“ホリエモンのMVNO”誕生の舞台裏 あえてahamoより高く、今後も「○○モバイル」は増やす:MVNOに聞く(3/3 ページ)
2014年にモバイル業界に参入したエックスモバイルが、事業家の堀江貴文氏との共同事業「HORIE MOBILE」をスタートさせた。HORIE MOBILEは、単に通信が使えるだけでなく、堀江氏が関わるさまざまなサービスをセットにしている。一方で、これまで“格安スマホ”と呼ばれていたMVNOの料金水準と比べると、やはり少々割高だ。
HORIE MOBILEがきっかけでX-mobileを契約する人も
―― 今後、X-mobile自体はどうしていくのでしょうか。
木野氏 HORIE MOBILEでX-mobileを知った人の中には、X-mobileを契約する人もいます。相乗効果がすごく大きい。X-mobileは知らないが、HORIE MOBILEなら知っているという方もいますからね。堀江さんも、動画で「近くのX-mobileに行ってください」とおっしゃっています。そこに行ったらいろいろな料金プランがあり、モバイルWi-FiもWiMAXもある。本人はHORIE MOBILEでも、娘さんはDXmobileで、田舎にいる親にはX-mobileというように、家族でバラバラのブランドに申し込む方もいます。
―― なるほど。確かに、全員が全員20GBプランというわけにもいかないですからね。そこは料金プランが多様なX-mobileでフォローできるということですか。
木野氏 ただ、(コラボブランドも)プランは増やしていきます。X-mobileにもKDDI回線のSIMだったり、eSIMだったりがありますが、そういうものをDXmobileやHORIE MOBILEにも提案できます。引き出しが増えた方がいいですからね。
―― お話を聞いていると、ヒットの鉱脈をついに見つけたような印象も受けます。
木野氏 まだまだ分からないですね。ただ、かなり手応えは感じています。仮にこういうブランドを10やれば、100回線ずつでもデーリーで1000回線になります。エックスモバイルに言えばやってくれるという評判も、広がりつつある。例えばサガン鳥栖がこういうことをやりたいと考えても、IIJや日本通信には問い合わせをしないと思うんですよね(笑)。ここは面白そうだなということで、エックスモバイルをパートナーにしてくれるところが増えれば、伸びていくと思います。
スマホを作るのは無理、自社で作っているのはWi-Fi端末のみ
―― ただ、ファンベースのMVNOというアイデアは以前もありました。TigersケータイやDisney Mobileもそうですが、全てなくなっています。そことの違いは、どうお考えでしょうか。
木野氏 以前のそういったMVNOは、端末依存でした。TigersケータイもDisney Mobileも特別な端末があった。でも、今は端末が売れる時代ではない。5年前、10年前と違い、好きなところで端末を買ってSIMを契約する時代です。僕らも頑張りましたが、スマホを作るのはとても無理と分かりました。AppleやSamsungが競合になるわけで、それはどう考えても「無理っしょ(笑)」という。
逆に僕らにできるのは、キャリアに付加価値をつけていくことです。今だと、個人の発信力が強まっている中、それとキャリアのサブスク型ビジネスをうまく組み合わせることができれば、いろいろな形での応用ができます。堀江さんやDaiGoさんを筆頭に、個人ブランドのモバイルキャリアは今後増えていきますし、僕らも増やしていきたい。そのためにも、HORIE MOBILEやDXmobileを成功させるのが、早急なミッションです。
―― 先ほど堀江さんとのきっかけとして、Xiaomiの端末を一緒に売りたかったというお話をされていました。木野さん自身、ガジェット好きとして一部で有名ですが、やはり端末は難しいでしょうか。
木野氏 今、自社で作っている端末はモバイルWi-Fi(スマートWiFi)ぐらいです。これは好評で売れています。
―― 主力は限界突破WiFiじゃなかったんですね。
木野氏 はい。限界突破WiFiはクラウドSIMですが、今は積極的には売っていません。スマートWiFiでeSIMに変えました。モバイルWiFiはDXmobileが主力になり、世界で使えるということをうたっています。そうすることで、使い放題にしなければいけないという競争からも脱却できます。
―― eSIMはどこの回線ですか。
木野氏 ソラコムです。KDDI回線や海外ローミングは、ソラコムからの提供になります。
―― そこはなぜ切り替えたのでしょうか。
木野氏 クラウドSIMには嫌な思い出があるので(苦笑)。OEM提案はめちゃくちゃ多いのですが、そこに依存したくないという思いがありました。
―― eSIM対応ルーターなら探してくればありそうですが、なぜ自ら開発したのでしょうか。
木野氏 それはどこにでもできるじゃないですか。端末を調達して、育てていくのはなかなかできません。何年かかっても自分たちで成長していくべきだということは、無制限の問題が起こったときに思い知りました。
―― 最後に、この記事を読んでやってみたいと思った個人や会社は、エックスモバイルに問い合わせしてもいいのでしょうか。先ほどリソースには限りもあるとおっしゃっていましたが……。
木野氏 お問い合わせ、お待ちしています。一緒にケータイキャリアを作りましょう。僕がプロデュースします。確かにリソースには限りがありますが、お問い合わせいただくことはポジティブに捉えています。
取材を終えて:DXmobileやHORIE MOBILEがコラボSIMの呼び水に
DXmobileやHORIE MOBILEを立ち上げたのは、エックスモバイルが激変した市場環境に対応していくための一手だったことが分かった。確かに、楽天モバイルの本格参入や、大手キャリアのオンライン専用ブランドが登場したことで、MVNOの生存領域は狭まったといわれている。MVNOでも、大手は接続料の低減を武器に、さらなる値下げに打って出ているが、中小MVNOには厳しい状況が続いているのは事実だ。
このような中、エックスモバイルはあえて価格競争から降り、独自の付加価値を追求していく方向にかじを切った。その知名度もあって、DXmobileやHORIE MOBILEは、コラボレーション相手の“呼び水”にもなっているようだ。かつてMVNOが展開していたファンビジネスはどれも成功しなかったが、その反省も踏まえ、コスト構造を軽くしていることもうかがえた。次に登場する「○○モバイル」にも注目しておきたい。
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