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楽天三木谷氏が語る「AI」×「モバイル」の未来像 「楽天モバイルAIアシスタント2.0」も展開予定(1/3 ページ)

楽天グループの三木谷浩史氏が、Rakuten Optimismのオープニングキーノートで登壇し、AIに対する取り組みを中心に語った。楽天グループでは、誰もがAIを活用できる「AIの民主化」を目指しており、そのためには3ステップが必要だという。「楽天グループの全てを包含したコンシェルジュ」サービスも開発している。

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 楽天グループは、同社のエコシステムを丸ごと体験できるイベント「Rakuten Optimism 2024」を8月1日から4日までの4日間、東京ビッグサイトで開催する。初日のビジネスカンファレンスでは、同社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏がオープニングキーノートで登壇。AIに対する取り組みを中心に語った。

三木谷浩史
楽天グループ 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

楽天は「AIを民主化」する そのために必要な3ステップ

 冒頭、ゆずの「栄光の架橋」をBGMに、楽天グループの28年の歴史を振り返るビデオが流れた。三木谷氏も「当時のインターネット回線の通信速度は約14.4kbps。誰もインターネットで物を買わない、そもそもインターネットビジネスなんて成功しないと言われたときから、あらゆるチャレンジを行ってきた」と振り返った。

 当時、三木谷氏は「それまでのスタンドアロンのコンピュータの世界から、ネットワーク自体がインテリジェンスを得ていくと思った」という。翻って現在は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やLLM(Large language Models:大規模言語モデル)という「今までにないインテリジェンスが出現している」と見る。

 三木谷氏は、人間の脳細胞の数(約1700億個)とインターネットにつながっているデバイス数(約750億個、CPUの数では約1000億個)を例に出し、「情報処理能力が爆発に上がり、AIがあらゆるものを変えていく」と語った。そして、脳細胞をつなぐニューロンのように、インターネットや携帯ネットワークが全ての情報をつなげる役割を担っていると語る。

 楽天がやっていることは、単に通話や通信を安くすることではないことを三木谷氏は強調する。「新しく出現していくAI仮想社会の伝送部分を圧倒的に効率化することによって、世の中が変わる。その震源地が楽天モバイルであり日本であるということ」と同氏。また、誰かが使えるAIではなく、世界中の人が使えるAI、「AIの民主化」を進めていきたいと語った。

 では、どのようにAIを民主化していくのか。それには3つのステップがあるという。

楽天
AIの民主化を実現する3ステップ

 まずは、データでAI技術基盤を拡大。第2ステップとして楽天グループ内でAI活用のモデルケースを作る。そして、それを社外にオープン化していくという3ステップだ。

 三木谷氏は、世界の企業の中で楽天グループはAI分野で非常に注目されていると語る。楽天自身が開発している生成AIやLLMも注目されているが、それ以上に注目されているのが豊富なデータを持っていることだという。

 「国内でほとんどの方が楽天IDを持っていて、楽天グループの何らかのサービスを使っている。5000万人弱の方が楽天グループのWebサイトやアプリにアクセスし、そのデータがどんどんたまっていく。ほとんど通貨に近い楽天スーパーポイントは7000億円近く発行され、もしかしたら今年(2024年)はそれを超える。グループのサービスも70以上。世界では18億人の人が楽天IDを持っている」

楽天
楽天グループはAIに学習させる豊富なデータを持っている

 こうした「GoogleやMeta、Amazonなど世界のハイパースケーラー企業でも持っていない」幅広くて深いデータにモバイルが加わった。モバイル事業に参入したことによって、「現在750万人弱の楽天モバイルのユーザーさんがいるが、その方々の行動データが、個人情報保護に抵触しないような形でわれわれのデータベースの中に入ってきて、皆さんのサービスにAIを通して使えるようになっていく」とメリットを説明した。

楽天ポイント
ポイントでつながっていた楽天経済圏にモバイルのデータが加わった。

 楽天には2つのAI戦略があるという。1つはOpenAIをはじめとする生成AIやLLMの外部企業とのパートナーシップ。もう1つは独自のLLM開発だ。三木谷氏が紹介したLLM「Rakuten AI-7B」は「小ぶりのAI」だが、日本語の処理における評価が高く、「世界のトップクラスにある」と自信を見せる。

楽天
基盤モデルと、特定のタスクに対して高いパフォーマンスを出すようにチューニングされたインストラクションチューニングモデルの両方において、楽天のLLMは高い評価を得ている

 第2ステップとなるAI活用。三木谷氏は参考例として、楽天グループ社内でのAI活用を紹介した。楽天では、具体的な目標を設定してAIを活用しているという。その目標が、マーケティング効率20%アップ、オペレーション効率20%アップ、取引先企業のオペレーション効率20%アップという「トリプル20」だ。

楽天
漠然とAIを使うのではなく、具体的な目標数値を設定してAIを活用している

 そして3つ目のステップ、どうやってサービスを外部に提供していくかは、各サービスの戦略共有会やキーノート後のAIセッションなどで詳しく紹介するとしたが、「今までの店舗運営やサービス運営、それ以外の事業でも、ビジネスのやり方は根本的に変わっていく」とAIの効果を強調した。

「楽天グループの全てを包含したコンシェルジュ」を開発

 間もなく導入されるAIサービスとして、「楽天グループの全てを包含したコンシェルジュ」のデモビデオが紹介された。

楽天
楽天グループのサービスを包含するコンシェルジュサービスを提供する

 ユーザーがタルトの画像を示し、AIアシスタントに「これを作りたいので材料教えてください」と音声で入力すると、AIアシスタントは「おいしそうなレモンタルトですね」と受けて、小麦粉200g、バター100gなど材料を回答。それを受けてユーザーが「タルトに合う小麦粉を教えてください」と質問すると、AIアシスタントは適した小麦粉を説明し、楽天市場で購入できる小麦粉を表示した。さらにユーザーが「500円以内がいいな」と指示すると、条件に合った500円以下の商品を表示した。

楽天
楽天
ユーザーの質問に対し、自然に的確な回答を提示し、楽天市場で購入できる商品を提案する

 三木谷氏によると、買いたいものがはっきりしていない「何となくこんなもの」でも検索が可能だという。

 「これに加えて、『これに合うコーヒーが欲しい』とか、『これを食べられる喫茶店がどこかにありますか?』とかも(調べられる)。ぐるなびなど、われわれのグループ企業にサービス展開していく」

 ショッピングやトラベル、さらには金融など、「さまざまなことを全部を拾って答えを返してくれる」コンシェルジュとなる予定で、「楽天グループのAI力は、世界の中でもトップクラスに行っているのではないか」と自信を見せた。

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