ドコモの「パケ詰まり」は解消した? 都心でスマホ4社の速度とエリアを徹底検証【2024年3月編】(3/3 ページ)
2024年3月末に携帯電話会社4社、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルについて、都心部の混雑スポットでのスピードテストと、山手線を中心とした移動中の接続テストを実施した結果についてご紹介しよう。
2024年は高速5Gのエリアが改善、各社の通信環境にもさらなる変化が
最後に、2023年夏から2024年春までと、これからの各携帯電話事業者のネットワーク整備に関する情報をまとめて見ていこう。
ドコモの整備は一段落、今後は利用者のログから通信品質を改善
ドコモは夏以来、2023年10月と2024年2月に通信品質改善の施策について説明会を実施している。ここでは300億円の先行投資で点のスポットと、線となる鉄道路線の整備を実施し成果が出てきているとしている。結果、今回の記事のテストでもドコモの通信環境はある程度改善されていることが確認できた。5Gのエリア整備も高速なSub-6帯に加えて、転用5Gのエリアも広がっている。
だが、5G開始当初からの「瞬速5G」といったワードや、昭和世代がイメージする“NTTらしい”といったイメージとは少し距離がある。普段の利用でも、混雑スポットでのつながりにくさや、奥まった店でのレジで通信が遅さなど気になる部分は多い。ドコモでは「d払い」など、ドコモのアプリの利用データを活用した品質確認も始めたとのことなので今後の対応に期待したい。
ただ実際のところ、ドコモに限らず各社とも総務省の値下げ要請によるARPU低下や、スマホの割引規制により5Gスマホの普及を加速できない現状だと、5Gの整備も経済的合理性の範囲で慎重に行わざるを得ない。3Gや4Gの快適さやMNP獲得で激しく競争していた時代と違い、今は設備調達やエリア整備の合理化や協業により投資を抑えつつ、ある程度のネットワーク設備をいかに効率よく提供するかが重要になっている。
4月以後、首都圏の高速5Gエリアが広がる
5G高速通信のメインバンドとして運用されているSub-6 3.7GHz帯だが、この帯域はカバーエリアを広げにくい上に、地域にもよるが当初から衛星通信の地上局との干渉で出力の制限が必要だった。だが、衛星通信の事業者側の協力で地域ごとに地上局の移設といった対策が進み、首都圏でも2024年3月末に出力が緩和される。これにより、Sub-6 3.7GHz帯のカバーエリアがKDDIの場合は約2倍になる。
なお、大手4社ともこのSub-6 3.7GHz帯の高速な5Gエリアを提供しており、この話題はもう少し盛り上がってもいいところだ。だが、積極的に説明会でアピールしているのはKDDIが中心となっている。理由の1つとしては、KDDIが一番積極的にSub-6の3.7GHz帯の基地局を整備しており、対象となる周波数幅も100MHz幅×2枠なので出力制限の緩和の恩恵を一番受けられる点が大きいのだろう。
NTTドコモのSub-6帯は3.7GHz帯と、もう半分は出力制限を受けないn79の4.5GHz帯だ。3.7GHz帯の基地局数はそれなりにあり、エリアマップを見る限り、5月末の予定では首都圏のSub-6エリアはそれなりに広がっている。ソフトバンクは5Gエリアの整備にSub-6 3.7GHz帯よりも、エリアを広げやすい4Gを転用した3.4GHz帯、1.7GHz帯、700MHz帯の5Gエリアを優先して整備しており直近の恩恵は少ない。だが、逆にこれから混雑エリアに対して積極的に整備していくこともできる。
楽天モバイルもSub-6 3.7GHz帯の基地局をかなり整備しており、出力の緩和によるエリア拡大は都市部の5Gエリア拡大や混雑対策などで効果を得られるだろう。楽天モバイルはプラチナバンドの割り当てやASTスペースモバイルの話題が続いているが、首都圏に関してはこちらにも注目だ。
なお、楽天モバイルはプラチナバンドの試験発射も4月末以降に始める予定だ。サービス開始時期は正式発表されていないが、楽天モバイル矢澤社長の発言などによると、6月など夏前を目指しているという。屋内などのつながりやすさの改善を期待したい。
2024年前半は各社の5Gや4Gエリアや品質が大きく変わりそうなだけに、また6月ごろに今回と同様のテストを実施すると面白い結果を得られるかもしれない。
KDDIと楽天モバイルの、衛星による日本全土に向けたサービスが前進
最後に、衛星とスマートフォンとの直接接続サービスの進展にも触れておこう。これは現在の通信事業者がエリアを展開する予定のない、郊外や山中、離島といった圏外エリアにて、スマートフォンと低軌道衛星を4Gなどで直接接続するサービスだ。もちろん通常のエリアの基地局と比べると低速だが、いざというときに役立つ。
KDDIは、スペースXのスターリンクが各国キャリアに提供する「Direct to Cell」を用いたサービスを2024年内の展開を目指す。スペースXはスターリンクの実績と、自社のロケットでサービス提供に必要な大量の衛星を打ち上げられる強みを持つ。当初はメッセージサービスのみだが、将来的に音声、データ通信の提供を目指す。1月にはスマートフォンとの接続に対応したスターリンクの衛星を打ち上げ、SMSの接続テストを実施している。
楽天モバイルはASTスペースモバイルとのサービスを2026年内の開始を目指す。こちらはもともとスマートフォンとの直接接続を前提とした大型アンテナの搭載が強みで、スマートフォンとの通話や下り14Mbpsでのデータ通信を実験済みだ。
この他、AppleはiPhone 14以降に衛星と接続してのSOS機能を搭載しているが、こちらはまだ日本で利用できない。
衛星との直接接続はサービスが開始されたとしても、日本の場合は登山などの趣味や北海道などの郊外、山中への居住、大災害で地域インフラごと被災するといった状況でないと使う機会はないかもしれない。とはいえ、今後の展開に期待したい。
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