auスマホとStarlinkの直接通信、なぜSMSから? UQ mobileやpovoも対象?
KDDIは8月30日、米スペースXと提携し、auで「スマホと衛星の直接通信サービス」を2024年内に提供すると発表した。発表会終了後、KDDI松田浩路氏とスペースXのTom Ochinero氏が囲み取材に応えた。直接通信はなぜSMSからスタートするのか。
KDDIは8月30日、米スペースXと提携し、auで「スマホと衛星の直接通信サービス」を2024年内に提供すると発表した。発表会終了後、KDDI 取締役執行役員 パーソナル事業本部 副事業本部長 兼 事業創造本部長の松田浩路氏とスペースX Senior Vice President of Commercial Businessのトム・オチネロ(Tom Ochinero)氏が囲み取材に応えた。
【訂正:2023年9月1日10時20分 初出時、KDDI松田氏の役職に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】
新サービスは、例えば登山道や海上など、従来のau網が圏外の場所において、通信サービスを提供するもの。auスマホが衛星と直接通信する。まずはSMSから提供し、音声通話やデータ通信にも順次対応する方針だ。
――(記者) Starlinkは既に日本でサービスを提供しているが、今回の発表は何が異なるのか。
松田氏 Starlinkは日本で専用の衛星アンテナを利用する衛星通信サービスを提供している。また、KDDIとの提携のもと、au網向けのバックホール回線としてStarlinkを活用している。この通信には、衛星通信用の専用帯域を利用している。
今回の発表はau、UQ、povoのサービスの一環として、スマホと衛星の直接通信を行えるようにするという内容だ。衛星がモバイル通信の基地局のように機能する点で違いがある。
―― Starlinkによる直接通信は日本全国で提供されるのか。
松田氏 Starlink衛星は日本全国の上空で展開しているため、基本的には全国で利用できるようになる。
auでは以前から4G/5Gでの「バックホール回線」としてのスターリンクを活用しているが、これは端末に近いところにStarlinkアンテナや携帯基地局設備を設置するため、電源を確保するという制約があった。スマホとの直接通信は、外部の電源なしで使えるため、提供場所に制約はない。見通しさえ取れれば通信可能だ。
―― スマホ側で買い換えやソフトウェア更新などは必要か。
松田氏 既存の周波数帯を使用し、通信方式としても地上通信と同様のモバイル通信と用いる。au 4G/5Gが利用できるスマホなら、ハードウェアやソフトウェアを変える必要なく、そのまま提供できる。
―― 料金はどうなるのか。
松田氏 基本的にはau、UQ mobile、povoなどの料金プランに包含する提供する方向で検討している。オプションサービスとするのかなど、具体的な提供形態は今後検討していく。
―― どの周波数帯を使うのか。地上局との干渉の対策などは必要か。
松田氏 KDDIが所有している周波数帯のうち、「ミッドバンド」と呼ばれる帯域(1.5〜3.4GHz)の一部を使用する。制度的には国内・国際的なルールにしっかりとのっとって提供できるように準備を進める。技術的な詳細はこれから検証する。電波干渉については、サービス提供前の実証実験を行って確かめる必要がある。衛星側の運用体制の変化によっても状況が変化する可能性がある。いずれにしても、地上局への電波干渉が生じないように、しっかりと対策を行った上で提供する。
―― 日本以外でStarlinkとスマホの直接通信サービスを展開する国はあるか。
オチネロ氏 米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイスの6か国で、それぞれの国の携帯キャリアとパートナーシップを締結している。KDDIは、アジア初のパートナーとなった。
―― SMS以外のデータ通信には順次対応予定としているが、技術的な障壁があるのか。
松田氏 SpaceX側の衛星の打ち上げ計画のマイルストーンの達成状況と、両者の技術検証によって提供時期は変わる可能性がある。SMS以外の通信や通話では、連続的なネットワーク接続が必要になる。衛星ネットワーク全体の容量の拡大やレイテンシの少なさが求められるため、段階的に対応していく。
―― 衛星は現在開発中の新型衛星「Starlink V2」を使用するものか。その場合、現在開発中のStarshipの打ち上げが失敗した場合は、提供が遅れる恐れはあるか。
オチネロ氏 新型衛星のStarlink V2を主力としてサービスを提供するが、現時点で打ち上げに成功している「Starship V2 Mini」を用いても今回のサービスの提供は可能だ。
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