事故に遭うとスマホが自動通報 「衝突事故検出」機能で“誤報”が多い理由とその対処法(1/2 ページ)
近年のスマートフォンには、交通事故などによる強い衝撃を検出すると、自動的に消防署などへ通報する「衝突事故検出」という機能が備わっている。ただし、予期せぬまま通報してしまうことも多い。今回は消防関係者に聞き取りを行い、スマートフォンの機能による誤報があるのか、万一通報してしまった際の対応を聞いた。
近年のスマートフォンには、交通事故などによる強い衝撃を検出すると、自動的に消防署などへ通報する「衝突事故検出」という機能が備わっている。万一のために機能する「保険」のようなものだが、誤報も少なくないという。今回は消防関係者に聞き取りを行い、スマートフォンの機能による誤報があるのか、万一通報してしまった際の対応を聞いた。
近年のスマートフォンに備わる衝突事故検出機能をおさらい
衝突事故検出機能がスマートフォンに本格的に搭載されたのは、2022年発売の「iPhone 14」シリーズだ。この後に「Pixel 7」シリーズがアップデートでこの機能に対応するなど、Androidスマートフォンでも対応機種が増えている。
また、Apple WatchやPixel Watchなどのスマートウォッチにも同様の機能が備わっている。これらを利用すれば、非対応のスマートフォンでも衝突事故検出機能を利用できる。セルラー通信が利用できる機種では、スマートフォンを持ち合わせていなくても、万一の際の緊急通報が可能だ。
この機能の利点は、交通事故などに遭遇し、自身で通報できない場合に自動で通報できる点だ。特に単独事故などで第三者による通報が難しい場面では、自動通報によって救助が迅速に行える可能性が高まる。身近なものでは交通事故になるが、ハイキングなどのシチュエーションで滑落などの場面でも有効に機能すると考えられる。
これらの機種で利用できる衝突事故検出を用いた緊急通報の仕組みは、スマートフォンやスマートウォッチの加速度センサーを用いて、通常とは異なる急激な加速度を検知した場合に作動し、通報する。例えば、自動車事故や自転車からの転倒などでは通常とは異なる加速度が検出されるので、この情報をもとに衝突か否かを判断する。誤報を防ぐために、作動後に一定時間の操作がなかった場合のみ緊急通報が行われる。
便利な機能だけど誤報も少なくない 機能への認知不足が課題か
万一の際の保険ともいえる衝突事故検出機能。スマートフォン側でも誤報を防ぐ処理がされているが、それでも冒頭で触れた「誤報」が多いという。総務省消防庁でも、スマートフォンの機能による緊急通報機能と、それによる誤報時の対応方法を周知している。
今回、中核市の消防関係者に実態をうかがったところ、スマートフォンの機能による誤報は「1週間に数件はある」とした。その多くが「通報者が衝突事故検出の機能によって通報したことに気づいていない」ものだという。
衝突事故検出はスマートフォンなどの加速度センサーを使用する仕組み上、急激な加速度が生じる場面では誤作動する可能性がある。過去にはジェットコースターの急角度での急旋回といった挙動で誤作動し、アトラクションが終わるまでの間にキャンセル操作ができずに通報に至ったことも報告されている。
ジェットコースターの挙動で衝突を検知するとなれば、スキーなどのウインタースポーツなどでも検知することが考えられる。実際に長野県白馬村を管轄する消防署にて、冬にスキー場からスマートフォンの機能による通報が多くあったという報道がされたこともあった。
これら誤報の多くは、手持ちのスマートフォンにこのような機能があることを知らないまま利用し、予期せぬまま通報してしまうことに起因すると考える。例えば近年のiPhoneやApple Watchの場合、初期状態で衝突事故検出機能はオンになっている。このような機能の存在を知らなければ、思わぬ場面で意図せずに消防へ緊急通報してしまう可能性があるのだ。
衝突事故などで作動することはもちろん、スマートフォンの入ったカバンを投げつけたり、階段などから落としたりしても、衝突事故検出機能は反応することがある。このように日常的なシーンでも誤作動する可能性はゼロではないので、扱いには気を付ける必要がある。また、この機能は不必要であればオフにできることも覚えておこう。
メーカーや販売店は、スマートフォンに衝突事故検出機能が備わっていることを利用者に周知させる必要があると考える。特にiPhoneやPixelの利用者が多い日本では、新機種の登場と共に衝突事故検出機能に対応した機種が市場に出回る。利用者の増加によって誤報が増える可能性が高いのだ。
もちろん、スマートフォンメーカーも誤報を防ぐ対応を行っている。Appleでは衝突事故検出機能が搭載されてから、OSアップデートにて衝突事故検出のアルゴリズムの最適化を行っている。明確な数値化はされてないものの、衝突の誤検出は日々抑えられているようだ。
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