端末“だけ”を売るのはキャリアの仕事ではない 転売ヤー対策が重要――NTT/NTTドコモ決算会見一問一答(2022年11月編):1円端末は「基本的に反対」(1/3 ページ)
NTTが2022年度第2四半期決算を発表した。第2四半期と通期(第4四半期)の決算説明会では、NTTドコモによる決算説明会も併催される。この記事では、NTTの島田明社長と、NTTドコモの井伊基之社長の質疑のうち、モバイル通信に関連する主なやり取りを紹介する。
NTT(日本電信電話)は11月8日、2022年度第2四半期の連結決算を発表した。円安傾向の影響もあり、連結の営業収益(売上高)は第2四半期までの累計では過去最高を記録し、当期利益(純利益/最終利益)も同様に過去最高となった。一方で、電気料金の値上げの余波などを受けて、営業利益は前年度同期比で減少した。
- →決算説明会(NTT)
一方で、同社の「総合ICT事業」を担うNTTドコモグループの2022年度第2四半期の連結決算は、法人事業とスマートライフ事業(非通信事業)の増収がコンシューマ通信事業の減収をカバーし、前年度同期比で増収増益となった。
- →説明会資料(NTTドコモ)
この記事では、同日に行われた両社の報道関係者向け決算発表会における質疑応答から、総合ICTセグメントに関連する主なやりとりを紹介する。
NTTの連結決算の概況。海外事業の好調さに円安の影響が加味された結果、営業収益と当期利益は過去最高を更新した(収益における為替の影響は1350億円ほど)。一方、海外からの資材調達や電気代の高騰もあり、営業利益は前年度同期比で127億円ほど減少している
NTTの連結決算における営業損益の増減表。先述の通り円安の影響などもあり「グローバル・ソリューション事業」(NTTデータなど)とその他事業の収益は大きく伸びている一方で、両事業の利益はそれほど大きく増えていないことが分かる。地域通信事業(NTT東日本/NTT西日本)については、2021年度における一過性の増収要因がなくなったことに加え、電気料金の値上げの影響を“モロに”受けてしまい264億円の減益となっている
総合ICTセグメントの連結営業損益の増減表。法人事業(NTTコミュニケーションズなど)とスマートライフ事業(非通信事業)の増収がコンシューマ通信(携帯電話など)の減収/減益をカバーしている構図となっている
NTT島田社長との質疑応答
NTTの決算説明会では、同社グループ全体に関する質疑の他、NTTドコモに関連する質疑も多く見受けられた。NTTの島田明社長と記者との主なやりとりは以下の通り。
電気代高騰の影響
―― エネルギー価格の高騰の影響で、営業利益の面で「(コスト削減策が)電気料金の値上げ分をカバーしきれなかった」という話があったと思います。実際にどのくらいの影響があったのでしょうか。今後対策を進めるということですが、どのようなことをするのでしょうか。
島田社長 実績で申し上げますと、グループ全体で300億円ほどの影響が出ています。(想定よりも)4割ほど高い状況で、年間(通期)になると倍の600億円ほどの影響が出ると見込んでいます。
電気料金をどうこうすることは(NTTには)できないので、他の分野におけるコスト削減を進めて、効率化を通して影響を抑えようと考えている所です。
携帯電話の緊急時におけるローミングについて
―― (携帯電話の緊急時における)ローミングについて、ソフトバンクの宮川潤一社長が先日の決算説明会で、KDDIの高橋(誠)社長から「ある通信会社で障害が起こった時にもう1社の回線が使えるといいよね」という旨の話を直接受けたとおっしゃっていました。御社にも同じような話はあったのでしょうか。
島田社長 今、政府(総務省)が話の場(検討会)を持たれています。立ち話みたいな所ではありますが、高橋さんや宮川さんとは「ローミングの問題はとても重要な問題なので、一緒に協力して解決策を出せるようにしよう」と話はしています。宮川さんと高橋さんの間だけの話というわけではありません。
―― それを受けて(事業会社である)ドコモに具体的な指示などはしているのでしょうか。
島田社長 ドコモは検討会に(関係事業者として)参加しています。(検討会を通して)議論は進んでいくのだとは思いますが、ローミングだけで解決できるわけでもないので、ローミング以外で、それこそKDDIやソフトバンクが言われる通りに「デュアルSIMサービス」みたいなものを出すとか、お互いにMVNOとなって「メインはドコモだけど、サブで他の事業者を組み合わせられる」という新しいサービス的なものを出していくのも重要なのかなと考えています。
以前も説明しましたが、法人向けには(固定回線の)バックアップサービスを提供しているので、今後はモバイル回線でも同様のサービスを提供することはあり得ると思います。
政府の検討会では幅広い観点でいろいろな議論が進んでいるので、そこは見守っていきたいと思います。ただ、スペック(要求水準)を高めるほど(議論に)時間が掛かってしまうので、段階を踏んで解決していく必要があると思います。
携帯電話端末の販売健全化
―― ソフトバンクの宮川社長は「1円スマホ(1円での端末販売)をやめよう」という趣旨の発言もしていました。どう思いますか。
島田社長 私も全く同感です。良い商売慣行ではないと思います。現在、公取委がいろいろ調べておりますが、いわゆる「転売ヤー」による転売が最大の問題で、世の中にとっても良くないことだと思っています。政府に関わっていただくことで、解決できる策を一緒に議論できればなと思います。
―― 先日、(ドコモの)井伊社長は「中古端末よりも新品端末の方が安いのはおかしいから何とかしたい」という旨の発言をされていた記憶があります。対策として、具体的にイメージしていることはありますか。
島田社長 今の所はありません。もちろん、中古よりも(新品が)安いという状況は、マトモではないことは確かです。
衛星を使った携帯電話通信について
―― 最近、スマホと通信衛星との直接通信に注目が集まっています。御社とスカパーJSATは5月に宇宙事業に関する業務提携を行いました。その中で、2025年度までにHAPS(高高度プラットフォーム)などの商用利用を開始するとしていますが、先んじてHAPSに取り組んできたソフトバンクの宮川社長は「(早期の商用化は)結構難しいのではないか」と若干弱腰になっています。NTTとしては、2025年度までにHAPSを商用化できると踏んでいるのでしょうか。
島田社長 やりたいと思っています。もちろん、技術的課題があることは確かですが、衛星通信はチャレンジングな分野だと思っています。Space Compass(NTTとスカパーJSATの合弁会社)では、例えば衛星間の通信をブロードバンド(広帯域)でやろうとしていますが、かなりチャレンジングな開発だと認識しています。
おっしゃる通り、宇宙空間でのサービスは課題が多いです。ですから、着実に研究開発部隊がバックアップしながら事業化を進めていく必要があります。ただ、「○○までにやる」と目標を決めないでやるといつまでも(商用化に)たどり着けないので、ひとまず「2025年度」という目標を定めた所です。
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