“やめたいMVNO事業”を引き継ぐサービス「まかせるMVNO」が生まれたワケ(2/3 ページ)
2017年ごろから淘汰(とうた)が進み、一定規模以上のMVNOが残った格好だが、現時点でも事業者数は増え続けている。このような市場環境に目をつけ、「MVNOの承継」そのものをサービス化した事業者が登場した。それが、スマートモバイルコミュニケーションズが始めた「まかせるMVNO」だ。
これまでMVNO事業を買い取ってきた実績がある
―― 直近では、どのぐらいのスパンで事業を承継してきたのでしょうか。
鳥越氏 お話を開始してから事業譲渡を終了するまで、半年ぐらいで実現しています。2年ぐらいかけて緩やかにということはなく、仮に今お話を開始しても、年内にタスクをこなして速やかに移行するということで、即時性は高いと思います。それでも、過去に承継したサービスに関しては、ユーザーからのお叱りやクレームをいただいたことはほぼありません。認識している限りでは、ゼロに近いですね。
―― 具体例として挙げられるところはありますか。
鳥越氏 昨年(2021年)だと、アドベントという会社があります。ソニーの元社長・安藤国威さんがブロックチェーン技術を基盤にしたベンチャー企業をやられていて、その企業と光通信が合弁で作った会社です。WiMAXや音声回線を中途半端に獲得してしまっていて、運営すればするほど赤字になるので早くやめたい。でもユーザーが3000人いるのでやめるにやめられないので助けてください、とお声がけいただきました。ここは、WiMAXが主体で卸を受けていたので、やりやすかったですね。顧客への請求とカスタマーサポート、あとは代理店対応をやればOKでした。この事業承継に関しては、きちんと利益を出せています。
今も数社からお声がけいただいていますが、赤字とはいえ、手塩にかけて作ったサービスだったり、苦労をかけて来てもらったユーザーだったりするので、愛着もあります。我が子の面倒をちゃんと見てほしいというところもあるみたいですね。一番高く値付けしてくれるところではなく、行ったあとユーザーが不幸な思いをしないところという観点です。
ユーザーが目減りしても採算性は保てる
―― 最終的に、引き取ったブランドをスマモバに統合していくお考えはありますか。
鳥越氏 引き取ったあとも、引き受け前のブランドは基本的に継続しています。大手でブランディングに注力しているところは別ですが、ほとんどはそこまでのことはしていません。「○○モバイル」という会社がスマモバになったとしても、ユーザーにはピンとこないと思います。だったら、カスタマー対応上、引き受け前のブランドをそのまま名乗った方が楽になります。お客さまが何のブランドに入っているのかが分からない方が面倒なことになります。
―― とすると、ブランドを分けたまま、それぞれの事業を伸ばしていく形になるのでしょうか。
鳥越氏 基本的にはサービスの保全が原則になるので、目減りしていくことになると思います。ただし、新規獲得は続けたいというところがあれば、獲得だけはそちらでお願いしますというケースはありえます。
―― ユーザーが目減りしてしまうと、採算性が厳しくなりそうな気もしますが、そこはどうするのでしょうか。
鳥越氏 業務管理やカスタマーサポート機能を担保するための固定費や、SIMカードの原価などが、少なくとも売上より小さければ赤字にはなりません。われわれが引き受けた場合、業務管理コストやカスタマーサポートコストは、現状維持でいけます。1万人のユーザーが5万人増えたとして、カスタマーサポートの数が5倍に増えるわけではないですからね。唯一増えるのはSIMカードの原価ですが、これもわれわれが交渉した方が声が大きく、影響力も強いので、よりいっそう利益は出しやすくなります。もちろん、デューデリジェンス(経営状況や財務状況の精査)をしなければ分からないところはありますが、少なくとも今より悪化することは絶対にありません。
―― スマモバにユーザーを移していくということはありえますか。
鳥越氏 そこにお客さまのメリットがありそうなら、やるかもしれません。あるいは、そのブランドを使わないでくださいという条件があればやりますが、わざわざやめてくださいというブランドもあまりないので、基本的には存続すると思います。先ほどお話ししたアドベントのWiMAXも、プランごと残っています。
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