Pixelが国内でシェア急増も「8/8 Pro」は大幅値上げ 競合からは“包囲網”も:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
Googleは、Pixelシリーズの最新モデル「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」を10月12日に発売する。日本市場参入当初はパイが小さかったPixelだが、廉価モデルのaシリーズを含めたコストパフォーマンスの高さやAI関連機能が評価された結果、シェアを急速に高めている。一方、円安の影響でPixel 8/8 Proは価格が高騰。競合メーカーの製品作りにも影響を与えている。
シェアを急速に伸ばすPixel、ただし8/8 Proは大幅値上げに
先のプルナスキー氏が日本市場からのフィードバックを挙げたいたように、年々、Pixelの販売は勢いを増している。MM総研が5月に発表した2022年度(22年4月から23年3月)のスマホ出荷台数調査では、Googleが初めて十把ひとからげの「その他」から抜け、シェア6位に躍り出た。調査期間は2023年3月までのため、KDDIとソフトバンク、Google自身での販売だけでシェア争いをするトップメーカーの一角に食い込んだ格好だ。
2023年5月には、コストパフォーマンスの高い廉価モデルのPixel 7aを発売しており、「Pixel 4」「Pixel 4 XL」以来5年ぶりとなるドコモでの販売も再開している。ドコモの井伊基之社長は、発表直後に開催されたNTTの決算説明会で「お客さまから要望があった」と、同モデルの人気が採用を後押ししたことを明かしている。5Gの4.5GHz帯(n79)に対応してもらうため、Googleと「コミットメント(一定量を買い取る約束)した」(同)うえでラインアップに加えた。
人気が急上昇していたPixelを、最大手キャリアのドコモが取り扱うことで、Pixelシリーズの販売はさらに拡大。直近では、IDC Japanが8月に発表した第2四半期(23年4月から6月)のメーカー別シェアで、2位を獲得した。サムスン電子やソニー、シャープ、FCNTといった日韓のメーカーをごぼう抜きした形で、Androidスマホの中ではトップ。ドコモの取り扱いが再開したという特殊事情はあるものの、各社が軒並み出荷台数を減少させる中、唯一大幅にシェアを伸ばしている。
Pixel Foldに続き、Pixel 8/8 Proもドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が取り扱いを表明しており、日本市場での“定番”になりつつある。一方で、Pixel 8/8 Proは、その価格が販売に与える影響が不透明だ。Google直販価格は、Pixel 8が11万2900円(税込み、以下同)、Pixel 8 Proが15万9900円。Pixel 7シリーズの発売時は、Pixel 7が8万2500円、「Pixel 7 Pro」が11万3000円だった。スタンダードモデルは3万400円、Proモデルに至っては4万6900円もの大幅な値上げになっている。機能に対して安価でコストパフォーマンスが高かったPixelだが、Pixel 8/8 Proの価格は他社のフラグシップモデルに迫りつつあるといえる。
背景には、Pixel自体の値上げと円安がある。Googleのプルナスキー氏は、価格決定の要因を「素材や部品のコスト、為替もあり、市場によりけり」と語っている。実際、Pixel 8/8 ProはGoogleのお膝元である米国でもそれぞれ100ドル(約1万4908円)ずつ値上げされている。これは、部材費などが原因といえる。もう1つの為替だが、Pixel 7シリーズの発売時から、さらに円安が進行している。Pixel 8/8 Proとも、1ドルあたり約146円前後のレートで価格がつけられた。
さらに、Pixel 7/7 Proは、当時の為替レートと比べてもかなり円高気味に価格が設定されていた。5月に発売したPixel 7aも6万2700円で、為替レートは1ドルあたり約114円に設定されている。この戦略的な“Googleレート”がなくなり、為替市場の実レートに近い価格設定に切り替わったことで、Pixel 8/8 Proの価格がさらに高く見えてしまった。円高レートで販売を続けるのは、Googleの身銭を切る行為。日本市場で普及の道筋が見えた中、ディスカウントをやめ、実力勝負に打って出たと捉えることもできる。
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