「iPhone 15」でもTouch IDは見送り 今後も復活しないと考える理由
iPhoneで利用される生体認証といえば、顔認証「Face ID」と指紋認証「Touch ID」がある。Face ID搭載機もTouch IDが搭載されるうわさが出回っていたが、どうやら違うようだ。なぜFace IDからTouch IDに置き換わらないのだろうか……?
iPhoneで利用される生体認証といえば、顔認証「Face ID」と指紋認証「Touch ID」がある。iPhone 15シリーズはFace IDを搭載するが、今回もTouch IDは搭載しない。
「Face ID」と「Touch ID」の違いをおさらい
2017年以降の全画面のiPhone、つまりiPhone Xから採用されてきたのがFace IDに対し、iPhone 8やiPhone SEをはじめとするホームボタン付きのiPhoneで採用されてきたのがTouch IDとなる。
Face IDは通常のインカメラとは別に設けられた「TrueDepthカメラ」で認証する。これを使い、顔の「深度マップ」と「赤外線イメージ」を作成し、そのデータを登録済みのデータと照合。これにより本人かどうかを判断する。
一方で「Face IDを使用するには注視が必要」という項目が有効である場合、カメラに目を向けなければ、認証されない。マスク認証時には目の周りの特徴を認識して認証を行うことから、この項目をオフにした状態でのマスク認証はできない。
この項目がオフであっても、机上に置いたiPhoneのロックを解除するためだけに、カメラをのぞき込んだり、手に取ったりしなければならず、登録した指がセンサーに触れるだけで認証できるTouch IDと比べて面倒だ。
メリットとデメリットはTouch IDにもある。Touch IDは指紋をセンサーで認識して事前登録された指紋と照合するため、指が汚れていたり、ぬれていたりすると、Touch IDでの認証はしづらい、あるいはできない。
iPhone 15でTouch IDの搭載が見送られた理由
ところで、Face ID搭載のiPhoneの後継機でもこれまで度々、Touch IDの搭載がうわさされてきたが、いまだ実装に至った例はない。
ただ、搭載のされ方も多様な見方がある。仮に搭載されたとしても、センサーはホームボタンを兼ねた形ではなく、全画面を阻害しないようiPad Air(第5世代)のように側面への搭載される可能性があるだろうし、Appleの情報に詳しいアナリストのMing-Chi Kuo氏によれば、Appleが2023年には画面内指紋認証を採用するとの予測を明らかにしていた。
しかし、画面内指紋センサーはいまだ実装されていない。2022年2月、Appleに関する情報を発信するiDROPNEWSは、Appleがこれまで指紋認証に取り組んできたチームを、顔認証のチームに移管させた、と伝えている。その上で、iPhoneが進むべき方向性はTouch IDではなくFace IDだろう、とも述べている。
Kuo氏は3月、2023年と2024年の新しいiPhone(iPhone 15を含む)では画面内指紋認証を採用しない、との考えを自身のX(旧Twitter)で伝えていた。
I previously predicted iPhones would support under-display fingerprint sensing/Touch ID in 2023 at the earliest. But the latest survey indicates new iPhones in 2023 & 2024 may not adopt under-display Touch ID. Face ID with a mask on iPhone is already a great biometrics solution.(私は以前、iPhoneは早ければ2023年にディスプレイ下の指紋認証/Touch IDをサポートすると予想していた。しかし最新の調査によると、2023年と2024年の新しいiPhoneは、ディスプレイ下のTouch IDを採用しない可能性があるという。iPhoneのマスクを使ったFace IDは、既に優れた生体認証ソリューションだ。)
画面内指紋認証対応のスマートフォンは既に他社が製品化している。国内で販売されている主要なハイエンドクラスとしては、「AQUOS R8」「Galaxy S23」シリーズが超音波式の画面内指紋認証を採用している。
だが、この仕組みで難しいのが、指紋認証の精度だ。シャープは、指と画面内超音波指紋認証センサーの間にある保護ガラスの厚みや素材などによって、指紋センサーが機能しない場合があると述べている。
仮にiPhoneでこの仕組みを用いて実装できたとしても、認証精度に影響が出てしまう他、アクセサリーメーカーも対応する保護フィルムや保護ガラスを製造しづらいだろう。
iPhone Xで示されていた方向性
繰り返しにはなるが、iPhoneで先にFace IDを搭載したのがiPhone Xとなる。その後、AppleのフラグシップモデルではFace IDが継続して搭載されてきた。ティム・クックCEO(最高経営責任者)はApple Special Event(Let's meet at our place.)でiPhone Xを「今後10年の方向性を示す新たな製品」と紹介していた。
つまり、それはその先の10年、Face IDを含むテクノロジーで、先進性を表していく、とも受け取れるため、その過程で急にTouch IDを採用するのはこれまでの流れに逆行するし、先進性をアピールするiPhoneに実装される可能性は低いだろう。
また、特に昨今は部材の高騰が端末価格に反映されやすく、これまでの仕組みを変えるとなれば、Touch IDの構造や部品は必然的に見直されることになるはずだ。今後、iPhoneにおいてFace IDとTouch IDが両立することはないのかもしれない。
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