楽天モバイルが宅内圏外だったので「フェムトセル」導入も、大苦戦したワケ 個人ではハードルが高い?(1/3 ページ)
「宅内で楽天モバイルが圏外」――。そんな悩みをどうにかして解決できないと思い、「Rakuten Casa6」を導入した。Casa6の申し込みから設置に至るまでの流れや注意点を解説する。
「宅内で楽天モバイルが圏外」――。そんな悩みをどうにかして解決できないと思い、「Rakuten Casa6」を導入した。
Casa6をはじめとするフェムトセルは、平たくいえば、自宅にあるインターネット回線を利用して、携帯電話の電波改善を図ることを目的に、楽天モバイルが所定の条件を満たした人に貸与している。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクもフェムトセルを取り扱っている。
このフェムトセルという名の機器、言葉はもちろん、その存在すら一般に広く知れ渡っていないようなので、まずはフェムトセルがどのような役割を果たすのかを説明する。
そもそもフェムトセルとは?
携帯電話は英訳で“Cellular Phone”(セルラーフォン)と表す。CellularのCell(セル)は直訳すると「細胞」だが、1つの基地局が電波を発してカバーできる範囲を示す。これがいくつも存在することで、広い範囲で携帯電話通信サービスを利用できるようになる。
街中や駅などに設置される基地局は、半径1km〜数km程度をカバーできる。家やオフィスの電波改善目的で貸与されるフェムトセル(Femtocell)は、街中などにある基地局よりもさらに小さな数メートル範囲をカバーする基地局。形はルーターに似ており、小規模カバーである反面、小型なものが多い。
フェムト(Femto)というワードはミリ、マイクロ、ナノ、ピコよりもさらに小さい1000兆分の1を示す接頭語だ。フェムトセルが実際にカバーする範囲がマイクロセルと比べて10億分の1も小さくなるわけではないが、非常に小規模の範囲をカバーすることから、フェムトという用語が使われている。
フェムトセルは総務省から許可が出なければ、事業者を介して貸与されなければ、設置、設定すらできない決まりとなっている。電波法に準ずるわけだ。
携帯電話の電波を発するフェムトセル、いったいどのようにつながるのか。実は単体で電波を発するわけではない。フェムトセルは宅内やオフィスの固定回線(電話や光ファイバーなど)が既にあることが前提となる。
これはフェムトセルが宅内などに通された、光回線などのブロードバンド回線を介して、移動体通信事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)のコアネットワークへ接続する仕組みであるためだ。
フェムトセルの設置後はそれまで利用不可、あるいは利用しづらかった携帯電話での通話やメール、それにインターネットなどのモバイルデータ通信サービスが利用できるようになる。
ただ、先ほど述べたように非常に小さい範囲をカバーすることに加え、出力が小さいことから、フェムトセルとそこから発する電波を受信する携帯電話との距離は近い。そのため、事業者はユーザーに「携帯電話の電波状況が、フェムトセルの設置により、おおむね一部屋分改善される」と案内している。
電波改善に活用される機器として、フェムトセルの他にもレピーターが存在する。レピーターはフェムトセルのように宅内などのインターネット回線を使わず、最も届きやすい周波数を増幅して電波改善を図る機器だ。ただ、こちらは楽天モバイルでは貸与されていない。
Casa6を申し込むために満たすべき条件
Casa6もフェムトセルに該当する。ただ、楽天モバイルは以前、フェムトセルのみの機能を備えるCasaを提供していたが、2023年7月現在はフェムトセルと無線LANルーターの機能を併せ持つCasa6を貸与している。よってユーザーはCasaを選択できない。
レンタル代金は無料だが、Casa6を紛失したり、契約が終了した後、一定期間が経過しても返却しなかったりした場合、違約金として2万円(非課税)が請求される。
なお、前提としてCasaをいきなり申し込んでも使い始めることはできず、あらかじめ訪問による電波調査を実施し、その調査結果を踏まえた上で設置の案内があった場合にCasa6の申し込みへと進める。さらに、Casa6の申し込みに際しては、以下の条件を満たしている必要がある。
- 楽天モバイル(Rakuten最強プラン)を契約していること
- 楽天回線対応製品を使用していること
- 電波改善・調査依頼済みで、楽天モバイルからCasa設置の案内を受けていること
- 楽天モバイルが指定するインターネット回線を契約し、開通していること
- 楽天モバイル(Rakuten最強プラン)に登録している住所にCasaを設置すること
- Casaの設置規約および重要事項説明書(個人のお客様)に同意すること
- 「現住所」「楽天モバイル(Rakuten最強プラン)に登録している住所」「インターネット回線設置住所(Casa設置予定住所)」が全て一致していること
楽天モバイルが指定するインターネット回線は、「Casa対応インターネット回線一覧」から確認できる。記者は個人名義で契約した「ドコモ光」と、マンションの管理組合で加入した「サイバーホーム」(※1)を持っていたので、申請がスムーズにできた。
(※1)楽天モバイルが指定する「Rakuten Casa」対応インターネット回線に、ファミリーネット・ジャパンのサイバーホームが加わったのは、2023年7月3日となっている
なお、フレッツ 光ネクストや、ドコモ光、楽天ひかりなどを含む光コラボレーションモデルの回線を持っている場合は、Casa6を申し込む際に「お客様ID(CAF+10桁、またはCOP+8桁)」の入力が必要になるため、事前に契約書などを確認の上、用意しておくことをお勧めする。
関連記事
- Rakuten最強プランのデータSIM提供開始、ワンクリックで申し込み可能だが法的には問題ない?
楽天モバイルが7月3日、「Rakuten最強プラン」(データタイプ)の提供を開始した。あわせて、同プランをワンクリックで申し込めるようにした。その狙いを広報に聞いた。 - au網ありきの楽天モバイル「最強プラン」 三木谷氏「可及的速やかにネットワークを構築する必要はなくなった」
楽天モバイルが、新料金プラン「最強プラン」を6月1日より提供する。au網のローミングサービスの利用範囲を拡大し、6月以降に人口カバー率99.9%を達成するとしている。オンライン申込手続きをシンプルな手順で行えるサービス「ワンクリックお申し込み」も開始する - 楽天、825億円の赤字ながら収益改善をアピール 「新ローミング契約は財務の安定性に貢献」
楽天グループの2023年1月から3月の国際会計基準による連結業績は、825億円の赤字だった。前年同期比と比べて赤字額は縮小したが、携帯電話事業で基地局設置などの先行投資が継続中で、それが負担となった形だ。KDDIとの新ローミング契約が「大幅な顧客体験向上とコストコントロールに大きく寄与する」という。 - 楽天モバイル、新料金プラン「Rakuten最強プラン」発表 KDDI回線も無制限で利用可能に
楽天モバイルが5月12日、新料金プラン「Rakuten最強プラン」を発表。6月1日から提供する。パートナー回線(KDDI回線)の制限を撤廃し、無制限でデータ通信を利用可能になる。 - 楽天モバイルでau回線が使い放題でも「auユーザーの通信品質に影響なし」 KDDIが明言
楽天モバイルがKDDIと新たなローミング協定を結んだことで、6月1日から東名阪の繁華街がローミングエリアに追加される。これに伴い、楽天モバイルはローミングエリアにおける高速通信を月間5GBまでとする制限を6月1日から撤廃。既存のau/UQ mobile/povoユーザーの通信品質に影響が出る懸念があるが、KDDIによると影響はないという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.