「Xiaomiはブランド認知に課題がある」 ソフトバンクと三度目のタッグを組んだ先に見据えるもの:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
Xiaomiは、12月16日にフラグシップモデルの「Xiaomi 12T Pro」を発売する。大手キャリア(MNO)では、ソフトバンクが独占的に販売。ソフトバンクとXiaomiは、同モデルの特徴として、120Wの急速充電を「神ジューデン」として訴求していく。新モデルだけに搭載された特別な機能ではないが、なぜ2社はこの特徴に焦点を当てたのか。
研究開発の成果を生かしつつ、一点突破的に急速充電を訴求
テレビCMなどで120Wの急速充電を訴求しているのは、その成果だ。ソフトバンクの調査では、約75%のユーザーが、充電で困ったことがあると回答している。「これを、ストレスがないよう解決できないか」(菅野氏)と考えたのが、きっかけだ。「特許が、非常に速く充電できる機能を持ち合わせているとXiaomiから提案いただいた」(同)といい、他メーカーの端末も含め、シリーズとして急速充電をアピールしていくことが決まった。
とはいえ、120Wの急速充電自体は、Xiaomi 12T Proに初めて搭載された新技術というわけではない。Xiaomi自身が日本で発売したXiaomi 11T Proも、同様の機能に対応している。確かに、Xiaomi 12T Proの売りの1つではある一方で、最大の特徴というわけでもない。どちらかといえば、2億画素のカメラを搭載したことの方が技術的には新規性がある。では、なぜXiaomiはこのソフトバンクの提案に乗ったのか。
安達氏は、「スマートフォンの紹介は、まずカメラを説明し、ディスプレイのよさを説明したあと、使い勝手で締めて『素晴らしい商品です』ということが多い」としながら、「それだと、お客さまに(印象が)残らない」と語る。そこで、「明らかに他社より優れているところをフィーチャーすることで、まず興味を持っていただきたかった」と考えた。それが、120Wの急速充電だったというわけだ。実際、同機能を搭載したXiaomi 11T Proでは、「一番評価が高かったのが充電機能だった」(同)という。ワン氏も、充電は「Xiaomiの研究開発で重点を置いている技術」だとしながら、次のように語る。
「充電機能の(導入)最初に試したのは中国だった。最初に中国市場に展開し、そこからグローバル、次に日本へと展開している。Xiaomi 11T Proを出し、大量生産の体制も整った。さらに調整をし、安全な形でお客さまに使っていただけることを保証できるようになった。ソフトバンクがマーケティングも含め、デバイスの差別化を行ってくれたこともあり、シナジー効果が大きかった」
確かに、カメラ機能は2億画素と言っても、他メーカーのモデルとの違いが少々分かりづらい。画質は画素数だけに左右されるものではなく、どのように仕上がるかも重要だからだ。デジカメ並みの1型センサーや、老舗カメラメーカーの監修といった分かりやすさもない。また、どのメーカーの端末も、カメラの画質は既に一定のレベルを超えている。6型台のディスプレイだと、細部を拡大しなければ、違いを言い当てるのは困難になりつつある。ディスプレイの画質も同様だ。
対する120Wの急速充電は、その効果を体感しやすい。端末を付属のチャージャーで充電すると、画面には小数点第2位までバッテリー残量が大きく表示され、その数字が見る見るうちに増えていく。安達氏も「19分で充電できるということよりも、あのアニメーションに感動すると思う」と自信をのぞかせる。「日本のお客さまに響く機能」(同)というわけだ。
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