スマホの残債を1年で免除 ドコモの「いつでもカエドキプログラム+」がビジネスとして成立するワケ:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ドコモの「いつでもカエドキプログラム+」は、端末を1年利用して返却すると、残債が免除されるプログラム。一方で、ドコモにとっては事実上の下取り価格が高くなる形となる。それでも、ビジネスモデルとして成立するという。
5G拡大を前提にサービス利用を促進、ARPUの押し上げも狙う
ドコモはいつでもカエドキプログラム+の導入が、買い替えサイクルの長期化に対して「一定の抑止効果になる」(同)とみている。那須氏が「抑止」という言葉を選んでいたことからも分かるように、長期化は必ずしも好ましいことではない。那須氏は「お客さまに選んでいただくものなので、1つの端末を長く使っていただくことも選択氏にあっていい」と前置きしつつ、「より新しい端末や、よりスペックの端末ほど、サービスをご利用いただく際に快適になる」と語る。
これは、ドコモのサービスに限らず当てはまることだ。Galaxy Z Fold5のようにディスプレイが大きければ、映画などの映像や電子書籍といったコンテンツが見やすくなり、利用頻度も高まる。プロセッサの性能が高ければ、ゲームなどの処理能力を要するサービスの使い勝手も向上する。結果として、「ハイスペックな端末ほどサービスの契約率が高く、ARPU(1ユーザーあたりからの平均収入)という観点でもデータ無制限の利用が多いのは見えている」(同)という。買い替えが進めば5Gの契約促進になるのも「大前提」(同)だ。
サービスの利用を促進し、通信料やスマートライフ事業の収益を上げたいドコモと、常に最新の端末を使っていたいユーザー双方の思惑が合致したというわけだ。実際、いつでもカエドキプログラム+の反響は大きく、「非常に多くの方がポジティブな声をいただいた」(那須氏)。「『とんでもないプランが出た』という声や、『毎年買い替えたい人にはありがたい』といった声に加え、『毎年の買い替えを復活させる』といった声をちょうだいしている」(同)と、評価は上々だ。
サービス開始からまだ間もないが、ユーザー獲得にも「一部貢献している」(同)という。導入第1号、第2号になったGalaxy Zシリーズ2機種も、「(販売)数はポジティブ」(同)だといい想定通り、ユーザーが加入しているようだ。実際、サムスン電子ジャパンは、7日に、Galaxy Z Fold5/Flip 5の先行予約数が前年比で191%に拡大したことを発表した。この数値にはau版が含まれており、いつでもカエドキプログラム+だけの効果とは断言できないが、購入を迷っていたユーザーの背中を押したことは間違いない。那須氏は、メーカーからも「ポジティブな反応をいただいている」と言う。
ただ、端末を回収するとはいえ、ユーザーが1年でいつでもカエドキプログラム+の権利を行使すると、ドコモが免除する額はかなり大きくなる。先に挙げたGalaxy Z Fold5の場合、1年利用時の実質価格は早期利用料を入れても約9万円。使用済みの端末と引き替えに、ドコモが17万円程度を負担する格好だ。いくらもとの端末価格が高く、出回っている台数が少ないであろうフォルダブルスマホでも、1年たつと買い取り価格は満額査定でも半額程度まで下がる。
さらに、いつでもカエドキプログラム+は、傷などの判定が中古店の査定より甘い。故障時利用料がかかるのは、「機能不良品」と判定された場合のみ。ガラスの大きなひび割れや、ディスプレイの表示異常、カメラなどの異常といった大きな故障が対象だ。一般的な中古店で減額の対象になる小傷程度であれば、「良品」として扱われる。免除される金額を中古店の下取り額と比べても、ユーザーにとってはお得な仕組みといえる。
一方で、ドコモのビジネスとして、本当にうまく回っていくのかという疑問もわく。ふたを開けてみたら利用者が多くなりすぎてしまい、負担に耐えきれず、プログラム自体が終了してしまうリスクはないのか。一連の不安について、那須氏は「1年で買い替えをし、ご返却される方の端末は基本的に美品率が高い」としながら、「それをdocomo Certified(ドコモ認定リユース品)」として次のお客さまに提供することで生かしていく」と語る。これが、1年での返却を可能にできた理由だ。
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