしていかなければいけない分野。やり切れてきたかという思いは正直ある」と語る。コンテンツ分野に関しては、「映像を中心に、改めて取り組みを進めていく」方針。グループ再編の一環として、ドコモはNTTぷららを吸収しており、ここを軸に映像事業を強化していく構えだ。
「映像サービスのやり方自体もアップデートしていきたい。チャレンジしたいのは川上側、コンテンツの企画制作の分野だ。配信側は川下での競争になってしまい、競争も激しい。正直に言うと、プロフィタビリティ(収益性)もあまりない。新しい価値を作っていくためには、川上側どう進出するか。僕らだけでできる話ではないので、いろいろな方々とアライアンスを模索する。とっぴなように思えるかもしれないが、コンテンツの表現形態も2Dだけでなく、3DやXRもある。そこでの制作の仕方や表現にはテクノロジーが必要。それを下支えする通信もやっている」
NetflixやAmazonはもちろん、ハードウェアメーカーとしてiPhoneを展開しているAppleも、映像製作に参入している。ぷららを吸収したドコモも、ここにチャンスがあると見ているようだ。フィーチャーフォン時代には、dTVの前身である「Bee TV」を展開していたが、「あのときは全部オリジナルだった」。こうしたノウハウも生かしつつ、海外展開も視野に入れる。「NetflixやAmazonといったOTTに対してライセンシングし、世界で見られる状況はできている。日本に限らずビジネス展開する余地は大きいので、そこは野心的に取り組んでいく」
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