あの「Wiko」の5Gスマホが中国で登場 ベースになった意外な機種の正体:山根康宏の海外モバイル探訪記
2019年に日本に参入し、その後事実上撤退したWikoが、現在中国で5Gスマホ「Wiko 5G」を販売している。これにはHuaweiが製造する「nova 9 SE」がベースモデルとなっている。米国がHuaweiのスマホ規制を強める中、Huaweiが行っている施策を調べた。
みなさんはWikoというスマートフォンメーカーを覚えているでしょうか? 低価格なフランス生まれのスマートフォンとして日本には2019年に参入、しかし数機種を出しただけで事実上撤退してしまいました。Wikoは一時は欧州でも人気メーカーでしたが、今ではその存在感も薄れてしまっています。ところがそのWikoから初の5Gスマートフォン「Wiko 5G」が発売されました。
Wiko 5Gが発売されたのは中国。これまでWikoは中国には参入しておらず、Wiko 5Gが初のモデルとなります。しかしなぜにこれまで参入していた国ではなく、中国で新製品を出したのでしょうか? そもそもWikoの親会社であるTinno Mobileは中国の企業ですから、海外向けではなく国内向け製品をこれから投入していくという意欲の表れなのかもしれません。
しかし今から無名なWikoのスマートフォンが売れるとは考えにくいところ。しかしそこにはしたたかな販売戦略があったのです。2023年3月に深センを訪問した際に、Huaweiの店舗でWiko 5Gが販売されていました。Wikoの製品なのになぜかHuaweiが取り扱っているのです。
「Wiko 5G」のスペックは、プロセッサがSnapdragon 695 5G、ディスプレイは6.78型(1080×2388ピクセル)120Hz、前面に1600万画素カメラを搭載しています。4000mAhのバッテリーは66W急速充電にも対応。メインカメラは1億800万画素に800万画素超広角、200万画素のマクロと200万画素深度測定の4つ。背面仕上げも落ち着いています。
こんな製品を出すとはWikoもなかなかだなと思ったのですが、実はWiko 5Gにはベースモデルがあります。それはHuaweiの「nova 9 SE」。Huaweiのスマートフォンは米国政府の規制で5Gの搭載が制限されています。そこでHuaweiは自社の4Gスマートフォンを他社にライセンスし、別会社が5Gモデルとして別の製品名で販売を行っているのです。そのためWiko 5GはHuaweiがライセンスする自社開発OS「HarmonyOS Cnnect」が搭載されています。
Wiko 5Gはいわば抜け道のような形で作られたHuaweiの5Gモデルであり、中国では他にも中郵通信設備の5Gスマートフォン「Hi nova」などがあります(ベースは同じく「nova」シリーズ)。Wikoのブランドは中国では知られていませんが、Huaweiの店舗でnova 7 SEの横に展示されており、しかも1億800万画素カメラを搭載しているということで意外と人気が出るかもしれません。
カメラのUI(ユーザーインタフェース)も当然ですが、Huaweiの他のスマートフォンと同様。使い勝手は変わりません。Wikoブランドがまだ健在な欧州あたりでも販売できそうですが、GMS(Google Mobile Services)非搭載ではちょっと難しそう。
何はともあれ、老舗のブランド製品の復活はうれしいことです。今後Huaweiの他の4GスマートフォンもWikoの名前で5Gモデルとして出てきたらうれしいのですけれど、どうなるでしょうか? 超薄型の折りたたみスマートフォン「Mate X3」あたりがWikoから出てきてほしいと思うところです。
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