激化した2023年のスマホ料金競争を振り返る ドコモのサブブランド対抗/金融連携が新トレンド:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
2023年は、キャリア各社の料金プランが相次いで改定された1年だった。6月には、楽天モバイルが「Rakuten最強プラン」を導入。ほぼ同時期に、KDDIのUQ mobileも従来の料金体系を刷新した。ドコモがついにサブブランド対抗を打ち出して「irumo」を開始したのも大きなトピックだった。
金融・決済サービス連携が新トレンド、ドコモも追従するか?
料金プランと金融サービスの連携で先駆けたのは、KDDIのauだ。同社は、9月にauマネ活プランを導入した。これは、auの主力だった「使い放題MAX」と、KDDIフィナンシャルホールディングス傘下の各社が運営するサービスを直接連動させたもの。auじぶん銀行の口座やau PAYカードの保有といった条件を満たすと、毎月au PAYの残高に800円相当が還元される。通常の使い放題MAXと異なり、家族割プラスはつかないため、契約の仕方によっては料金が上がってしまう恐れもあるが、その分、追加の特典も豊富だ。
上記のau PAY残高への還元以外に、特典として1年間、au PAYゴールドカードで料金を支払った際の還元率が2倍の20%になったり、au PAYのコード支払いなどで還元率が0.5%追加されたりと、複数のサービスで“元が取れる”ようになっている。また、auじぶん銀行では、円普通預金の金利が0.05%アップ。au PAYゴールドカードの場合は0.1%と、その上げ幅が大きくなる。auカブコム証券のポイント還元率も向上するなど、カード、スマホ決済、銀行、証券と傘下の金融・決済を総動員したような中身といえる。
これまでにない形の料金プランといえるauマネ活プランだが、ユーザーには狙い通りに受け入れられているようだ。KDDIの高橋氏によると、使い放題MAXを契約する3人に1人がauマネ活プランを選択するといい、「好調な滑り出し」と自信をのぞかせた。金融・決済サービスと深く連携しているだけに、相乗効果も大きい。au PAYカード、ゴールドカードの店頭加入率は通常の1.2倍や1.5倍に増加。auじぶん銀行の口座開設率に至っては、4.8倍にも拡大するという。
これに対し、ソフトバンクは、決済サービスのPayPayと連動させたペイトクを10月に導入。加入するとPayPayの還元率が料金プランに合わせて上がる仕組みで、最も料金の高い「ペイトク無制限」では、5%、月4000ポイントの還元を受けられる。現在は、「ペイしてトクトクキャンペーン」を実施中で、上限額は変わらないものの、還元率は3倍に向上している。
ソフトバンクの代表取締役 社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏は、「グループ会社を育てるために販促費をばらまいているように見えるかもしれないが、実は違う」としつつ、そのシナジー効果を強調。「例えばYahoo!ショッピングやPayPay、PayPayカードのどれか1つを利用しているお客さまの解約率は、通常の大体3分の1になる」として、「このようなグループサービスとの連携は、グループ会社の成長だけでなく、当社の顧客基盤拡大につながる」(同)と語った。
ペイトクも、「無制限は本当に好調」(同)。Y!mobileでユーザー数を増やしていたソフトバンクだが、「今はペイトク無制限の方が、毎日の勢いがある」(同)。サブブランドの登場以降、やや印象が薄かったメインブランドだが、データ使用量の拡大やサービス連携を深めることで、そのトレンドが徐々に変わってきていることがうかがえる。KDDIのauマネ活プランやソフトバンクのペイトクは、その端緒を開いた料金プラン。マネックス証券を傘下に収めたドコモが“参戦”すれば、料金競争がさらに激化する可能性もありそうだ。
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