携帯値下げの衝撃から2年、収益回復への秘策は? ソフトバンク決算で語られたこと(2/2 ページ)
ソフトバンクは5月10日、2022年度通期決算と新中期経営計画を発表した。決算説明会では宮川潤一社長が登壇し、展望を紹介した。質疑応答では「副回線のワンナンバー化」にも言及した。
宮川社長の一問一答:副回線のワンナンバー化を検討中
以下では、質疑応答の中からモバイル通信に関連するやりとりを抜粋して紹介する。
――(記者) モバイル通信サービスの品質が外部機関から評価された件。ソフトバンクのモバイル回線の強みを改めて説明してほしい。
ソフトバンク宮川潤一社長 ありがとうございます。なかなかほめていただけない会社なものですから、よくなったぞと評価いただいたことは、本当にうれしい。
ソフトバンクは5Gでは、700MHz帯と1.7GHz帯を主力として、Sub-6との組み合わせで5Gの面展開をしている。やってみて分かったのは、4Gと5Gのマイグレーションは本当に難しいということだ。ユーザーの声を分析している専門チームがあり、「このエリアではこんなことが起こっている」という報告を日々の経営会議の議題に上げ、経営陣を含めて意思決定を行ってきた
具体的には、全国のサービスエリアを666メッシュに区切って、日々品質をチェックしている。このメッシュごとの品質が上向いているのか下向いているのかを役員全員が把握しながら進めている。その結果が実ってきたかと、安堵(あんど)している。
特別なことをやっているというよりは、4Gから5Gへの移行は宿題が多くあり、こなしながら進めているという状況だ。これは3Gから4Gへの移行時よりも難しく、他のキャリアさんも難しい判断を迫られていると思う。今後は、5G SAへの移行という、より緻密な作業を進めていきたいと思っている。
―― ARPUの上昇に向けて、付帯サービスを拡充する方針が示された。より具体的に教えてほしい。
宮川社長 店舗の中でいろいろなサービスを提供し始めている状況だ。通信サービスを提供するだけでなく、スマホの使い方を学習したり、さらに使いこなすためのいろいろな教室を実施したりしている。例えば、PayPayのような、グループ企業のサービスの使いこなすための教室についても、有料サポート化を進めている。手応えを感じているところだ。
榛葉淳副社長 最終的な売り上げや利益はARPUの金額とユーザー数の掛け算で決まる。契約数ではY!mobileがけん引しているが、ARPUは当然ながらメインブランドのSoftBankの方が大きい。
料金値下げから2年が経過した今の段階で、SoftBankブランドの再強化を図っている。方策はPayPayクーポンの配布などグループ企業との連携や、動画などのコンテンツサービスの展開など。
また直近では、Y!mobileで月間10GB〜20GBを利用するユーザーで、SoftBankブランドへの移行を悩まれている方が増えている。そういった方にSoftBankへのアップデートを選んでいただけるような施策に注力している。このような訴求により、今期はARPUの減少幅は縮小できるだろうと考えている。
―― オンライン専用ブランドの「LINEMO」について。プレゼンテーションの中では一切説明されなかったが、現状について教えてほしい。
宮川社長 ソフトバンクのLINEMOは、ドコモさんのahamoやKDDIさんのpovoのようなブランドとは立ち位置が違うと考えている。料金面ではY!mobileとLINEMOの差は大きく開いておらず、どちらを選んでいただいても構わないと考えている。
Y!mobileとLINEMOという2つのブランドの中では、店頭展開しているY!mobileが主力商品と考えている。事業運営の中では、両ブランドを合算してユーザー数や満足度などを検討している。
2022年度はオンライン専用ブランドへの移行が活発化した時期が何度かあり、LINEMOのユーザー数はそのときに急速に増加した。今は落ち着いている状況だ。
―― 2023年3月末に開始した「副回線サービス」の反響は。あわせて、ドコモが5月にKDDI向けの副回線サービスの提供を開始したことに対する受け止めも教えてほしい。
宮川社長 副回線サービスには、正直過度な期待はしておらず、必要な方に必要な形でお届けできればいいと思っていた。1カ月に何万回線も増えるようなサービスではない。
ドコモ網の副回線サービスについては、個別事業者との交渉については詳しく説明できないが、当然ながら進めていきたいと思っている。モバイル回線のインフラとしての役割が大きくなっている中で、キャリア同士が支えあい、安定してサービスを提供し続けられるような保険をかけていく必要があると考えている。
―― 前回の決算会見で「副回線サービスをワンナンバーでやりたい」という構想をお話されていたが、実現の可能性はあるのか。
宮川社長 副回線のワンナンバー化については、KDDIさんと検討を重ねている。技術的には可能だと確認した。
ただし、ワンナンバー化した場合、通信障害の内容によっては、着信が正常に行えない場合がある。例えば、通信障害の影響範囲が音声呼を処理しているコアネットワークの設備で発着信は問題ない。一方で、コアネットワークの中でもユーザーデータベースや、コントロールプレーンに関わる通信障害が起こると正常に発着信が行えなくなる。混乱を防ぐため、当面は2つの電話番号で提供する現在の形を維持する方針だ。
―― 2023年3月末で提供終了した「PHS」について、ソフトバンクとしての総括を。また、PHSの後継となるSXGPサービスへの期待も述べてほしい。
宮川社長 PHSに関しては、ウィルコムの管財人代理として関わった経験もあり、非常に感慨深い。非常に面白いテクノロジーであったと今でも思っているが、少ない帯域では音声通信とデータ通信の入り口までしか実現できず、やはり時代にはそぐわないと考える。
一方で、PHSが設置されている屋外基地局のうち、4G LTEの基地局も併設した基地局も数万局単位あり、多くが現存している。今後は5G単体の基地局へと置き換えられていくことだろう。
SXGPは、出力を抑えた通信規格で、病院など電波干渉が少ない方が望ましい場所で有効だ。SXGPの活用については、Appleも非常に協力的で、いろいろな議論をしている。今後、SXGPを活用した新しいサービスを提供できるような機会が来たらと期待している。
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