“ECに弱い”ドコモがAmazonと再びタッグを組む理由 「dポイントがAmazonで使えるのは“初めて”」で誤解も(2/2 ページ)
NTTドコモとアマゾンジャパンが2024年4月10日に協業を発表した。同日から、dポイントクラブ会員がドコモ回線契約の有無に関わらず、Amazon.co.jpでdポイントを利用できるようにした。両社は都内で記者会見を開催。NTTドコモの井伊基之社長や、アマゾンジャパンのJasper Cheung(ジャスパー・チャン)社長らが登壇し、協業の詳細や狙いを説明した。
ドコモとAmazonが改めて協業した狙いは何か
ここからはドコモとAmazonが改めて協業した狙いを見ていく。
ドコモは1億のdポイントクラブ会員を基盤とし、dポイントやd払いの利便性向上を重視する。dポイントクラブは、2015年12月にサービスを開始して以来、その会員数や加盟店を増やしてきた。ドコモの井伊社長によれば、会員数は1億まで拡大しており、いわば「みんなの共通ポイント」へと成長を遂げたという。
ドコモとAmazonの歩みを振り返ると、その歴史はドコモが2012年にAmazonの電子書籍リーダーである「Kindle」へドコモ回線を提供したところから始まっている。2018年には、前述の通り、Amazonでd払いの利用を可能にするなど、「ドコモとAmazonのカスタマーファーストという理念は一致しており、これからも両社の関係は進化していく」(井伊社長)としている。
dポイントの利活用の具体的な提案や利便性向上を意図しているのは今回の発表から分かることだが、ドコモウォレットサービス部長の田原務氏は「ドコモはECに弱いのではないか」との指摘があったと打ち明けた。「dポイントクラブ会員の皆さまからも多くのリクエストをいただいており、Amazonとの協業によりその期待に応えられるのではないか」(田原氏)
また、60歳以上のユーザーをドコモユーザー向けの特典条件にしたドコモの狙いは何か。ドコモ営業戦略部長の山本明宏氏は「60歳以上にネットショッピングを楽しんでもらいたい」とし、「ドコモショップへ訪れる60歳以上の方々へ説明できる」ことから、ドコモが得意とするシニア世代への施策であることを説明した。
NTTドコモ営業戦略部長の山本明宏氏(写真=左)、NTTドコモウォレットサービス部長の田原務氏(写真=中央)、アマゾンジャパンでバイスプレジデント プライム・マーケティング事業統括本部長を務める鈴木浩司氏(写真=右)
一方、Amazonはユーザーを起点とし、地球上で最も豊富な品ぞろえをできるようにしており、数億点の商品を取り扱う。ドコモとAmazonは今回の協業を通じて、双方のユーザーにとってより高付加価値のサービスを提供したいとしている。
アマゾンジャパンのチャン社長は、「豊富な品ぞろえ」「価格」「迅速な配送は」を重視していることを話し、カスタマーファーストである「ビジネスモデルは創業以来、何も変わっていない」とアピールする。加えて、「2010年から2022年にかけてAmazonは、日本市場で6兆円以上を投資し、2022年だけで 1.2兆円以上投資した」と話すチャン社長。それだけ日本市場を重要な国だと位置付けているという。また現在、Amazonに出品してる販売事業者様は14万社を超え、その大半が中小企業だという。
巨大ECプラットフォーマーとしての存在感を誇示するAmazonが手を組む相手に再びドコモを選んだのは、やはりカスタマーファーストの考えを重視しているからだという。アマゾンジャパンでバイスプレジデント プライム・マーケティング事業統括本部長を務める鈴木浩司氏は「日本のユーザーに何をすべきか、という考えから始まっている。Amazonのサービスと価値をさらに発展させるにはどうすればいいのかを考えた結果、1億を超えるdポイントユーザーがAmazonで買い物を楽しみながら、dポイントをためてもらう、という発想に至った」としている。
ドコモとAmazonの再タッグは自然 ドコモ経済圏の行方にも注視
今回の発表では、料金プラン、期間を問わずAmazonの利用でdポイントがたまる/利用できるようになった、という点が大きな注目点だけに、ドコモもAmazonもニュースリリースで「以前に比べてより多くの人がお得にAmazonを利用できる」ことをより分かりやすく訴求すべきだと感じた。
ドコモとAmazonのどちらから声をかけたのかは非開示だったが、日本におけるAmazon、楽天、LINEヤフーの3強状態を見渡せば、ドコモが手を組む相手にAmazonを選ぶのはごく自然な流れだろう。ドコモの方向性も今後注視されるところで、「ECに弱い」ドコモの経済圏が今後、どのように強化、拡大されていくのかもポイントだろう。
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