“携帯電話の基本”が磨き上げられた「iOS 17」 ただし日本語対応には課題も:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
今秋リリースのiOS 17は、携帯電話の基本ともいえる「電話」や「メッセージ」の機能改善が主なトピック。「iOS 14」で導入されたウィジェットも、より多機能になる。ただし日本語対応の面では課題も残っている。
米Appleは、6月5日(現地時間)にWWDC(世界開発者会議)の基調講演を開催した。2時間にわたる基調講演では、iOS、iPadOS、macOS、watchOSの最新バージョンや複数のMacが発表された。「iOS 17」は携帯電話の基本ともいえる「電話」や「メッセージ」の機能改善が主なトピック。「iOS 14」で導入されたウィジェットも、より多機能になる。ここでは、iPhoneに導入されるiOS 17に焦点を絞り、その進化の方向性を読み解いていきたい。
基本となるコミュニケーションに立ち返ったiOS 17
iOS 17のアップデートは、大きく4つの分野に焦点が絞られていた。「コミュニケーション」「共有」「インテリジェントな入力」、そして「新しい体験」だ。コミュニケーションは、携帯電話であるiPhoneの核となる機能。電話や電話帳といったアプリは、長くその姿を大きく変えていなかった。iOS 17は、ここが大きく刷新される。
1つ目のコミュニケーションは、電話やiMessage、FaceTimeといったアプリケーションが中心になる。見た目が大きく変わるのが、連絡先だ。iOS 17では「連絡先ポスター」と呼ばれる、画面いっぱいに写真やイラストを表示したビジュアルを作成できるようになる。電話をかけた際に、相手のiPhoneの画面には、この連絡先ポスターが表示される。日本語では、縦書きのレイアウトにも対応する。
ただ、いくら連絡先ポスターを設定しても、相手の電話帳にそれが登録されていなければ、自己満足で終わってしまう。これを相手に受け渡すための仕組みとして用意されたのが、2つ目の「共有」に関する新機能である「NameDrop」だ。
NameDropは、「エアドロ」という愛称でおなじみの「AirDrop」を拡張した機能。端末同士を近づけてかざすだけで、連絡先ポスターを交換できる。赤外線のポート位置を合わせて連絡先を教え合っていたフィーチャーフォンユーザーには、どこか懐かしさのある所作だが、無線でリッチな情報をやりとりできる点ではしっかり今風にアップデートされている印象。端末同士を近づけるという動作は、ある程度距離が離れていてもよかった従来のAirDropとも異なる。
そのAirDropも、やや地味ながら、利便性の高い進化を遂げている。もともとAirDropは、iPhone、iPad、MacをダイレクトにBluetoothとWi-Fiでつなげて、写真や動画などの大容量ファイルをやりとりするためのもの。近い規格にWi-Fiダイレクトがあるが、AirDropはAppleの独自機能で、その使い勝手が評価されている。一方で、共有の途中で端末同士が離れてしまうと、処理は中断される。
iOS 17では、ここに改善が入り、共有の続きをネット経由で行えるようになる。データ容量を消費してしまう可能性はあるものの、動画など、比較的ファイルサイズの大きなデータを受け渡す際には、共有が終わるのを待っている必要がなくなるのは朗報といえそうだ。
また、FaceTimeには着信に応答しなかった際に動画でメッセージを残す機能が、iMessageには、「絵文字ステッカー」や「安否確認」が加わる。コミュニケーションに関する機能を総合的にアップデートした格好だ。
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