スマホ新製品が1年前から大きな進化なし? 円安&物価高で透けて見えるメーカーの苦悩:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
6月22日に発売される「OPPO Reno9 A」は、先代のモデルから大きく進化していない印象も受ける。こうした仕様からは、端末メーカーの苦悩が透けて見える。円安と物価高のダブルパンチで、難しいかじ取りを迫られている。
円安&物価高のダブルパンチで難しくなるかじ取り、ミドルレンジモデルが取る2つの方向性
齋藤氏のコメントからは、機能と価格のバランスを取るのが難しくなっていることもうかがえる。背景にあるのは、「円安の影響や部材費の価格高騰の影響」(同)だ。スマートフォンの開発期間を1年強とすると、Reno9 Aは、まさに強烈な円安が進行しているタイミングで企画された端末になる。物価高や半導体不足などもあり、部材費も高騰している。為替と物価の両面で、ミドルレンジモデルの価格を維持するのは難しくなりつつある。
Reno9 Aのメーカー直販価格は4万6800円(税込み、以下同)。Reno7 Aの4万4800円から2000円ほどの値上げになっているが、ほぼ同等と言っていい水準だ。この価格設定を維持しようとすると、スペックを据え置きにせざるをえなかったOPPO側の懐事情がうかがえる。円安や部材費高騰の影響を踏まえれば、むしろ2000円の値上げでとどまったのは御の字といえる。
逆にいえば、ある程度の値上げを許容すれば、プロセッサなどの仕様はReno7 Aから上げることができた可能性もある。例えば、中国で販売されている「Reno9」は、Snapdragon 778を採用しているが、価格的には2499元(約4万9000円)でReno9 Aよりも高い。これをベースにおサイフケータイや防水・防塵といった仕様を盛り込んでいくと、価格は6万円を超えてしまうだろう。ミッドレンジモデルのボリュームゾーンである4万円前後から外れてしまうのは、メーカーにとってリスクだ。
メーカーにとっては、値上げして最新のスペックにそろえるか、価格を維持してスペックを落とすかの二択が迫られているような状況になりつつあるといえる。この状況は、OPPO以外のメーカーにとっても同じだ。例えば、Xiaomiは3月に約2万円のエントリーモデル「Redmi 12C」を発売したが、同モデルは充電ポートがUSB Type-Bのまま。しかも通信方式は、4Gまでしかサポートしていない。ソフトバンク独占という武器はあったものの、同価格帯で5GやFeliCaを搭載していた「Redmi Note 9T」とは、機能に大きな開きがある。
XiaomiのRedmi 12Cは、USB Type-Bで5Gにも非対応と、2023年のスマートフォンとしては珍しいほどの低いスペックだった。エントリーモデルの最低価格が上がりつつあることがうかがえる
逆に、シャープはある程度コストを反映させる形で、AQUOS senseシリーズやAQUOS wishシリーズの価格を上げていることが分かる。一例を挙げると、「AQUOS sense7」の価格は4万9800円(IIJmioでの価格を参考にした)。これに対し、21年に発売された「AQUOS sense6」は、3万9800円で販売されていた。ちょうど1万円の値上げになっているが、その分カメラなどの機能が大幅に向上し、価格なりの価値を出そうとしていることがうかがえる。
本連載でも取り上げたFCNTが経営破綻した理由も、やはり円安やコスト高だった。「arrows We」のような格安で、それなりの性能を備えた端末は、以前より作りづらくなっていることが伺える。もちろん、円安やコスト高はハイエンドモデルの価格にも反映されるが、エントリーモデルに近づけば近づくほど、ユーザーは価格にシビアになる。グローバルメーカーにとっても、端末の企画が難しい状況になっているというわけだ。Reno9 Aの仕様や価格設定は、その象徴といえる。
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