KDDIの大規模通信障害から丸1年 “安心安全な通信サービス”の提供を誓う
KDDIが2022年7月に起こした大規模通信障害から2023年7月で丸1年になる。大規模通信障害では2022年7月2日未明の発生から約86時間が経過した4日目の7月5日15時36分に完全復旧宣言が出された。大規模通信障害を未然に防止するための意識啓発や、安全に関する情報、知識共有を目的に、同社は6月30日に「安全大会」を実施した。
KDDIが2022年7月に起こした大規模通信障害から2023年7月で丸1年になる。
大規模通信障害では2022年7月2日未明の発生から約86時間が経過した4日目の7月5日15時36分に完全復旧宣言が出された。
通信障害の原因はVoLTE交換機と加入者データベースの負荷の高まりにある。復旧に必要な作業は7月3日17時30分までに完了したものの、VoLTE交換機と加入者データベースの負荷が想定よりも下がらず、音声通話がつながりづらい状況が続いた。発生から復旧までの間、緊急通報が行えなかったケースもあった。
こうした大規模通信障害を未然に防止するための意識啓発や、安全に関する情報、知識共有を目的に、同社は6月30日に「安全大会」を実施した。
高橋誠社長をはじめ、社内および関連会社の約3200人が参加し、通信障害が社会に与える影響の大きさを改めて認識するとともに、再発防止に向けた改善取り組みの共有、それに最高のネットワーク品質を目指すことを誓ったという。あわせて、この1年で以下の内容を共有し、通信障害の再発防止を徹底するとの考えを明らかにしている。
- 早期の被疑箇所特定や、復旧に必要な手順の準備など
- ユーザーに対して、正確な情報を速やかに伝える
- 設備監視強化のためのツールや、それに関する人財の育成
- 通信障害の再発防止を目的としたネットワーク品質の強化
その他、同社は高橋誠社長が社員に向けて発信したメッセージを公表した。
2022年7月2日の早朝に連絡をもらい、自分のスマホでもピクトが立たないことを確認し、これはただ事ではないと思い、すぐに新宿ビルへ向かいました。翌日になっても復旧に至らなかったため午前11時から最初の会見を行いました。今回は復旧に向け取り組んでいる最中での会見となりました。お客さまにどのようにお伝えするのか、悩みながらの会見でした。
この通信障害では、個人のお客さまだけでなく、法人のお客さま、法人の向こうにいらっしゃるお客さまへ多大な迷惑をおかけしました。通信はあらゆるものに溶け込んできており、人びとの生活、社会活動において、欠かせない存在となっています。IoTの回線数は2022年度には3,000万回線を超え、今後も増え続ける見込みです。通信は、あらゆる産業・社会活動の基盤になり、その安定性と信頼性はより一層、重要になってきています。
今となると、もっとできたことはあったのではないかと、改めてあの日の後悔が頭をよぎります。復旧作業を担当したKDDIのネットワーク運用部門、KDDIエンジニアリングのメンバーとも、今回の障害を起こしてしまったことや早期復旧を出来なかったことへの無念さ、これからの信頼回復への向き合い方についての話をしました。
私たちはお客さまの信頼の回復に取り組んでいきます。障害の早期検知と復旧のための体制を強化し、さらに「障害発生時の周知・広報に関するガイドライン」に定められた迅速なお客さま周知のための目標も設定しました。
24時間365日つなぐことが、私たちの使命です。通信障害のあと「通信基盤強化並びにお客さま対応強化対策会議」を立ち上げ、再発防止に向けて、設備の仮想化、運用の高度化、そして、作業品質の強化に取り組んできました。この中期経営戦略3年間では500億円規模の追加投資を行い、さらなる通信基盤の強靭化に取り組んでいく計画です。通信は私たちの使命であると同時に、事業戦略であるサテライトグロース戦略の核です。ネットワークの信頼性向上に向けて、全社一丸となって取り組んでいきましょう。
KDDIの使命は「つなぐ」ことです。人びとの命をつなぎ、暮らしをつなぎ、心をつないでいます。私たちは、「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」ことを「KDDI VISON 2030」に掲げました。重大事故ゼロの継続とともに、このビジョンを社員一丸となって実現したいと思っています。
2022年7月の通信障害は社会インフラに多大な影響を与えた障害であり、今後決して起こしてはならないものです。決してあの日を忘れてはいけません。このことを改めて認識し、お客さまの信頼を取り戻していく、そして最高のネットワーク品質を目指すことを誓い、「KDDI VISION 2030」を実現していきましょう。
関連記事
- 通信障害の再発防止には限界も 緊急時の「ローミング」と「SIMなし発信」は実現するか
通信障害の原因究明と再発防止に乗り出しているKDDIだが、こうした事故は100%防げるとは限らない。規模の大小や時間の長短を問わなければ、1年に数回は起こること。その考え方を前提にしつつ、業界全体で影響を最小限に抑える取り組みをしていく必要がある。 - au/UQ mobile/povo携帯電話の通信障害は解消 焦点は「再発防止策」と「情報周知」に
KDDIと沖縄セルラー電話における携帯電話ネットワークの通信障害がようやく解消した。それに合わせてKDDIが再度記者説明会を開催し、今後の方針を説明した。 - KDDIの通信障害が完全復旧 5日15時36分に最終確認
KDDIは、7月2日1時35分から発生していた通信障害が復旧したことを発表した。個人と法人のサービス利用に問題がないことを、5日15時36分に最終確認した。音声通話やデータ通信が利用しにくい場合、端末の電源オン/オフの操作を試すよう呼びかけている。 - KDDIの通信障害なぜ長期化した? 過去の障害で得た知見も通用せず
KDDIが7月4日20時に、2日から発生している通信障害について、現状と復旧の見通しを説明した。通信障害の原因はVoLTE交換機の輻輳(ふくそう)だが、負荷低減を行ったにもかかわらず、音声通話が利用しにくい状況が続いていた。調査をしたところ、KDDIが運用しているVoLTE交換機18台のうち、6台が加入者データベースに不要な過剰信号を送信していることが判明した。 - KDDI、通信障害で271万人に2日相当分、全ユーザーに200円を返金
KDDIは、7月2日の未明に発生し、約3915万回線に影響を与えた大規模通信障害について、返金内容を発表。約款返金とお詫び返金に該当する人に対し、合わせて73億円を返金する。内容をまとめた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.