ソフトバンク宮川社長が語る「経済圏の戦い」「PayPay黒字化」 “AIスマホ”への思いも(2/2 ページ)
ソフトバンクは8月6日、2025年3月期第1四半期の連結決算を発表した。全セグメントにわたって増収増益となり、特に決済サービスのPayPayは連結後初の黒字化を達成した。モバイル事業については、ドコモの新料金プランや楽天モバイルの躍進について宮川潤一社長がコメントした。
ついに黒字化したPayPay 「売上4桁億円」を目指す
ファイナンス事業は、売上高が同20%増の631億円、営業利益は同75億円改善の57億円で黒字転換。PayPayの黒字化が寄与したという。PayPayカードを含むPayPayの連結売上高は同19%増の572億円、連結EBITDAは93億円となって2年連続で黒字を達成。営業利益の四半期ベースでは初の黒字化となった。
PayPayの黒字化は、宮川氏の下期という想定よりも早いペースで、「黒字化は今期に来るとは思っていたが、第1四半期からとは思っていなかったので、なかなかいい子に育ってくれた」と語った。
PayPayの黒字化に伴い、「IPOへの期待感も高まってきたと個人的には思っている」と宮川氏。ただ、決定権はPayPay取締役会にあるとしつつ、宮川氏は「まだまだPayPayは成長できるし、急いで資金調達する必要はない。もう少し成長の先が見えてから大きなIPOをしてもらった方がいいので、急がなくてよいと伝えている」と話す。
通期では、PayPayの決済事業だけで売上高を「3桁億円ぐらい」を想定する宮川氏。以前から宮川氏はPayPayについて決済事業の1階、加盟店サービスの2階、金融事業の3階という3階建ての戦略を描いており、顧客基盤を使って新たな事業展開が重要だと指摘。金融サービスを積み上げて、売上高で「4桁億円ぐらいまでやりきらないと、金融事業が事業の柱と呼べるほどにはならない」として、さらなる成長を目指す考えを示している。
GAFAMとは違うAI戦略 「垂直統合型のAIインフラを作りたい」
決算では、その他にエンタープライズ事業が売上高同10%増の2156億円、営業利益が同3%増の415億円。メディア・EC事業では売上高が同6%増の4083億円、営業利益は同74%増の981億円だった。一過性の要因を除いても20%増の549億円で好調だった。
注力するAI関連では、AI計算基盤のデータセンターを分散配置する「Brain DataCenter」において、シャープの堺工場跡地にAIデータセンターを構築する計画が進められている。同工場跡にはKDDIもデータセンター構築を検討しているが、これはソフトバンクの検討の中で「急に出てきた話」(同)だったという。
ソフトバンクは全体の6割ほどを占める液晶工場を再利用する計画で、KDDIは残りの4割の中での利用になるそうだ。「通信会社のAIデータセンターが堺工場に集結することになるかもしれない」と宮川氏。ただ、堺市とシャープの契約次第では撤退も検討する、という状況とのこと。
宮川氏は、「個人的にはAIスマホを作りたい」としつつ、ソフトバンク社長としては「垂直統合型のAIインフラを作りたい」との目標を示す。Brain DataCenterではコア側からAIインフラを作り、さまざまな地域に分散して配置し、AI RANとして基地局のAI化を図りエッジコンピューティングを設置する。「基地局までは設計ができて進んでいるが、その先の(スマートフォンや自動車、家電などの)デバイスまでやると本当の意味での垂直統合ができる」というのが宮川氏の構想だ。
これによって、いわゆるGAFAMと呼ばれる巨大IT企業に対して、「違う構造でのAIとの向き合い方がオリジナルでできるのではないか」と宮川氏は説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
楽天モバイルは「脅威」だが「ソフトバンクへの影響はない」 LINEMO新プランは楽天対抗 宮川社長がコメント
ソフトバンクの宮川潤一社長が、2024年度第1四半期の決算会見で、楽天モバイルについてコメントした。契約数の伸びについて「脅威」と認めたが、ソフトバンクへの影響は「ほとんどない」とした。LINEMOの新料金プランは。楽天モバイル対抗であることを素直に認めた。
LINEMO新料金プランは“楽天モバイル対抗”を強く意識 ただし経済圏やLINE連携には課題も
ソフトバンクは、オンライン専用ブランド「LINEMO」の料金プランを7月下旬に刷新し、「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を開始する。LINEMOをテコ入れし、他のブランドと差別化する狙いがある。同時に、楽天モバイル対抗も強く意識した料金体系に仕上げてきた。
ソフトバンク、モバイル事業は前倒しで黒字化 宮川社長は“楽天モバイルの支援”にも言及
ソフトバンクは2月7日、2024年3月期第3四半期決算を発表した。国の要請による「携帯4割値下げ」以降、赤字続きだったモバイルの売上高がこの第3四半期に反転して増収に。質疑応答では、プラチナバンドを獲得した楽天モバイルを支援する意向を宮川社長が示した。
「NTTの考えは詭弁」「楽天モバイルにバックホールを貸す議論をしてもいい」 ソフトバンク宮川社長が熱弁
ソフトバンクが第2四半期の決算を発表。モバイル事業が下げ止まって、想定よりも早く回復していたこと、エンタープライズ事業やLINEやヤフーのメディア・EC事業が好調なことから利益が拡大した。宮川潤一社長が、NTT法や楽天モバイルのプラチナバンドについての考えも述べた。
楽天モバイル「最強プラン」は優良誤認? ソフトバンク宮川社長が懸念を示す
ソフトバンクが4日に実施した2023年第1四半期決算説明会の質疑応答では、競合の楽天モバイルの動きについて、宮川潤一社長に見解が問われた。





