欧州を中心に進む“TikTok禁止”の動き 日本への影響は?
ここ数カ月、欧州を中心にTikTokの利用を制限する動きが活発になっています。2022年12月、米国ジョー・バイデン大統領は、連邦政府デバイスでのTikTokを禁止する法案に署名。3月1日には政府デバイスだけではなく、米国内でのTikTokの利用を全面的に禁止する法案が、米下院の外交委員会で賛成多数で可決しています。
ここ数カ月、欧州を中心にTikTokの利用を制限する動きが活発になっています。2022年12月、米国ジョー・バイデン大統領は、連邦政府デバイスでのTikTokを禁止する法案に署名。連邦政府だけではなく、州政府でもTikTokの使用を禁止する動きが広がっていました。そして3月1日には政府デバイスだけではなく、米国内でのTikTokの利用を全面的に禁止する法案が、米下院の外交委員会で賛成多数で可決しています。今後、上下両院の本会議を通過し、バイデン大統領の署名が必要となりますが、もし可決されればその影響は計り知れません。
米国だけではなく、EUやカナダでも政府所有のデバイスでのTikTokの使用を既に禁止しており、3月16日には英国も政府デバイスでの利用を禁止すると発表しました。なお、日本でも同様に政府デバイスでのTikTokの利用が禁止されています。
TikTokを危険視し、その利用を禁止する動きは今に始まったことではなく、2020年には当時の米トランプ政権は、TikTokの運営元であるByteDance(バイトダンス)に対し、米国企業に売却を求める大統領命令を出していました。この際は、米国企業であるOracleと提携し、「Oracleが信頼できるテクノロジープロバイダーとしての役割を果たす」と発表。バイデン政権が2021年にこの大統領命令を取り消していました。
このようにTikTokが危険視されているのは、TikTokが中国のByteDanceを親会社とする中国企業だからにほかなりません。TikTokはユーザーデータの中国政府への引き渡しに関しては繰り返し否定していますが、中国企業である以上、中国政府からの命令があればデータの引き渡しを拒むことは難しいというのが実情です。
TikTokはそのユーザー数を公式に発表していませんが、2021年9月には月間アクティブユーザー数(MAU)が全世界で10億人を突破したと発表しており、2022年には15億人を超えているのではとの予想もありました。中国企業のサービスやアプリなどは他にも無数にありますが、ここまでユーザー数が多くなると、その影響を無視するわけにはいかないということなのでしょう。
TikTokは、こうした懸念に対応するため、2022年6月に米国のユーザーデータを米国内のOracleのクラウドサーバに移管する対応を行っています。
ただ、トランプ政権から売却を求められたときには、「米国のユーザーデータはプライバシーとセキュリティを保護するための特別な措置を講じている」と説明していたにもかかわらず、米国ユーザーのデータに中国のByteDanceのエンジニアが繰り返しアクセスしていたと報じられています。
2022年8月には、iOS用のTikTokアプリ内ブラウザに、キー入力や画面のタップを監視可能な機能が組み込まれているとの指摘がセキュリティ研究者フェリックス・クラウス(Felix Krause)氏がなされています。あくまでも利用できる可能性があるとの指摘でしたが、TikTokはこれに対し、デバッグやトラブルシューティング目的だと機能の搭載自体は認めています。
こうしたこともあり、ユーザー情報の保護という観点からTikTok禁止の流れが出てきても何ら不思議はないでしょう。なお、冒頭にも述べた通り、米国では政府デバイスだけではなく、全面禁止の動きが広がりつつあります。仮に全面禁止となった場合、日本が追従するかは未知数ですが、Huaweiなどの例を考えると、直接的に禁止することはないのではと思います。ただ、米国ではGoogleとAppleに対してそれぞれのアプリストアからTikTokを削除するよう求める動きもあります。もしアプリが削除された場合、これまでのような盛り上がりはなくなるかもしれません。
最終的にはセキュリティうんぬんを抜きにして、政治的な話になっていくと考えられますが、今後の動向を注目していきたいところです。
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