ドコモがエンタメ領域で「ミリ波」を訴求する狙い 「実際に使い切れていないことが最大のデメリット」(1/2 ページ)
NTTドコモは10月14日と15日に一般向けの体験イベント「LOST ANIMAL PLANET XR絶滅動物園」を東京スカイツリーで開催する。ドコモがエンタメ領域で5Gのミリ波をどのように活用するのかを示すのが狙い。入場料は無料で、来場者はスマートフォンやスマートデバイスを用いたコンテンツを体験可能だ。
NTTドコモは10月14日と15日に一般向けの体験イベント「LOST ANIMAL PLANET XR絶滅動物園」を東京スカイツリー(スカイアリーナ)で開催する。エドコモがエンタメ領域で5Gのミリ波をどのように活用するのかを示すのが狙い。入場料は無料で、来場者はスマートフォンやスマートデバイスを用いたコンテンツを体験可能だ。コンテンツの内容は次の通り。
「ティラノサウルスvsトリケラトプスAR観戦」はいち早くコンテンツをダウンロードし、ARを活用した高画質な映像を体験できる内容。従来のLTEは約50MBくらいのコンテンツでなければダウンロードに時間がかかるところ、5G(ミリ波、Sub-6)では200MB以上の大容量コンテンツを素早くダウンロードできる点をアピールしたいという。
「マンモス救出大作戦」はミリ波とクラウドレンダリングでリアルタイムに生成した高精細CG(映像)を、複数台の端末に同時配信する。複数人が同時に氷漬けのマンモスを救出できるという内容だ。その際、複数人の位置情報などの情報をサーバにミリ波でアップロードし、クラウドレンダリングでそれらの情報と映像を統合。そのデータを端末がクラウドからダウンロードする際にもミリ波が活用されるという。ドコモが10月13日午前の時間帯に計測した結果は下りが2Gbpsを超え、上りが400Mbps超えだった。
このコンテンツに関連する説明の中で、ミリ波を吹く基地局アンテナが報道陣に公開された。イベント会場となるスカイアリーナ付近の建物の屋上に設置された基地局アンテナはNR-DC(New Radio-Dual Connectivity)でSub-6とミリ波を同時に使用し、より高速に通信できるようにしたという。
「タッチ トリケラトプス」は2023年現在は触れない絶滅生物に触れたような感覚を模擬体験できる。触覚を複数人で共有できる「FEEL TECH」と呼ばれるデバイスを活用し、ディスプレイに表示される映像に合わせてFEEL TECHに振動が伝わり、実際に絶滅した恐竜に触っているような感覚となる。デバイスはドコモ、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project、名古屋工業大学大学院工学研究科Haptics Labが開発した。
何が何でもミリ波ではなく、必要な場所に適切な機能と周波数で展開
繰り返しにはなるが、今回のイベントは主に5Gのミリ波を活用している。ミリ波とは一体どのような電波なのだろうか。ドコモCSO(Chief Standardization Officer)の中村武宏氏が報道陣に対して説明した。
ドコモには5Gに関する大きく3つの周波数帯が割り当てられている。1つ目は転用周波数の700MHz帯と3.4GHz帯、3.5GHz帯。2つ目はSub-6の3.7GHz帯と4.5GHz帯。3つ目が今回のイベントで主に活用されるミリ波の28GHz帯だ。ドコモはこれらを活用し5Gの高度化を促進しているという。
3Gから5Gへと通信の世代が進むに連れ、高速かつ大容量化の需要が高まり、周波数が高くなるとともに広帯域化を図っている。直進性の高さや広帯域性が特徴となるミリ波だが、伝搬損失と遮蔽損失が大きい。そのため、ドコモとしてはセル半径を小さくせざるを得ないという。
ドコモのエリア図を見ても面的に広い地域において展開していくことはせず、必要に応じて“スポット”で展開している。業界では面ではなく点での展開、と評されることが多いのはこうした理由からだ。
ではドコモとしてこのミリ波を含む5Gをどう捉えているのだろうか。
中村氏によると、現状の5Gでは何が何でもミリ波活用という捉え方ではなく、必要とされる場所に適切な機能と周波数で展開する考えだという。「エリアを広げるなら伝搬損失が小さいローバンド(数百MHz)、ミリ波とローバンドの中間的な存在がミッドバンドでエリアカバーとパフォーマンスの両方を重視できる。ミリ波は「広範囲のエリアカバーには向かない反面、パフォーマンス向上に役立つ」(中村氏)ことから、狭域、閉域で高性能が要求されるエリアにおいてミリ波を展開していきたい、とのことだ。
ではミリ波が必要なユースケースは何か。中村氏はトラフィック増加に対する周波数リソースの確保、XRや4K/8Kなどの高品質映像などのサービスに向く他、センシング用途への期待に応えられる点や、6Gでのサブテラヘルツ開拓に向けた足掛かりになる点を挙げている。
「人口密集地では将来的にSub-6でも容量逼迫(ひっぱく)の恐れがあり、ミリ波が求められるシーンが増えると予想している。また、XRや4K/8Kなどの高品質映像などのサービスも普及し、さらなる高速化が求められる。ジョイントコミュニケーション&センシングという周波数をセンシングする技術開発が進んでおり、センシングの精度向上が見込まれる。こちらはすぐに実用化される予定はないが、将来性のある技術とされる。ミリ波よりも広い周波数帯域を利用可能なサブテラヘルツについては、ミリ波の社会的な実装が必要だと考えている」(中村氏)
世界ではミリ波がホットスポット、スタジアム、イベント会場、インドアオフィス、都市部に利用されているという。
関連記事
- ドコモの「5G SA」に申し込んでみた 実際に試して分かった課題
NTTドコモで販売しているスマートフォン向けにスタンドアロン(SA)方式の5G通信サービス「5G SA」の提供が8月24日始まった。法人向けには既に提供されている。今回は個人として申し込む際の注意点やメリットをお伝えしたい。 - 移動するユーザーにも5Gミリ波の電波を ドコモがユーザー追従型メタサーフェスの実証実験
NTTとNTTドコモはメタサーフェスを28GHz帯5G基地局を利用し、ユーザーの動きに合わせて電波の反射方向を動的に変更させる実証実験に成功。工場やオフィスなど、遮蔽(しゃへい)物が多い場所での利用シーンが拡大するという。 - ドコモが「ミリ波」の5Gをスタート 9月23日から
NTTドコモが、28GHz帯(ミリ波)を使った5G通信サービスを開始する。まずはルーターからサービスを開始し、既存のミリ波対応スマートフォン(arrows 5GとGalaxy S20+ 5G)での対応は2020年冬以降となる予定だ。 - 5Gの普及には「ミリ波」が不可欠の理由 通信速度だけでないメリット、Qualcommが解説
Qualcommは2022年6月8日にメディア向けラウンドテーブル「Qualcomm NOW」を開催。クアルコムジャパンの須永順子代表社長は、ミリ波はモバイルネットワークの費用効率化と品質向上をもたらすことを説明。5Gのポテンシャルを発揮できるミリ波を早期普及させることが不可欠だと力説した。 - ドコモがLTE周波数帯の一部を5Gに転用 2024年3月までに5Gの全市区町村展開+人口カバー率90%達成を目指す
今までLTEから5Gへの「周波数転用」に消極的な姿勢を見せていたNTTドコモが、いよいよ周波数転用を開始する。転用対象の周波数帯は700MHz帯と3.4GHz/3.5GHz帯で、2022年春から順次5G用の帯域に変更される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.