シャープに聞く「AQUOS R8 pro」「AQUOS R8」 2モデルに分けた意義、画期的な進化点(3/3 ページ)
シャープが2023年夏に投入する「AQUOS R8 pro」「AQUOS R8」。見たままを表現できるカメラを備えるR8 proに対し、ハイエンドながら性能を抑え、気兼ねなく使えるモデルのがR8となる。そんな2モデルの違いや開発意図、カメラ、ディスプレイについて、シャープで設計に関わった方々にインタビューした。
ようやく指紋認証対応のガラスフィルムが完成
―― ディスプレイについて、進化点はありますか?
平嶋氏 ブルーライトを約50%抑制しつつ、見た目の画質が損なわれないようにしました。青色を抜くことで、目への負担を軽減するリラックスビューは、R7から継承しています。
石川氏 光の波長の出し方をずらすことで、フィルターをかけずにブルーライトを抑制できるようにしています。R7でリラックスビューをかけた場合は黄色がかっていたのが難点でしたが、R8 proではリラックスビューをかけた場合とほぼ同等を効果を実現したのがポイントです。
ディスプレイ指紋認証対応のガラスフィルムがようやく完成したのも大きなポイントです。
シャープはディスプレイの条件を出し、ガラスフォルムメーカーは粘着層やPET層などについて、数あるサンプルを用いて調整しています。そのサンプルを用いてQualcommが指紋センサーからどれだけ屈折があるのかを測定しました。1社だけでは完成にこぎつけることが困難でした。
石川氏 画面内超音波指紋認証センサーでのワンタッチ登録と認証は、指と画面内超音波指紋認証センサーの間にある、保護ガラスの厚みや素材などによっても機能しない場合があります。光は特性を把握しやすいですが、粘着層は超音波を通しづらい性質のものもありますので、その調整が最も苦労した部分になります。
【訂正:2023年7月13日16時20分 初出時、「粘着層は光を通しづらい性質」としていましたが、シャープ側からの訂正により「粘着層は超音波を通しづらい性質」と変更いたしました。】
平嶋氏 このあたりについてはメーカーの1社であるDeffの製品サイトに詳しく書かれています。
―― R8 pro用のガラスフィルムはR7でも使えますか?
石川氏 詳細は開示できませんが、中のパラメーターの都合上、流用できません。R8 pro専用のガラスフィルムとなります。
カラーや指紋認証センサーの位置にも違い
―― R8 proとR8とでカラーや指紋認証センサーの位置が異なりますが、これもコンセプトやニーズの違いによるものですか?
石川氏 カラーはR8 proがブラックのみですが、よりプロらしいモデルの表れにもなっていると考えています。R8は普段使いや服装になじむ明るいカラーとしました。
平嶋氏 R8 proでは画面内超音波指紋認証センサーとすることで、側面をスッキリさせることが可能です。一方でR8 proよりも小さいR8に同じセンサーを設けるのは物理的に困難だったため、側面に電源ボタンを兼ねた指紋認証センサーを配置しました。電源ボタンと指紋認証センサーを一体にすることで、ボタンを押した感覚がユーザーに伝わるため、スマホに不慣れな人でも気兼ねなく使ってもらえると考えています。
平嶋氏 カラーも指紋認証センサーの位置も両モデルで目指すべき方向性や、使われ方が違うことから、それぞれに適した選定としています。
取材を終えて:ハイエンドモデルでも二者択一はうれしい
AQUOS R6やR7では1モデル展開ゆえに多様なニーズの穴埋めができずにいたシャープ。R8 proとR8の2モデルに分かれたことで、ニーズに応えるだけでなく、昨今の端末価格高騰によるハイエンドモデルの買いづらさを払拭(ふっしょく)できそうだ。
これまでハイエンドのRシリーズや、ミッドレンジのsenseシリーズを手掛けてきたからこそ、独自の着眼点を持ち、従来モデルとの差異化を図ったのも注目どころだ。現時点ではドコモとソフトバンクの2社が取り扱う予定だが、個性のある2モデルだけにKDDIやオープン市場向けモデルにも期待したいところだ。
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