楽天、825億円の赤字ながら収益改善をアピール 「新ローミング契約は財務の安定性に貢献」(3/3 ページ)
楽天グループの2023年1月から3月の国際会計基準による連結業績は、825億円の赤字だった。前年同期比と比べて赤字額は縮小したが、携帯電話事業で基地局設置などの先行投資が継続中で、それが負担となった形だ。KDDIとの新ローミング契約が「大幅な顧客体験向上とコストコントロールに大きく寄与する」という。
さらなるユーザー数増加、解約率低下を図る
解約数、解約率も大幅に下がってきているという。今回の最強プランでさらに解約率が低下し、「近い将来、業界水準あるいはそれより下回るところまで行ける」と自信を見せた。
期待しているのが、楽天モバイルと楽天エコシステムの強力なシナジーだ。楽天エコシステムから楽天モバイルへの流入はワンクリック回線で促されると予想。また、楽天モバイルの加入によって楽天グループの各種サービスがより使われるようになることは、これまでもよく説明している。
他キャリア経済圏とのネット・プロモーター・スコア(NPS)の比較。楽天グループのNPSは他社に比べて20ポイント以上、上回っているデータを示し、楽天エコシステムの強さをアピールした。このエコシステムをうまく使いながら楽天モバイルのユーザーを増やしていくという
ARPUも順調に上昇しており、モバイルARPU(1959円:決算データシートより)にエコシステムARPUアップリフトを加えたものは2652円。エコシステムのリフトアップをさらに増やすとともに、データ通信量の増加、オプション利用でARPUはさらに増えていくが、三木谷氏は「まずはユーザー数を増やすことに傾注していきたい」と語った。
新たな収益源としては、法人契約、Rakuten Linkアプリ内の広告、今後提供を予定している高速インターネットサービスや楽天ひかりを挙げた。法人契約は楽天グループの取引先90万社を中心に「25%のマーケットシェアを取ろうということで動いている。順調に推移している」とした。
楽天シンフォニーの業績についてはタレック・アミン氏が説明。2023年第1四半期の売上収益は7600万米ドルで、前年同期比14.6%増となった。クラウドビジネスやOSS(運用支援システム)のセグメントが好調だったという。
「(2021年〜22年の)創業期は(楽天モバイルで)日本でトライアルを行っていきながら、その品質、信頼性、スケーラビリティを実現し、その結果、楽天がO-RANの分野で、世界で引っ張っていくことができるようになった。今(2023年〜24年)は収益化のステージ。主要顧客から着実な受注をもらっていく。ブラウンフィールドでの商用O-RAN展開も重要。また、OSSとクラウドのけん引力を加速させていく。2025年〜30年は収益成長のステージ。楽天が、特にO-RAN、OSSの分野において世界のリーダー、パイオニア、そして選ばれるパートナーになってくる」(アミン氏)
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