ソフトバンクのモバイル事業、官製不況を脱し増収増益に 宮川社長「本当に胃が痛い2年半」と振り返る(2/2 ページ)
ソフトバンクのコンシューマー事業におけるモバイル売上高は、携帯料金4割値下げという官製値下げ以降、減収が続いていた。2023年5月の中期経営計画では2023年度を底に反転して2024年度から増収になるとしていた。ところが実際は2022年度の時点で底を打ち、2023年度に前倒しで反転して増収になった。
PayPayは2023年度に大幅な赤字縮小、金融事業は24年度に黒字化へ
LINEヤフーによるメディア・EC事業は、営業利益が24%増となるなど順調に成長。ただ、懸案となっているセキュリティガバナンスの取り組みの解決が見通せない状況だ。総務省からは韓国NAVERとの資本関係見直しも視野に対応が求められ、LINEヤフーの親会社となるソフトバンクとNAVERのトップ会談も続けられているというが、総務省への報告書提出期限である7月1日までに結論に達するのは「直感から言うと非常に難易度が高い」(宮川社長)との見込みで、今後も協議を継続していく。
PayPayなどのファイナンス事業は、2023年度に大幅な赤字縮小を果たし、2025年度までの黒字化という計画に対しては、2024年度に黒字化を達成する見込みだ。背景としてPayPayが好調で、決済取扱高の順調な伸びに加え、6304万人に達したユーザー数が「いまだに伸び続けている」(同)状況だという。EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)は2023年度に初めて黒字化していて「PayPayはまだまだ伸び代がある。(成長が)鈍化するという言葉が出るのはまだ早い」と宮川社長。
上振れした利益を生成AIに投資
中期経営計画では2025年度に営業利益を9700億円とする計画だったが、予想を上回る利益で推移していることから、2025年度には1兆円強に達する見込み。そのため、計画の9700億円から上回る部分を成長投資として、生成AIなどへの投資に振り分けることにした。
そのため、まずは生成AIの計算基盤となるハードウェアを強化して、計算能力を37倍に増強する。最新の計算基盤であるNVIDIA DGX B200を世界で初めて導入するために1500億円を投入。そのうち421億円は経済産業省の補助金を申請しており、1100億円程度を自社でまかなう。
これによって開発中の国産LLMを1兆パラメーターに拡張し、計算基盤の外部貸し出しなどの事業につなげる。また、マイクロソフトと共同でコールセンター業務の自動化ソリューションを開発するなど投資を継続する。
さらに構築を目指す次世代社会インフラでは、NVIDIAらとAI-RANアライアンスを設立。AIとRANを同じ設備で稼働させる「AI and RAN」などへの投資は、5Gの進化や次世代の6Gといったモバイル事業への投資にもつながるというのが宮川社長の見解だ。
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