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インタビュー

新生「らくらくスマートフォン」で戦略転換、ドコモだけでなくY!mobileやSIMフリーで出す狙いは? FCNTに聞く(2/3 ページ)

FCNTの看板商品といえる「らくらくスマートフォン」に新たなモデルが登場した。ドコモ向けだけではなく、Y!mobileやオープン市場向けにも新モデルを投入する。同シリーズはキャリアとタッグを組んだ手厚いサポートがあってこそ成り立ってきたが、なぜ戦略を変更したのか。

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あえてSIMフリー市場でらくらくスマートフォンを投入する狙い

―― 今回、ドコモ版とY!mobile版だけでなく、オープンマーケット版もあったことが一番の驚きでした。キャリアのサポートを重視しているという発言もあったため、オープンマーケット版はないと思っていましたが、なぜこれを出すことになったのでしょうか。

らくらくスマートフォン
オープンマーケット向けに投入する「らくらくスマートフォン Lite」。デザインはらくらくスマートフォン aと共通している

外谷氏 確かに相反する考え方ではありますが、実はオープンマーケット版も並行して検討していました。SIMフリー(オープンマーケット)市場のシニアの方を見たとき、自分で端末を選ばれるというよりも、息子さんや娘さんなどのご家族が回線を見直す際に(一緒に親の)端末を買い替えようという動きがあります。今お使いのらくらくスマートフォンのSIMだけを変えればそのまま使える話ではありますが、そういう機会で既に違うスマホにしてしまったものの、やっぱりらくらくスマートフォンがよかったという人もいます。

 通信料は安くなった一方で端末を使いこなせないというペインが世の中には少しある。マーケット規模がめちゃくちゃ大きいかといえば、そんなことはないのですが、規模の拡大を事業戦略に掲げている中で、SIMフリーでらくらくスマートフォンがどういうふうに受け入れられるかを問うてみようということで、こういったニーズに対応していくことを決めました。

 正直なところ結構迷いました。うまくいくのかどうかは、ずっと考えて続けています。一方で、スタンドアロン(キャリアのサポートなし)でらくらくスマートフォンを使える方はいますし、家族がそういうところを見てくれるご家庭も少なからずあります。

―― MVNOにサポート部分を委ねるということはお考えでしょうか。

外谷氏 MVNOの方はらくらくスマートフォンのような商品をお取り扱いになったことがないので、ある意味チャレンジです。お買い求めいただく方々を見ながら、協議していこうと考えています。

―― MVNOの中にも、健康系のサービスを持っているところはありそうですし、シニアに強い業態の方が通信事業をやられているケースもあります。そういったところと組むことはできるのではないでしょうか。

外谷氏 どういう形で回線を選ばれるかというと、やはり家族丸ごとが多いですね。われわれのポートフォリオには、ファミリー層向けにMVNOと価値を作りながら届けていくのに最適な商品やサービスがそろっています。決まった話はまだありませんが、そういう形で考えていきたいですね。

ユーザーからは「変えてほしくない」という声が非常に多い

―― 初のY!mobile版が発売されましたが、オープンマーケット版も含めて反響はいかがでしたか。

外谷氏 まだそれを感じるまでには至っていませんが、らくらくスマートフォンの発表会があそこまで記事で取り上げられたことは、自分が入社して以降、ほぼなかったと思います。その意味では、業界的なインパクトが非常に大きく、お問い合わせは日々来ている状況です。販売のところでいくと、テレビCMも始まり、ユーザーには徐々に浸透してきています。これから伸びていく感覚はありますが、まだフィードバックを受けるところには至っていません。

らくらくスマートフォン
FCNTの正能由紀氏

正能氏 らくらくコミュニティの中で、今回初めてドコモ以外から出るということをお伝えしたところ、ユーザーからは基本的にポジティブな反応をいただけました。新しいらくらくスマートフォンに対する期待感を含めてコメントをいただけています。ただ、今はドコモをお使いの方が主流なので、やはり「ドコモのらくらくスマートフォンを楽しみにしている」という声は多いですね。

外谷氏 一方で、お客さまの選択肢は増えています。Y!mobileもシニアのお客さまのことはものすごく考えていて、料金だけではない部分でのバックアップやサポートにも長けています。

正能氏 ソフトバンクの方々は心からシニアにスマホを楽しく、便利に使っていただけることを真摯(しんし)に考えていたのが印象的でした。

らくらくスマートフォン
FCNTの高橋知彦氏

高橋氏 変わらない価値と言いますが、らくらくスマートフォンのユーザーには「変えてほしくない」という声が非常に多い。せっかく1回覚えたのに、変わってしまうところに抵抗感があります。一方で、変えた方がより分かりやすくなったり、手数が減ったりする部分もあるので、そこにどこまで切り込んでいくかはソフトバンクさんと相当議論を重ねてきました。単純にサービスと連携したり、ハードウェア単体の機能性を上げたりするだけでなく、体験としてどういう価値をお届けするかをトータルで見ながら、端末の細かなUIまで一緒になって見ていきました。

―― 変わらない価値という点でお聞きしたいのですが、やはり年々変えないことが難しくなっているのではないでしょうか。

外谷氏 フィーチャーフォンを作るのが難しくなっているのと同じ原理で、以前からの部品が世の中からなくなっていきます。今回のドコモ版でいえば5.4型のディスプレイもそうですし、ホームボタンも指紋センサーを載せた形のものを調達するのが難しいので、特注で作らなければいけないということがありました。

 らくらくタッチパネルの押し込める部分は作り込みが相当難しく、感圧式の技術をタッチパネル全体に配置しなければなりません。単純に小さなディスプレイを見つけてくればいいわけではなく、きちんとフィードバックを得られるようにするのに相当な労力をかけています。労力でいえば、普通のハイエンドモデルを作るのと同じぐらいはかかっていますね。

―― 逆に変えているところは変えていますよね。

外谷氏 プラットフォーム(チップセット)やカメラはそうですね。サイズも少し変わっていますが、見た目や持ち心地はユーザーが許容できるギリギリのところを突き詰めました。見た目はあまり変わっていまあせんが、中身はまったく別物です。

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