Googleが“Playストア外アプリ”の安全性を担保する方法 「場合によってはアプリを無効化する」
政府が議論を進めるモバイルOSのサイドローディング義務化について、Googleが10日に実施したイベントにおいて、Google PlayのAPAC地域責任者が言及した。Androidは“3つのステップ”でサイドローディングに対応しているという。
日本政府が議論を進める「サイドローディングの義務化」についてGoogle Playストアの責任者がコメントした。
サイドローディングとは、Google PlayやApp Storeなど、モバイルOSの純正ストア以外からアプリを導入する行為だ。日本政府は競争促進の観点から、モバイルOSのプラットフォーム事業者に対して外部アプリストアの提供を義務化する政策を議論している。公正取引委員会が2月9日に公開した「モバイルOS等に関する実態調査報告書」では、AppleやGoogleを念頭に「独占禁止法上問題となる具体的な案件に接した場合には、引き続き厳正・的確に対処する」と強調している。
これに対してAppleはiOSについてサイドローディングを認めておらず、義務化に反対する意見を表明している。
一方で、Googleが開発を主導するAndroidでは、もともとサイドローディングが認められている。Google Play ストア以外のAndroidアプリストアも存在する。ただし、中国向けなどを除いたほぼ全てのAndroidスマートフォンにはGoogle Playストアがプリインストールされていることから、多くのAndroidアプリ開発者がGoogle Playを唯一の公開先としている実態がある。
APAC地域のGoogle Playストアを統括するKiran Mani(キラン・マニ)氏は10日のイベントにて、「Googleは数あるアプリストアの1つであり、ユーザーは他のストアを選ぶこともできる」と前置きしつつ、サイドローディングの課題と対策について言及した。
課題として挙げたのは、セキュリティだ。Play ストアにはGoogle Play プロテクトというセキュリティ機能を備えており、マルウェアや情報を詐取するアプリの公開を防いでいる。2022年には、143万本の規約違反のアプリの公開を未然に防いだという。 一方、サイドローディングされるアプリはセキュリティ対策が実施されていないか不十分であるため、ユーザーの安全が脅かされる可能性がある。これが、マニ氏の指摘する課題だ。
これに対して、マニ氏はユーザーの安全とPlay ストア外のアプリ流通を担保する「3つの手順」で対応していると紹介した。
第1に、ユーザーがGoogle Playストア外のアプリを導入するときに、Android OSは標準的なセキュリティ保護プロセスから外れたアプリだということを明確に示す警告を表示する。第2に、ユーザーが警告表示を確認した上でインストールを実施した場合は、それ以上の警告表示を行わない。
そして第3に、Google PlayプロテクトをAndroid OS上で実行し、マルウェアや不審な動きをしているアプリが確認された場合は、ユーザーに警告したり、場合によってはアプリを無効化したりする事後的な対策を行うという。この3つのプロセスはサイドローディング義務化の議論とは関係なく実施しており、義務化の有無に関わらず今後も継続する方針としている。
サイドローディング義務化を契機に新たなアプリストア事業者が参入すれば、アプリ開発者にとっては配信先の増加につながり、ストア同士での競争が発生する可能性もある。ただし、多くのアプリストアにとっては、Google Playでの配信が最も現実的な選択肢となるだろう。リーチできるユーザー数が多く、各国の法制度や決済システムにも対応しており、セキュリティ対策も実施されているからだ。
10日のイベントに登壇したアプリ開発者は、外部ストアに対する見解をコメントしている。「教えて!ドクター」アプリを開発している佐久医師会の坂本昌彦氏は「子どもの健康を守るアプリを提供する上で、プラットフォームが安心できるだということが重要だ。Google Playの信頼が、アプリの信頼にもつながる」と指摘した。
ゲーム「クラッシュフィーバー」などを開発するワンダープラネットの常川友樹CEOは「選択肢が増えることはポジティブに思う。世界中のユーザーにアプリを届けていく上では、会計や税務など見えない手間もかかっている。アプリ開発者はこうした面を考慮してストアを選択していくことになると思う。当社としては現状のGoogle Playのサポートに満足している」とコメントした。
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