「Xiaomiはブランド認知に課題がある」 ソフトバンクと三度目のタッグを組んだ先に見据えるもの:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
Xiaomiは、12月16日にフラグシップモデルの「Xiaomi 12T Pro」を発売する。大手キャリア(MNO)では、ソフトバンクが独占的に販売。ソフトバンクとXiaomiは、同モデルの特徴として、120Wの急速充電を「神ジューデン」として訴求していく。新モデルだけに搭載された特別な機能ではないが、なぜ2社はこの特徴に焦点を当てたのか。
バッテリーの安全性もアピール、Xiaomiはハイエンドモデル市場に食い込めるか
一方で、あまり充電が速すぎて、発火してしまわないかは少々心配になってくる。2016年に登場し、全世界的に回収を余儀なくされた「Galaxy Note7」(日本では未発売)のように、小さな設計ミスが大事故につながるケースもある。特にスマートフォンに搭載されるリチウムイオンは、その素材上、燃えてしまいやすい。製品評価技術基盤機構(NITE)も、たびたび注意喚起している状況だ。事故が起きると、ブランドイメージは大きく傷ついてしまう。
これに対し、Xiaomiは「既に開発から2、3年たっている技術で、怖いものではない」(ワン氏)という。同モデルには、バッテリーを安全に制御する42の機能を搭載。ワン氏は「バッテリーの温度が急に上がった際に調整するようなチップも入っていて、ソフトバンクも別個にテストを行っている」と太鼓判を押す。ソフトバンク側も、いろいろなテストを念入りにして、われわれとXiaomiで合意してここまで出すことができた」(菅野氏)と話す。
バッテリーを24カ月間、無料で交換するサービスを実施するのも、その自信の表れだという。ワン氏は「2年のバッテリー補償をつけているのは、壊れない自信があるから。壊れなければ(結局交換しなくていいためXiaomiにとってのコストは)1年でも2年も同じこと」としながら、「成熟したテクノロジーなので安心して使ってほしい」と語る。
充電機能をフィーチャーしたからと言って、それ以外の機能が微妙というわけではない。カメラは、2億という高い画素数を生かし、ピクセルビニングで取り込める光の量を増やした。2億画素のセンサーを採用したのは、「光をできるだけ多く取り込むため」(ワン氏)で、画像サイズの大きさはあまり求めていないという。「ダイナミックレンジが広いため、日中の写真でも暗いところのノイズが少ない」(安達氏)のも、このセンサーを採用したメリットだ。さらに、ピクセルビニングを解除することで、「2倍までは画像の劣化がなくズームできる」(安達氏)。
Xiaomiは、6月にライカとの協業を発表。海外では、ライカブランドを冠した「Xiaomi 12S」や「Xiaomi 12S Ultra」も発売されている。「ライカは写真やレンズに関する専門技術を持っていて、特にハードウェアに非常に強い。XiaomiはソフトウェアやAIに強い。この両者の技術を合わせて製品を出そうと思った」(ワン氏)のが提携の狙いだ。残念ながら、Xiaomi 12T Proのカメラは「ライカ(ブランド)ではない」(ワン氏)ものの、「チューニングに関してはライカの認証を得たものを参考にしている」(同)という。ライカのブランドこそないものの、画作りに関しても期待はできそうだ。
Xiaomiが得意とするコストパフォーマンスの高さも健在だ。オープンマーケット版の価格は10万9800円で、IIJは10万円を下回る価格で販売する。ソフトバンク版は、ストレージ容量が多いことや、流通コストなどが加わったことで14万3280円と少々割高になってはいるものの、同社が取り扱うハイエンドモデルの中では、安価な部類に入る。「新トクするサポート」で2年後に端末を返却すれば実質7万1640円で利用でき、比較的購入しやすいモデルといえる。日本では、ハイエンドモデルの顔ぶれが固定化しつつあるが、ここにXiaomiがどこまで食い込めるのか。その行方を期待して見守りたい。
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