ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の2023年年頭所感 技術の進化と社会の変化にどう対応する?
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の社長が2023年の年頭所感を発表した。卯年である2023年を「飛躍の年」と位置付ける企業が多い中、MNO4社はどういった戦略を立てているのか。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の社長が2023年の年頭所感を発表した。
2022年はコロナ禍が多少の落ち着きを見せたものの、ロシアのウクライナ侵攻、急激な円安、燃油の高騰など、世界で大きな変化が起こった年だった。
またMNO各社ではドコモが2022年6月に「ahamo大盛り」オプションの提供を始め、楽天モバイルが7月に「0円撤廃」を行った。同月、KDDIの通信輻輳(ふくそう)による大規模な通信障害が起き、12月にも大雪の影響で各社通信障害が発生していた。
卯年は「飛躍の年」と位置付ける企業が多い中、MNO4社はどういった戦略を立てているのか。
ドコモ:「変革のNEXTステージ」メタバースやWeb3の進出へ向け積極な投資
ドコモはグループ再編から1年が経過し、2023年を「変革のNEXTステージ」と位置付け、新しいビジネスの創出とけん引、産業のDX(デジタル化)、イノベーションの創出を通じ、「日本や世界をワクワクさせる」という。
メタバースやWeb3を「次世代のインターネットビジネス」とし、現在では想像のつかないサービスやビジネスが生まれると予想。成長市場の開拓のため、積極的な投資を行い、将来の収益の柱として育てるとしている。
また「デジタル田園都市構想」の実現に向け、地域のICT強化へさらに貢献し、デジタル技術を活用した地方の活性化や課題解決に寄与する。NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの3社が一丸となり、ユーザーや社会に寄り添い、地域の個性を生かした顧客体験を創出する。
KDDI:中期経営戦略の2年目、2つの事業戦略を発表
KDDIはさまざまな世界情勢のもと、2022年に「KDDI VISION 2030」として新たなスローガン「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会を作る」を掲げ、KDDIグループの総力で社会の課題解決と持続的成長に貢献すると宣言した。これに加え、2022年から3年間の中期経営戦略として、企業価値の向上と社会の持続的成長の循環を目指す「サステナビリティ経営」と、その実行を支える事業戦略「サテライトグロース戦略」「経営基盤強化」を発表する。
- サテライトグロース戦略
通信を核とした、DX、金融、エネルギー、ライフトランスフォーメーション(多様化する消費、体験行動に対する新たなビジネスの創出)、地域の共創からなる成長領域の拡大をサテライトグロース戦略と位置付け、推進する。通信事業においては2022年7月に発生した通信障害の教訓を踏まえ、安定したサービス提供のためAIやスマート監視による運用の高度化、仮想化を進める。
ユーザーの多様なニーズに応えるため、5Gエリアの拡充に加え、衛星通信「Starlink」などの新技術を活用したネットワーク整備、5Gの高速、大容量通信が可能な特性を生かしたユーザーの体験価値向上に取り組む。
他の注力領域については、ユーザー企業のDX加速による法人事業、組み込み型金融の推進による金融事業、再生エネルギービジネスの加速によるエネルギー事業それぞれの成長を目指す。これに加え、行政やパートナー企業と連携したメタバースやデジタルツインの取り組みを通じ、未来に向けた体験価値の創造に貢献する。
- 経営基盤強化
事業戦略を着実に実行するため、社員一人一人がプロフェッショナルとなり、適材適所で活躍できる環境を整備することが不可欠だとして、「人材戦略」として推進してきた三位一体改革を「多様な人財の活躍と組織の成長、D&I(ダイバーシティー&インクルージョン、多様性)の実現」「DX人財育成の育成とリスキル教育への対応」「ニューノーマル時代の新しい働き方の浸透」といった次のフェーズへ移行する。
KDDIが2022年から実行している中期経営戦略の2年目であり、激しい環境変化のなか、機敏な先読みと未来への投資により、企業価値の向上と社会の持続的成長を目指す「サステナビリティ経営」を実践し、ユーザーが信頼できる5Gネットワークのもと、今までの常識にとらわれない「ワクワクするサービス」を提案するという。
ソフトバンク:V字回復の年、社会ニーズを取り込むための事業展開を継続
ソフトバンクは2023年を「V字回復の年」とするという。2022年の連結営業利益から反転を目指す。
