スマホの“SIMのみ契約キャッシュバック”が激化しているワケ 解約率上昇も様子見が続く:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
スマートフォンの「SIMのみ契約」が携帯キャリアの流動性を高めている。現行のガイドラインでは、このSIMのみ契約にも最大2万2000円のキャッシュバックやポイントバックを行うことが可能だ。この競争が激化し、各社の解約率が上昇傾向にあるという。
電気通信事業法で定められたガイドラインにより、大手キャリアの端末購入補助は最大4万4000円(税込み、以下同)に制限されている。2023年12月の改正で、回線契約にひも付いた場合には、端末単体の割引もこの額に含まれるようになった。それ以前のように、契約に対して2万2000円、端末単体に対して無制限に割引が出される状況に歯止めがかかった格好だ。
こうした状況を受け、各社の獲得合戦の様相が変化してきた。特に流動性を高めているのが、「SIMのみ契約」だ。これは、端末を持ち込む前提でSIMカードなりeSIMなりの回線だけを入手する契約方法のこと。現行のガイドラインでは、このSIMのみ契約にも最大2万2000円のキャッシュバックやポイントバックを行うことが可能だ。この競争が激化し、各社の解約率が上昇傾向にあるという。その実情を解説する。
2万2000円規制のSIM単体契約、irumoも参戦し競争が激化
現行のガイドラインでは、端末購入とは別に、SIMのみ契約の補助に対しても制限がかかっている。その額は2万2000円。端末込みの場合、4万4000円を下回る機種は2万円に制限されているが、回線だけの契約にも、これと同じ額のキャッシュバックなり、ポイントバックなりが認められている。
端末そのままで回線のみを入れ替える場合や、オープンマーケットで自ら端末を持ち込んで契約する場合の規制というわけだ。端末の割引ではないため、ユーザーが直接利益を得やすいのが特徴で、各社ともSIMのみ契約には上限いっぱいのキャッシュバックを特典として付与している。eSIMの普及でオンライン契約が気軽にできるようになったことも、この動きに拍車を掛けているとみていいだろう。
例えば、ドコモオンラインショップで「eximo」や「はじめてスマホプラン」にMNPで契約した場合、2万ポイントのdポイントが特典として付く。新規契約で電話番号を発行した場合でも、1万ポイントが入手できる。eximoだと数カ月で料金と相殺されてしまうが、対象となる料金プランには月額1100円の「5Gデータプラス」も含まれているため、ドコモで2回線目が必要な人には“おいしい”特典といえる。
低容量、低料金を売りにしたirumoでもSIMのみ契約のキャッシュバックが行われており、月額2167円の3GBプランを契約し、dカードやdカードGOLDで料金を支払うように設定すると、新規契約、MNPを問わず1万ポイントが還元されるキャンペーンを実施している。9GBプランでMNPだと、その額は1万7000ポイントに上がる。さらに、月額550円の0.5GBプランでも、MNPで半年分、新規契約で2カ月分のdポイントを付与するキャンペーンを展開している。
KDDIもau Online ShopでSIMのみ契約に対し、1万円相当の還元を行っている。また、サブブランドのUQ mobileの場合、最大1万円に加えてau PAYの利用額に応じた還元を行っており、追加で1万円分の残高がもらえる。ソフトバンクもY!mobileの特典として最大2万円相当のPayPayギフトカードを付与しており、特にサブブランドでの獲得競争が激化している印象が強い。サブブランドはSIMのみ契約の多いMVNOへの対抗馬として成長してきた経緯もあり、こうしたキャンペーンはほぼ“定番”になりつつあるのが実態だ。
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