スマホ料金は「ポイ活」と「中容量強化」が進み、通信品質の重要性も増す――2024年のモバイル業界を振り返る:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2024年は官製値下げの影響も一段落し、各キャリアともメインブランドでは金融・決済連携が進んだ1年だった。キャリアによっては、サブブランドやオンライン専用ブランドで獲得したユーザーがメインブランドへ上昇する動きも顕在化し始めている。こうした料金プランはデータ容量が無制限に設定されていることもあり、通信品質が以前にも増して注目される1年になった。
激化する中容量帯の価格競争 ahamoの30GB化で奇襲をかけたドコモ
値下げが一服した携帯電話料金だが、中容量プランはその限りではない。料金据え置きのままデータ容量を増量させることで、実質的な値下げを行う動きが相次いだのも2024年の特徴だ。この中容量プランでの実質値下げを仕掛けたのは、ドコモだ。同社はサービス開始以来、20GBだったahamoのデータ容量を10月に30GBに変更。10GBもの増量にもかかわらず、料金は2970円のまま据え置きにした。
この動きにすかさず対抗したのは、ahamo対抗として20GBと10分間の音声通話定額をセットにした「コミコミプラン」を展開していたUQ mobileだ。同社は、11月に新料金プランの「コミコミプラン+」を開始。ahamoとは異なり、既存ユーザーのプラン変更は必要になるが、こちらも料金を3278円のまま、データ容量を30GBに増量した。さらに、終了期間未定のキャンペーンとして、10%増量特典を用意し、合計データ容量を33GBにすることでahamoに対抗している。
ソフトバンクのLINEMOは、ahamoやUQ mobileのデータ容量増量のあおりを受けてしまった格好になる。LINEMOは、7月に新料金プランの「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を開始。後者のLINEMOベストプランVは、20GBを超えると30GBまで料金が上がる段階制を採用していた。ユーザーのデータ使用量拡大に合わせ、20GBを超えた際に料金が上がることでARPUを増やしていく狙いがあったとみていいだろう。
ところが、ahamoやUQ mobileが相次いで料金の据え置きのまま30GB化したことで、LINEMOベストプランVは他社との比較で割高になってしまった。これを受け、ソフトバンクは6カ月間限定だった20GBを超えた際に料金が変動しないキャンペーンを永続化。LINEMOベストプランVを事実上の30GBプランに変更した。現状では20GBを超えたときの料金である3960円から990円を割り引く形だが、同社は今後、料金プランそのものを改定することも示唆している。
ドコモがいち早くデータ容量改定に踏み切ったのは、ahamoの解約率が他の料金プランと比べ、高止まりしていたからだという。6月に同社の代表取締役社長に就任した前田義晃氏は、「ahamoユーザーの声を調査したところ、経年的な利用量の増加に対してデータ容量が不足していた」と語る。容量を超えて通信速度が低下し、不満がたまったことでahamoからの解約につながっていたというわけだ。データ容量増量の結果、解約は「止まっているが、ポートイン(獲得)にもだいぶ効果が出てきている」(同)という。
こうした実質値下げの背景には、楽天モバイルが契約数を順調に伸ばしていることもある。同社の契約者数はMVNOやMVNEまで含めて11月に812万まで増加。法人契約が伸びている他、特定の層を狙ったポイント還元施策の「『最強こどもプログラム』や『最強青春プログラム』で若い方のシェアが拡大している」(楽天モバイル代表取締役共同CEO 鈴木和洋氏)影響も大きい。9月には、「デモグラフィック(人口属性)的に高齢者層が弱かった」(楽天グループ 代表取締役会長兼社長最高執行役員 三木谷浩史氏)課題を克服するため、「最強シニアプログラム」を導入し、同社の勢いは増している。
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