KDDIの「副回線サービス」を契約してみた 利用時の注意点と300kbpsでできること:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
KDDIとソフトバンクは、お互いの回線をいざというときのバックアップ回線として活用する「副回線サービス」を発表した。今回はKDDIの副回線サービスに申し込んでみた。その申し込み方法や利用方法をお届けするとともに、使い勝手や注意点などもレポートしていきたい。
300kbpsはどの程度の速度なのか、スループットやWebの表示速度を確認
300kbpsという速度を聞いても、何ができるか、ピンとこない人もいるはずだ。そこで、いくつかの利用シーンを想定し、作業が完了するまでの時間を測定してみた。まずは、ITmedia Mobileのトップページ(スマートフォン版)にアクセス。Google検索の画面から、ITmedia Mobileに飛び、表示が完了するまでの時間を測った。その時間は、およそ1分10秒。テキストの見出しは10秒ぐらいで読み込み終わったが、サムネイルの画像表示に時間がかかった。
次に、決済サービスの代表例として、PayPayを試した。こちらは、わずか2秒でバーコードが表示され、使い勝手は速度制限がない場合とほとんど変わらない。ただし、これはバーコードを表示し、決済をすることに限った話。例えば、PayPayクーポンを開くと、なかなか画面が切り替わらない。表示後も、お店ごとのアイコンやサムネイルをゆっくり読み込んでいく。決済履歴の確認にも時間がかかった。支払いだけならスムーズだが、その他のことをする際には待たされることがある。
プレスリリースには、行政手続きも挙げられていたため、マイナンバーカードを使ってマイナポータルにもアクセスしてみた。マイナポータルのアプリを開き、ページの読み込みが終わるまでは約4秒。ここまでは早かったが、「ログイン」ボタンをタップし、利用者証明用証明書のパスワードを入力する画面を開こうとしたところ、一度目はタイムアウトでエラーが表示されてしまった。2回目もエラー。3回目のチャレンジでパスワードの入力はできたが、表示までに30秒もかかった。
マイナンバー読み取り自体はNFCを使うため、通常と変わらなかったが、ログイン後のマイナポータルを表示する際にも、1分30秒ほど待たされている。通信障害や災害でまったくアクセスできなくなってしまうよりはマシだが、お世辞にも快適とは言いがたい体験だった。タイムアウトでエラーが出てしまうのもいただけない。ここは、300kbpsという速度がネックになっているようだ。
最後に、推奨されてはいないが、YouTubeの動画も見てみた。表示したのは、auのオフィシャルアカウントにあった「ココロ、オドルほうで。」というテレビCMのフルバージョン。サムネイルをタップしてから、10秒も待たずに再生が始まり、すぐに動画を見ることができた一方で、画質は非常に悪い。YouTubeは、回線状況に合わせて画質を自動で調整するためで、このときは「144p」に設定されていた。動画が止まるようなことはなかったが、細部はほぼ見えない。
ただ、緊急時にニュースを見たいというニーズはあるだろう。特に普段から動画で情報を取っているユーザーには、まったくつながらないよりはマシといえる。音声はクリアに聞こえたため、必要十分な情報は得られそうだ。逆に言えば、映画のような映像作品を楽しむような用途には向かない。500MBとデータ容量も少ないため、やはり日常生活を送るうえで、本当に必要なことをするだけにとどめておいた方がいい。
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