2022年はPayPayの登録ユーザー数5000万人の達成や、SBペイメントサービス、SBC&S、PayPayの3社によるマルチ決済端末の共同展開、アスクルとの中小企業のDX推進支援事業「ビズらく」の開始など、明るい話題がいくつもあったという。
この他、人流、気象データなどを活用する小売り、飲食業界向けAI需要予測サービス「サキミル」、メタバースプラットフォーム「ZEPETO」(ゼペット)のソフトバンクショップ開設、慶應義塾大学SFC研究所と設立した「デジタルツイン・キャンパス ラボ」の始動など、デジタルの社会実装に向けた挑戦も始めている。
PayPayの子会社化に伴い、ソフトバンクの事業に金融を追加したことが大きな転機だとして、PayPayの他、SBペイメントサービス、PayPay証券などのグループの金融サービスの方向性を合わせることで、通信、インターネットに次ぐ事業の柱へ成長させるという。
ウクライナ情勢やコロナ禍の長期化で世界情勢と事業環境が大きく変動し、将来予測が一層難しい時代となったとしつつ、電気料金の値上がり、デジタル化の流れの加速などを踏まえ、持続可能な通信インフラを維持して運用することの重要性と責務、サプライチェーン全体のリスク管理の重要性を再認識したという。
スマートフォンを通じた日常生活の利便性向上や、事業成長、ビジネスモデル構築のためのデータの利活用、自然災害や事故のリスクに対する備えや予防などのニーズの高まりを受け、こうしたニーズを取り込むための事業展開や関連する技術の研究開発を引き続き推進するとしている。
楽天グループ:自社回線エリアを拡大し、便利で充実したサービスを届ける
楽天グループにとって2023年は「世界はダイナミックなテクノロジーの進化と社会変化の中にある」としつつ、さらなる確信への挑戦が求められる年だという。
2022年の年間グローバル流通総額は前年比23%増の33兆円を超え、会員数も約17億人となった。国内ECサイトの売上高と流通総額も成長を続けており、インターネットサービス事業は堅調だとしている。フィンテック(金融技術)サービスにおいては、楽天カードの発行枚数や楽天銀行、楽天証券の口座数も成長しており、独自の経済圏を通じて幅広い分野で新しい価値を創出してきたという。
この「楽天経済圏」は楽天モバイルとの相互作用によって急拡大するフェーズへ移行し、2023年は楽天モバイルの自社回線エリアの拡大を進め、よりお得で便利、充実したサービスを届けることで経済圏をさらに広げるという。E2Eサービスである「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」を軸とした通信プラットフォーム事業の世界展開も本格化するとしている。
関連記事
- “草刈場”になった楽天モバイル/前代未聞だったKDDI通信障害 2022年のモバイル業界を振り返る
モバイル市場で2022年、最も注目を集めたテーマは楽天モバイルの“0円廃止”と、KDDIの通信障害だった。楽天モバイルの0円廃止により、他社への流出を加速させる結果となった。KDDIの通信障害は、複雑化するモバイルネットワークにおける課題が浮き彫りになった。 - 新機軸が乏しかった2022年のスマートフォン 端末価格の高騰で“長く使う”機運も高まる
今回はスマートフォンをはじめとした端末やその売り方に関するトレンドをまとめていきたい。2022年は、スマートフォンに大きな革新がない1年だったといえる。ハイエンド側ではAIの活用や、フォルダブルといったトレンドを引き継ぎつつも、正統進化のモデルが多かった印象だ。 - ついに発表! 2022年を代表するスマートフォンは?
2022年を代表するスマートフォンを決定する「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー」の結果発表。2022年は「ハイエンド部門」と「ミッドレンジ部門」に分け、各部門で5機種ずつ、最終的に各部門で1機種を選定します。審査員の配点とコメントを紹介します。 - KDDIの通信障害が「業績」と「業界」に与えた影響 水面下で進むキャリア間での連携
KDDIの上期業績は、増収は維持したものの、7月に大規模通信障害を起こしてしまったことで利益が減少。通信障害は新規契約にも影響を与え、回復までに時間を要した。通信障害対策として中期で総額500億円を投じ、仮想化基盤への早期移行やAIによるネットワーク監視の高度化を行う。 - 売れた? 売れなかった? ショップ店員に聞く2022年の「新型iPhone商戦」
2022年も「新型iPhone」としてiPhone 14シリーズが登場しました。新たに登場した「iPhone 14 Plus」の発売時期が少し遅かったこと以外を除くと、例年通りの「新型iPhone商戦」になるかと思いきや、そうでもない面もあったようです。携帯電話ショップで働くスタッフに話を聞いてみることにしましょう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.