auとソフトバンクは“金融連携”プランが好調、ドコモはどう出る? 料金競争は新たな局面へ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの上期決算が出そろった。2021年に始まった官製値下げの影響を受け、売り上げと収益ともに落ち込んでいたが、コロナ明けでトラフィックが増加したことに伴い、比較的料金が高い無制限/大容量プランに加入するユーザーが増加。一方で、ユーザー数やARPUが急増する可能性は低く、各社とも非通信領域の開拓を行っている。
通信×金融・決済は新たなトレンドになるか? スタートダッシュは各社好調
各社とも通信事業とは別に、金融やコンテンツ、サービスといった非通信領域も強化している。中でも金融事業は、顧客接点やスマホという決済サービスの母体を提供する通信事業と相性がいい。もともと銀行や証券、クレジットカードが好調で通信事業に参入した楽天グループはもちろん、KDDIもKDDIフィナンシャルホールディングス傘下にauじぶん銀行やauカブコム証券、au損保などを束ね、業績を伸ばしている。この金融事業と通信の連携が、にわかに強化されている。
9月には、KDDIが傘下の金融サービスと連動した「auマネ活プラン」を開始。これに対抗するよう、ソフトバンクも10月に、料金プランに連動してPayPay還元率が上がる「ペイトク」を導入している。これらの料金プランは、通信料と金融・決済サービスを、より直接的に結び付けている点が新しい。どちらも下期にスタートしたサービスだが、決算説明会では、出足の状況も明らかになった。
「使い放題MAXの3人に1人が加入しており、好調な滑り出し」と自信をのぞかせたのが、KDDIの高橋氏。あくまでデータ容量無制限の料金プランを必要とするヘビーユーザーに限定されてはいるが、新規加入の3分の1がauマネ活プランを選択しているという。auマネ活プランは「auの魅力化を進める」(同)一環として導入され、ARPUの拡大や解約率の低下に貢献する。
一方で、金融事業への影響も大きく、銀行口座やクレジットカードの加入を促進する効果もあるという。KDDIによると、店頭加入率はau PAYカードが1.2倍、au PAYゴールドカードが1.5倍、auじぶん銀行口座に至っては4.8倍もの実績が出たという。金融事業でのメリットが通信の価値になり、さらにそれが金融事業に還流するのはまさにシナジー効果。料金プランと金融サービスを特典という形で直接結び付け、それをしっかりショップの店頭で訴求できたことが、スタートダッシュに成功した要因といえる。
これに対し、ソフトバンクのペイトクも、「グループ会社を育てるために販促費をばらまいていると見えるかもしれないが実は違う。コンシューマー事業へのリターンを計算して実施している」(宮川氏)。宮川氏によると、Yahoo!ショッピングやPayPay、PayPayカードのどれか1つを利用しているユーザーは、解約率が通常の約3分の1に低下するという。「グループサービスとの連携は、グループ会社の成長だけでなく、当社の顧客基盤拡大につながる」(同)というのが、ソフトバンクの狙いだ。出足も好調で、宮川氏のコメントからは、想定を上回る勢いであることがうかがえる。
「これまではどちらかというと数を稼いでいたのはワイモバイルだったが、今はワイモバイルよりペイトク無制限の方が毎日のレポートで勢いがある。(中略)思っていた以上で、個人的にはワイモバイルの新料金プランの方が受け入れられやすいと感じていたが、ソフトバンクブランドの方が伸びがいい。自分の感覚とは違っていたと思っている」
KDDI、ソフトバンクで好スタートを切ったauマネ活プラン、ペイトクだが、ドコモは料金プランを改定したばかり。連携させる金融サービスのピースが不足していることもあり、現時点では様子見の姿勢を示す。一方で、井伊氏は「バンドルするものがなかったのでマネックスと(資本業務提携に)合意した」と述べており、2社に近い料金プランを検討している様子もうかがえた。サブブランドやオンライン専用ブランドに押され、存在感が薄まっていたメインブランドの料金プランだが、大容量/無制限といった特徴に、金融連携が加わることで魅力が増している。この勢いが続けば、競争の軸が変わる可能性もありそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「楽天モバイルのプラチナバンド計画は遅い」「ARPUの減収が反転」 KDDI決算会見で語られたこと
KDDIの2023年度上期の売上高は前年同期比1.4%増の2兆7790億円、営業利益は同0.2%増の5603億円で増収増益。モバイル通信の収入がプラスに転じるなど全体的に収益が拡大した。通信と金融の相乗効果も出ており、「auマネ活プラン」の拡販を目指す。
「NTTの考えは詭弁」「楽天モバイルにバックホールを貸す議論をしてもいい」 ソフトバンク宮川社長が熱弁
ソフトバンクが第2四半期の決算を発表。モバイル事業が下げ止まって、想定よりも早く回復していたこと、エンタープライズ事業やLINEやヤフーのメディア・EC事業が好調なことから利益が拡大した。宮川潤一社長が、NTT法や楽天モバイルのプラチナバンドについての考えも述べた。
ドコモは「irumo」が解約抑止に貢献、端末値引き上限4万円は「納得感がある」と井伊社長
ドコモの2023年度上半期の売り上げは2兆9464億円(前年同期比+465億円)、営業利益は5808億円(前年同期比+43億円)で増収増益となった。新料金プランの「irumo」と「eximo」は「狙い通りの成果が得られている」と井伊氏は手応えを話す。ドコモショップへの来客数も増えているという。
値上げだが、PayPayでお得になるソフトバンク新料金「ペイトク」 ただし“無制限”プランには疑問も
ソフトバンクが大容量を改定し、新たに「ペイトク」を提供する。選択したデータ容量に応じて、PayPay決済時の還元率が最大5%までアップ。一方で「無制限」と銘打つプラン名には疑問も残る。
経済圏の軸は「ポイント」と「金融」に? KDDIが「auマネ活プラン」を繰り出した理由
auの「auマネ活プラン」は、auブランドの金融サービスを契約すると還元(ポイント付与やキャッシュバックなど)が増えるという、今までにない新しい携帯料金プランだ。一体なぜ、このようなプランが出てきたのだろうか?



