GAFAを狙い打ち? 巨大IT企業を規制する「スマホソフトウェア競争促進法(案)」が閣議で決定 国会で審議へ
公正取引委員会が主管する「スマホソフトウェア競争促進法(案)」が閣議決定された。スマートフォンを巡る巨大プラットフォーマーを事前に規制する法律案で、今後国会で審議が行われる。
4月26日付の定例閣議において、公正取引委員会(公取委)が主管する「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律案」(以下「スマホソフトウェア競争促進法(案)」)が閣議決定された。今後、同法律案は国会で審議されることになる。
スマホソフトウェア競争促進法案の概要
その名の通り、スマホソフトウェア競争促進法(案)はスマホで使われる「特定ソフトウェア」に対する事前規制を行うための法律案だ。具体的には、スマホで使われる以下のソフトウェア/サービスが規制対象となる。
- モバイルOS(iOSやAndroid OSなど)
- アプリストア(App Store、Google Play、Amazon Appstoreなど)
- Webブラウザ(Google Chrome、Microsoft Edge、Safariなど)
- 検索エンジン(Googleなど)
特定ソフトウェアを巡っては、特定少数の有力事業者による寡占状態であることが指摘されており、事業者の新規参入が困難になっている。独占禁止法をもとに公取委個別対応すると、市場環境の是正に時間が掛かりすぎることから、本法律案である程度の事前規制を行うことによって、「多用な主体によるイノベーションが活性化し、消費者がそれによって生まれる多用なサービスを選択できその恩恵を享受できる」環境を整備するという。
本法律案の主なポイントは以下の通りだ。。
規制対象事業者の指定
スマホソフトウェア競争促進法(案)では、公取委が規制対象となる「指定事業者」を政令に基づいて定める。独占禁止法とは異なり、公取委は指定事業者やその利害関係者と継続的に対話をしながら、ビジネスモデルの改善をしていくことになっている。
事前規制
政令による指定事業者は以下の事前規制を受けるが、★印のある規制は正当な理由がある場合は対象外となる場合もある(一部筆者による解釈を含む)。
- アプリストアに関する規制
- 他の事業者がアプリストアを提供することを妨げてはならない(※1)★
- 他社の課金システムを利用することを妨げてはならない
- アプリ内でWebサイトへの誘導リンクを表示することを妨げてはならない
- 誘導先のWebサイトにおける課金アイテムの購入を妨げてはならない★
- OS/アプリストアの利用条件について、特定のアプリ事業者を不当に差別したり不公正に扱ったりしてはならない
- Webブラウザや検索エンジンに関する規制
- 他のブラウザエンジンの利用を妨げてはならない★
- デフォルトで使うサービスを簡単に変更(設定)できるようにしなくてはならない
- ブラウザや検索エンジンについて、標準以外の選択肢を示す画面を表示しなくてはならない
- 検索結果について、正当な理由なく競合他社のサービスよりも優先的に取り扱ってはならない
- 取得したデータの扱いに関する規制
- アプリの利用状況や売上などのデータを、競合する自社サービスのために使ってはならない
- OSの機能に関する規制
- 自社が提供するアプリと、他社が提供するアプリで利用できる機能(≒API)に差を設けてはならない★
- その他の規制
- データ管理体制の開示義務
- データのポータビリティーを確保するためのツールを提供することを義務付け
- OSやWebブラウザの仕様変更の開示義務
(※1)ユーザーがWebサイトなどからアプリをダウンロードすること(いわゆる「野良アプリ」の入手)を許容することまでは求めない
規制の実効性を担保するための措置
本法律案では、指定事業者に対して定期的な報告書の提出を求めている。これを参考に、公取委は規制の実効性をチェックしていく。もしも指定事業者が本法律に違反している場合は、独占禁止法と同様に公取委が「排除命令」や「課徴金納付命令」を発出することがある。
課徴金については、独占禁止法よりも厳しい「算定率20%(=国内売上高の20%の支払い)」となっている。また、課徴金納付命令を受けた特定事業者が、その命令から10年以内に違反行為を行った場合は課徴金の算定率が30%(=国内売上高の30%)となる。
法律の施行タイミング
本法律案は公布日から1年半を超えない日に施行されることになっている。ただし、一部の規定については公布当日、あるいは公布日から半年を経過した日に施行される。
また、本法律案では施行後3年をめどに、法律の規定を見直す旨も盛り込まれている。
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