NTT法の廃止は「絶対反対」「料金値上げにつながる」 KDDIやソフトバンクのトップが主張、180者が賛同(2/2 ページ)
電気通信事業者や地方自治体など180者が10月19日、NTT法の見直しに関する要望書を自民党と総務大臣に提出した。NTT法は、NTT持株会社やNTT東西の事業内容や国の関与について定めた法律。これを廃止することで、国民の生活に不利益をもたらすリスクがあると訴える。
電気通信事業法だけの規制では不十分 過去にドコモ子会社化の例も
ここまでの要望を出しながら、仮に「NTT法廃止」という決定が下された場合、どう対応していくのか。高橋氏は「議論をしている中で、単純に『廃止。以上』ということはなり得ないと思う」とコメント。
「特別法人であることは、特別な資産を持っているということ。『資本を分離したら?』と言うと、絶対『いやだ』となる。古くなっている法律なので、改正で十分事足りるじゃないかと。なぜ廃止にこだわっているのか? もともとやりたかったことは何かを議論している。廃止という答えが出てきた中で、180者の要望書があり、単純な議論をしている。それを強引に決めていくのは、世の中の世論を無視した方向だと思う」
また高橋氏は、NTTと議論をする際に、「(グループ内の)再統合はいけない」「電話を保持しないといけない」「資本分離しないとこの議論は成り立たない」と説明しても、「必ず無視される」と嘆く。建設的な議論を求めていることを改めて訴えた。
公正な通信サービスを提供することは電気通信事業法でも規定されているが、3社とも「NTT法と電気通信事業法は別物」との認識。電気通信事業法は、NTTに限らず、他の電気通信事業者も対象になっているが、NTT法は、NTTグループの組織の在り方について規定したもの。この点を訴えても、「必ず、返す刀で電気通信事業法で十分ですと言われる」と高橋氏。
「NTTさんは、『NTT東西と持株会社は再統合はしない』と明言するが、これは法律に書いていないといけない。法律に書いていないからといって、NTTドコモを子会社化した。ここがNTT法の大事なところ」(高橋氏)
実際、NTTが2020年にドコモの子会社化を発表した際も、NTT持株会社は電気通信事業法の禁止行為規制の対象になっていないため、当時のNTT澤田純社長は「法制度上は問題ない」と説明していた。
宮川氏も「ドコモ(の子会社化)も、しれっとやった」とぼやく。「ああいうことが、10年後、20年後にあり得るとしたら、この事業をやっている世代の人間が気付いて、やらないといけない」
鈴木氏も「NTT法は重要だと考えている」と述べる。「仮に東西が完全に民営化された場合、民間株式会社として、経済合理性第一で動くので、(グループを一体化しないことや日本全国あまねく電話サービスを提供することなど)約束していただいていることが反故(ほご)にされるリスクが大きいと考えている」
“日本電信電話ソフトバンク”と名乗っても構わない
宮川氏は「全国民、あまねくブロードバンドサービスを提供するためにNTT法を強化すべき」との考えも示す。「日本の光ファイバー敷設率は99.7%だが、残りの0.3%が大変。今、ユニバーサルサービスの規定は電話だが、これを光ファイバーにして、未来の日本のために見直すべきことがある。光ファイバーでできないことを無線で代替するのはいいと思う」
宮川氏の熱弁は止まらない。「名前が変えられないからNTT法をやめたいと言っているが、それだったら、“日本電信電話ソフトバンク”と名乗っても構わない。NTTというブランドは世界で通用する日本でも有数のブランド。そのブランドを捨てるというなら、ソフトバンクに譲っていただきたい。どうも、『こうだ、ああだ』と理屈ばかりに聞こえて仕方がない。ここは徹底的に議論させていただいて、思い切りやっていきたい」
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