イオンモバイルが異例の“200GBプラン”を提供する狙い 金融連携サービスも強化で大手キャリアに対抗しうる存在に:MVNOに聞く(3/3 ページ)
イオンモバイルが、4月1日に一部料金プランの値下げと大容量プランの追加を行った。「さいてきプランMORIMORI」と名付けられた30GB、40GB、50GBの料金を下げるとのと同時に、60GB以上のデータ容量を選択肢として追加した格好だ。小容量を主戦場にしていたMVNOが、ここまで大きな容量の料金プランを用意するのは異例といっていい。
イオンカードカウンターでの契約拠点は上期に100箇所へ
―― イオンカードカウンターで新規契約やMNPができるようになりました。これは、どのぐらいの数になるのでしょうか。
井原氏 昨年7月から実験的に始めていましたが、3月末で48カウンターまで行きました。上期中には100までの数字が見えていますし、当然、もう少し拡大していければと考えています。
―― 新規契約やMNPのみですが、プラン変更もできるようになるのでしょうか。
井原氏 今のところは、まだできません。われわれが100と言っているのは、基本的にイオンモバイルの店舗があるところです。カードカウンターはあくまで契約の入口で、困ったらイオンモバイルに来ていただくという形です。
―― 料金プラン比較だと、他社の話もしないといけないのでなかなか難しそうですね。
井原氏 はい。他社のことまで知っていないといけないので、その知識が難しい。担当の人とお話しすると、そこが難しいと言われます。一方で合うものをご提案しないと、後で違ったという話になってしまう。イオンモバイルでは過剰なぐらい、自社の悪い点もしっかり言うようにしています。速度(低下が起こる可能性があること)の話は、特にしていて、実際に体験していただけるよう、無料貸し出しもしています。
―― 実際に去年から出してみて、効果はどうでしたか。
間野氏 シニアの方がご契約されるプランの獲得が進みました。インタビューでも、私どもの売り場は(イオンの中でも奥や上階の方にある)布団売り場の横にあると言われてしまいました(苦笑)。日々のお買い物をする中で、3階や4階まで上がってこられるかというと、なかなかそこまでは足を運んでいただけません。
これを1階で訴求することで、イオンにはモバイルもあるんだと気付いていただける。シニアの方に向けた安い料金プランがあるということで、契約される方が多くいます。多面的に訴求すると、普段来られていない方にアプローチできるということです。イオンモールでも、イオンリテールに足を踏み入れない方にアプローチできるようになり、新たな層が獲得できています。
井原氏 多い店舗だと、4割、5割がカードカウンターです。イオンカードカウンターで契約している方のほとんどは、イオンモバイルがあることを知りませんでした。タッチポイントとしての利用が、うまくできていると思います。
また、昨年4月からイオンカードで料金を支払うとポイントが通常の4倍になるという施策も始めています。それも相まって、カード会員の方にも声をかけやすくなりました。ただ、もとの料金が安いのでそこまでポイントがたまるわけではないのですが(笑)。
オンラインでの契約比率は20〜30%ほど
―― カード以外でも、金融サービスとの連携を始めています。
井原氏 はい。住宅ローン(イオン銀行で住宅ローンを組むと、完済まで料金が5%割引になる施策)も始めています。イオンフィナンシャルサービスとは相性がいいと思っています。お互い、ストックビジネスなので相互送客もできます。他にももっとできることはあると思っているので、IDをうまく連携できるようにしていきたい。そういったことも、視野に入れています。
イオンカードに関しても、イオンフィナンシャルサービス側から見ると、ドコモ、au、ソフトバンクの支払いがそれぞれの会社のカードに切り替えられてしまっている状況があります。これをカード会社だけで止められるかというとまず無理ですが、イオンモバイルに乗り換えていただければ通信費の支払いは継続してもらえます。やはりわれわれのビジネスとは相性がいいと思いますね。
―― 今、店舗とオンラインの比率は大体どのぐらいなのでしょうか。
井原氏 月によってブレがありますが、オンラインの比率は大体20〜30%ぐらいです。これは、他のMVNOと真逆ではないでしょうか。コロナ禍は50%を超えてしましたが、直近では変動もありつつ、そのぐらいの数値に落ち着いています。
―― その2、3割の人は、近くにイオンがないのでしょうか。
井原氏 近所にイオンがあっても、申し込みはWebでという人もいます。サポートは店舗に行っても、契約はオンラインの方が楽という方ですね。以前に比べ、オンラインで手続きすることに抵抗がなくなってきている印象はあります。
―― 東京に住んでいると、イオンモバイルの店舗に行くのがなかなか難しいのですが、イオングループには都内に店舗の多いピーコックやまいばすけっとがあります。こういったスーパーで販売するといった計画はないのでしょうか。
間野氏 可能性としては排除せず、いろいろなことは検討しています。
井原氏 イオンモバイルになる前のイオンスマホのころは、ミニストップで売ったこともありました。ただ、あれはなかなか難しかったですね(苦笑)。2000店舗を超えていたので期待していたのですが、うまくいきませんでした。当時はグループのスーパーでも販売していました。ただ、そこは間野が言ったように、可能性は排除せずに検討していきます。
キャリア端末の単体購入はいい流れで継続できている
―― SIMロックの原則禁止がスタートした際に、イオンモバイルのユーザーにキャリア端末の単体購入をお勧めしていくという話がありました。あれはまだ継続しているのでしょうか。
井原氏 今でも普通に出ています。キャリアでも2万円ぐらいの安価な端末を用意されているので、そういったモデルとイオンモバイルをセットにする方もいます。あれはわれわれにしかできない売り方で、品ぞろえ的には他では用意できないものを選ぶことができます。
―― 単体販売を禁止するのは違法になりますが、それでもキャリアからやめてくれという声はありませんでしたか。
井原氏 特にありませんでした(笑)。
間野氏 流れがよかったですね。ちょうど、単体での販売もちゃんとしなさいという流れがあったので。
井原氏 その意味では、法改正がしっかり機能したのだと思います。
取材を終えて:大手キャリアの金融連携料金プランにも対抗しうる存在に
家族でデータ容量をシェアするニーズが高いのは、イオンモバイルならではの特徴といえる。リアルな店舗があり、家族がそろって訪問できることが、その傾向に拍車を掛けているようだ。大手キャリアが家族でデータ容量をシェアする料金プランをやめてしまった中、その隙間を突くMVNOらしい攻め方に見える。
イオンカードカウンターで契約できるようにしたところ、ユーザー層が広がっているという話も示唆に富んでいる。イオングループは小売だけでなく、金融サービスも充実しているだけに、大手キャリアの金融連携料金プランにも対抗しうる存在になりそうだ。今後繰り出してくるサービスにも、期待したい。
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